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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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俊紅の王4

「なんだお前ら、そんなことしてたのかよ。水クセェな、あたい達も誘えよ」


 上沢高校に戻ったゴブリン兄弟。


 外出の理由にレイコが反応する。


「お前らに俺達の気持ちが分かるかよ。高校生やってた時だって、一度も話しかけてこなかったくせによ」


「ちょっと、そんな言い方無いでしょ。アイツらとは相沢先生、襲った時共闘してたんだから」


「共闘? 捨て駒にしただけだろ。笑わせる」


 ゴブリンの反応にムッ、とした夢子が反論するが、相手にされない。


「いい加減にしなよ。そんな言い方ばかりしてると敵を増やすだけだよ」


「バカ言え、産まれた時から敵ばかりだ。どいつもこいつも俺達を使い捨てる事しか考えていない」


 その言葉に発言者の羽月は悲しそうな顔をする。


「確かに最初はみんな俊紅を取り合う敵同士だったけどさぁ、あのキメラに食われたりした中生き残ったわけじゃない。情が湧くことだって……」


「もうよしなって。君の言いたい事はわかるけど、彼の言ってる事が正しいよ。実際あたしは彼らの同族が消耗品の様に使い捨てられていくのを見てきた。壁を作るのは生きるための手段なんだ。利用されないための」


 必死に説得しようとする羽月を紗由理が止める。


 年長組の紗由理には兄ゴブリンの言わんとすることが何となく伝わっていた。


 他の年長組の霧香と星垂が口をはさまなかったのもそのせいだ。


「悪かったね。もっと早く止めるべきだったよ」


 小声で兄ゴブリンに謝罪する紗由理。


「でもね、あの子達だって決して君を下に見て言ったわけじゃないんだ。羽月もレイコもあの変わった羽のせいで同族から迫害されたり酷い目に合いながら生きてきた。君達の気持ちが微塵もわからないわけじゃないんだよ」


 紗由理の言葉におとなしくなる兄ゴブリン。


 しばしの沈黙の後、口を開く。


「そういやアイツ、どうしたんだ? ……死んだのか? いや、壊れたのかが正しいか」


『アイツ?』


「クグツの女だよ。確か1年生だったろ? 今みたいに俺達が揉めると、必ずアイツがやって来て仲裁しようとするんだ」


 しばしの沈黙の後、一同がざわめき始める。


「なんで……忘れていたんだ……」


「今まで思い出せずにいた?!」


 レイコや火織が取り乱す。


「やられたって話は聞きてない。でもあの子、キメラが取り込んでパーツにすることもできないし、かと言って簡単に殺られる様な子じゃない……。本当にどうなったんだろ、柚木島 深完(ユギシマ ミカン)


「柚木島?! アイツ、そんな名前だっけ? ……なんだ、頭の中がこんがらがって、話が繋がらない」


「なんかこれって……」


「うん、まるであのキメラの記憶操作みたいだ」


 羽月が言わんとすることを、紗由理がまとめる。




「房士さん、貴方のスマホを貸してください。ここにかけてみましょう」


 呉夫な3台目のスマホを見つけたあとも工場を家探(やさが)ししたラードン達。


 これといった情報を得られなかったため、直前まで呉夫が頻繁に連絡を取っていた電話番号にかけてみるという話になった。


「なぜ房士のを? 別に私のでも構いませんよ?」


「いえ、総士さんは呉夫さんに連絡をとっています。万が一、その番号が向こうに伝わっていた場合、こちらに注意なり何なり、向くかもしれません。房士さんの番号からかける方がリスクを押さえられます」


 そう言ってまず、72という名前の電話番号に、間違い電話を装ってかけてみるが、相手は無言で一言も喋らず、電話を切ることもなく時間だけが過ぎていった。


「すっ、すいません。間違えました」


 たまらず電話を切るラードン。


「なんともきみの悪い相手でしたね」


「何か合言葉とかが必要だったのではないでしょうか?」


「なるほど、そうかもしれませんね」


「もう一方もかけてみますか?」


「ええっ、この空と言う連絡先、一番最後にかけているのが気になるんです」


 そう言って番号を入力する。




「どうした? 誰からの電話だ?」


「知らない人。間違えたって言ってたけど、この電話番号教えてあるの、呉夫だけなんだよね」


 場所はホテルの一室で、少女と中年の男が話している。


「なんだと?! 呉夫のヤツになんかあったのか?」


「わからない。心を読もうとしたけどノイズが多くて読み取れなかった」


「お前の能力が通じない?! 警戒する必要があるな。とりあえず手下にヤツの工場を探らせよう」


 そう言って男は自分のスマホを取り出し、通話相手に指示を出す。


「ここは日本。私達にとってはアウェーなんだから、無茶をやらせちゃ駄目だよ」


「わかっている、ダンタリオン。心配するな」


「奪われた『ソロモン王』の事だけでも大変なのに」


 ダンタリオンと呼ばれた少女は小さく呟く。




「機関の連中は全員帰ったわ。今日の作業は終了だそうよ」


 場所は以前、走矢が避難した地下に存在する地下シェルター。


 現在は瓦礫の撤去作業員の休憩室として使われているその部屋に、オルトロスの声が響き渡る。


 そうか、と言って報告を受ける中年の男。


「ここなら当分の間、守りの心配はいらないだろう。ソロモンの奴らをあぶり出して排除していくターンだ」


「連中の宝物。ソロモン王の遺体がこんな所にあるなんて、夢にも思わないでしょう」


 微笑を浮かべるオルトロスの視線の先にある古い棺。


 ソロモン王の遺体は密かに人妖機関、上沢支所の地下に運び込まれていた。

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