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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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俊紅の王9

 柚木島 深完(ユギシマ ミカン)の名前を聞いてから愛美の心中は穏やかでは無かった。


 現在の周辺住民の記憶から消えた、柚木島家。


 記憶を操作されているのは近隣住民か、アルテミスの宝玉に関わった河童姉妹やゴブリン兄弟なのか。


 彼らだけではない。


 エリスも新矢が入院したあと、柚木島家の様子を見に来ている。


 他にも当時、新矢とコンビを組んでいた澄白 余白(スミシロ ヨハク)や他の機関職員達も柚木島家の敷地に立ち入り、そこの住人と話をしている。


 そして出てきた柚木島深完。


 キメラの浪川 栄子(ナミカワ エイコ)が招き入れた妖達。


 彼女達のほとんどが、その存在を忘れていたと言う。


 こうなってくると1つの前提が(くつがえ)ってくる。


 あの記憶操作の結界は本当に栄子によるものだったんだろうか?


 栄子とは別に、あの結界を張っていた者がいたのではないのか?


 そしてその候補に上がるのが柚木島深完だった。


「柚木島……。いったい何者なの……」


 手元のノートPCで人妖機関のデータベースにアクセスするが、該当するデータは無い。


 愛美は深いため息をつく。




「なに、これ? 民家? もしかして気づかれて誘い出されたんじゃないの?」


 ガーゴイル達を追跡する栄子達。


 その中のボーイッシュな栄子が怪訝な顔をする。


「このあたりは空き家が多いから、借りるにしても勝手に潜伏するにしても、都合が良いんじゃない?」


 眼鏡の栄子によると、この地域は山を切り崩して開けたため坂が多く、歳をとった住民が去っていき、空き家が目立つようになったとの事だ。


 そして、ガーゴイル達が入っていったのは2階建ての普通の民家だった。


 栄子達は建物の周囲に結界や罠が無いかを探りながら建物に近づいていく。


 その時、栄子達の背後から巨大な火球が近づいてきた。


「危ない?!」


 眼鏡の栄子が叫ぶと、他の栄子達も回避行動をとる。


 火球はそのまま、ガーゴイル達が入っていった家に命中し、建物を焼く。


「なに?! 今の!」


 リーダー格の栄子が叫びなが、火球の来た方向を見ると、若い男女4人が立っていた。


「……。なぜ撃った……」


 4人組の男がもう1人の男に問いかける。


「この方が手っ取り早いだろ?」


 もう1人の男は面倒くさそうに応える。


 だが次の瞬間、火球を撃った男の足元の地面から、何かが伸びてその足に絡まり、男を地中に引きずり込む。


火頭魔(カズマ)?! まずい、補足されているぞ。散れ!」


 もう1人の男の号令で、残る2人の女性と3方に散る虚空のメンバー。


 1人はロングヘアーに白いワンピースの一見、清楚な女性。


 もう1人は10代(なか)ばほどの、ショートヘアーの活発そうな少女。


 それに筋肉質で体格の良い短髪の男。


 その男が何かを感知し、手印を組んで障壁を出現させると、そこに火炎弾が命中する。


 放ったのは10代後半くらいの少女。


 そばには騎士の様な鎧をまとった20歳前後くらいの女性が立っている。


「できるだけ生け捕りにするわよ、エリゴール」


 少女が女性騎士にそう指示を出すと、彼女は黙って(うなず)く。


「まさかつけられていたなんて……。不覚だわ!」


 栄子達の頭上からリーダー格のガーゴイルが、自身のいたらなさを嘆く。


 刹那、自分に向かって何かが飛んでくるのを察知したリーダー格の栄子。


 それを紙一重でかわすと、カウンターで蹴りを食らわせようとするが、防御されてしまう。


「ちょっとは歯ごたえがありそうだな!」


 襲撃者、ケルベロスが吠える。


「わかっていると思うけど、基本は生け捕りよ」


 虚空の少女と戦う、ヘルハウンドか注意を促す。


 そして青白い顔色の男が虚空の女性に向かっていく。


「なんだ?! 死体みたいな顔をして」


 虚空の女性が言うや否や、男は口から何かガス状のモノを吐き出し、女性をそれで包み込む。


「ちっ! コイツ、ガストか」


 ガストとはガス状の妖で、人や動物の死体に入り込み、操り、潜む。

 

「俺でお前の肺の中を満たしてやる」


 女はもがき苦しみながら倒れる。


「呆気ない。虚空の連中は基本、単独で動くような実力者揃いだと聞いたが、この程度……?!」


 突然、ガストの声に焦りがまじる。


「コイツ、肺じゃなくて胃袋に俺を吸い込んでいたのか?! しかし、この数は……」


 焦るガストの(かたわ)らで、倒れた女の身体が崩れていく。


 その崩れた肉体は大小、無数の虫となり、ガストに群がっていく。


「この虫けら共、俺を捕食するんじゃねぇ?!」


 その言葉を断末魔に、ガストは消滅し、代わりに虚空の女が立っていた。


 蠱毒(こどく)と言う呪術によって作られた毒蟲。


 その集合体がこの女性、『蠱毒の姫』。


 その本領によって、ガストは呆気なく倒されたのだった。


「なんだ?! あんな化物がいるのか?! だがこちらもすでに1人始末している。勝負はこれからだ!」


 ヘルハウンドは自分の相手の少女に猛攻を仕掛ける。


「まさか火頭魔さんがあの程度でやられると思っているんですか? おめでたい方ですね」


 その猛攻を片手でさばきながら、少女は小馬鹿にした様な笑みを浮かべる。


「何?!」


 ヘルハウンドが少女の言葉に反応しかけた直後、エリゴールに指示を出した少女、アモンが火柱に包まれる。


「アモン?!」


 もう1人の男と交戦していたエリゴールが、動揺する。


 男はそのスキを逃さず、拳に『気』を集め、渾身の拳打を見舞う。


 悲鳴をあげる間もなく吹っ飛ぶエリゴール。


「仲間が殺られたぐらいで取り乱しすぎだ」


 と、冷たく言い放つ。


 火柱に包まれたアモンのそばの地面から、顔を出す火頭魔。


「ひでぇ目にあったぜ」


 そう言って、黒焦げの巨大なミミズを放り投げる。


「ワームも殺られたか……」


 ヘルハウンドの顔が曇る。  

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