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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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イグドラシル4

 マミーとグール以外の敵は女性2人。


 1人はTシャツにジーンズという動きやすい格好の女性。


 もう1人は黒いワンピースという、戦いには不向きそうな格好。


 それぞれ理奈とリリスが相手をしていたのだが、日奈子が縛り上げられるのを見て、理奈が2人を相手してそのスキにリリスが日奈子を助けるという行動に出る。


「1対2とは舐められたものね」


 そう言ってジーンズ女の1人が片足で軽く地面を叩くと、そこから凍気が理奈目がけて走る。


 ソレを横っ飛びで回避する理奈。


 女はそれを見て、連続で凍気を発射するが、理奈はそれをかわしながら女に近づいていく。


「食らいなさい!」


 そう言って理奈が繰り出した回し蹴りが、女の顔面を直撃すると、その顔面がひび割れ始める。


「これは……? 氷像?!」


 理奈の攻撃を食らったジーンズの女は氷像で、回し蹴りを受けた頭部から、ボロボロと崩れ落ちていく。


 そして理奈の右足を、地面から伸びた冷たい手が掴むと、そこから足が凍りはじめる。


「くっ、本体はこっちですか!」


 そう言うと理奈は翼を羽ばたかせて身体を浮かせ、残ったの左足で掴んだ手を蹴り続ける。


 敵は理奈の右足を掴んだまま地面の中から引きずり出される。


「このぉ!」


 理奈の渾身の蹴りがあごに入り、手を離して地面に倒れるジーンズの女。


 そして理奈は倒れた女から離れた位置に着地する。


 まだ右足は凍ったままだ。


「やってくれたな。けど、本番はここからだ!」


 ジーンズの女がそう言うと、周囲の気温が一気に下がる。


「これは……。結界?!」


「そうさ、凍気をばら撒いたのは、あたしの結界の下準備さ。さぁ、凍えて死にな!」


「これはまずいですね。早く手を打たないと……」


 理奈は白い息を吐きながらそう呟くと、自分の左手首を傷つけ、流れ出る血を頭から浴びる。


 血粧(けっしよう)と言う技術で、妖力の流れる経路を自身の血により外付けし、妖力の出力を増やすと言うもの。


「完全に凍らされる前に決着をつけます」


 そう言って翼を広げると、理奈はジーンズの女に高速で迫る。




 一方、夏の顔を覗かせたマミーに、日奈子は動揺していた。


「お夏、まさかマミーにされて……」


「日奈子ちゃん、落ち着いて! あれはマミーではなくって、式神の(たぐい)よ! なっちゃんの偽者よ!」


 マミーもどきの包帯縛りから救出された日奈子だったが、蒼条 夏(ソウジョウ ナツ)の顔をしたマミーの出現に激しく動揺していた。


 そして、残った他のマミー達も顔の包帯がずり落ち、夏の顔を(さら)す。


「ひいっ?! も、もしかしたらあたしが倒したマミーの中に、本物の夏が……」


「日奈子ちゃん、ここに居るのは全部マミーもどきで、なっちゃんは最初から居ないわ」


「でも、でも……」


「日奈子ちゃん、貴女(あなた)がそんな事でどうするの? 貴女の気持ちを汲んで行くように言ってくれた走矢ちゃんとなんて約束したの? 貴女があきらめたら、なっちゃんは助からないのよ?」


 日奈子を抱えて、マミーの包帯攻撃をかわしながら、リリスは活をいれる。


「走矢……くん」


 そんな日奈子とリリスにマミーが一斉に包帯を伸ばし、攻撃する。


 が、まばゆい閃光が周囲を(おお)い、マミー達を蹴散らす。


 そして、倒れたマミーの頭部から夏の顔の仮面が落ちる。


「違う……。全然お夏に似てない! こんなのをお夏と間違えるなんて!」


 日奈子が翼を震わせ、(いかづち)の雨を降らせると、残ったマミーは全て包帯がチリヂリになり、消滅する。


「すいません、リリスさん。足手まといになっちゃって……」


「そんなことないわよ。こうしてマミーを全滅させてくれたじゃない」


 そう言ってリリスは微笑む。




「そろそろ燃えつきたか?」


 グールの餓鬼火に飲み込まれた愛美。


 勝利を確信し、気の緩むグール。


 しかし、次の瞬間、餓鬼火は内側から切り裂かれ、突風によって消し飛ばされる。


「なっ、なんだと?!」


 動揺するグールに、羽根弾を放つ愛美。


 その羽根弾は突風によって後押しされ、普段よりも早い。


「くそっ、餓鬼火が破れるなんて!」


 グールは動揺しながらも、餓鬼火で羽根弾を焼きつくそうとする。


 しかし、突風により後押しされた羽根弾は、焼きつくされるよりも早く、餓鬼火を貫通し、グールに突き刺さる。


「クソッ……」


 片膝を付いたグールを、愛美の風をまとった翼が斬り裂く。


 愛美が操っているのは、風の結界。


 広域に展開するのが苦手なため、自身が(まと)って攻防に使う愛美だった。




「でぇぇぇぇぇいっ!」


 理奈渾身の回し蹴りがジーンズの女に命中する。


「クソッ、なんであたしの結界内でそんなに動けるんだ?! こうなったらもっと気温を下げて……。なんだ?! 結界を制御できない?!」


「貴女の結界は私の結界が侵食(しんしょく)してしまいましたよ? もう、この空間の支配権は貴女(あなた)にはありません」


 そう言って理奈が指を鳴らすと、結界内の空間いっぱいの魔法陣が出現し、気温も通常のものに戻る。


「くっそぉぉぉぉ!」


 両手から氷の剣を伸ばし、ジーンズの女は理奈に突進する。


「氷の妖が熱くなっては駄目ですよ」


 攻撃をかいくぐり、右の拳をジーンズの女の腹部にめり込ませて理奈は言う。




「その鎧はあくまでも試作品だから」


 オルトロスの言うその鎧とは、トン助とケン太が身にまとう、金と銀の鎧の事だ。


 支所内に潜入に成功したエリス達だったが、オルトロスの待ち伏せに会い、戦闘状態になっていた。


 こちら側はエリス、アリス、玲奈、そして余白。


 敵はオークのトン助、コボルドのケン太、そして謎の黒い鎧を着込んだ人物。


「せぇい!」


 掛け声と共に木の葉を撒き散らす余白。


 それにまぎれてエリス達は敵に攻撃をはじめる。


 オルトロスを狙うエリスの前に黒い鎧の戦士が立ちはだかり、ソレに飛び蹴りを食らわせ、頭と顔を覆っていたカブトが吹っ飛ぶ。


「えっ……?!」


 驚くエリス。


 カブトの下から蒼条 夏(蒼条夏)の顔が出てきたからだ。

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