第三話夕食そして悪巧みとスキル発動
「よし、それじゃあ食堂に移動するぞ」
団長の号令でみんなが動き出した。それにしても夕食かぁ、やっぱり異世界食材のオンパレードだろうな。美味しいといいけど……。僕は、ステータスが残念で落ち込んでいるのをさとられないように空元気を出しながら蔵之介に話しかけた。
「ねえ、蔵之介。どんな料理が出てくると思う?」
「そうだなー、やっぱりモンスターの肉とか異世界の味と見た目が一致しない野菜とかじゃないか?」
「確かに、よくあるのだとりんごっぽいのに食べたらみかんだったみたいなやつとかだよね」
蔵之介は、そんな僕の空元気に対してしかたねーなーと言いたような顔で何も言わずに付き合ってくれた。
◆◇◆◇◆◇
食堂につくと、上座には国王御一家と宰相が座っており、こちらを待っていた。しかし僕らの目はそちらには向かずに、周囲で給仕の準備をしているメイドさんや執事さんに目がいっていた。だって、仕方ないじゃん。メイドさんだよ?しかも秋葉とかにいるようななんちゃってメイド服じゃなくて正統派はクラシカルなメイドさんだよ?執事さんもテンプレを踏襲したような格好してるし、うん仕方ないよね。
なんて考えていると先程のステータスのことは、すっかり頭から消えていた。
「さあ、皆様方席におつきくだされ。夕餉といたしましょうぞ」
そんな国王の宣言から夕食が始まった。
「本日のメニューは、王家直轄領で収穫された小麦を使ったパン、オークジェネラルのステーキ・キャローのグラッセとオニオルムのソースを添えて、そしてキャベッとコルジオンの塩バタースープです。」
という老紳士といった風体の老執事の説明とともに僕達の前に料理が運ばれてきた。それをひと目見て、みんなの喉からゴクリ音がした。ホカホカのパンに、こんがりと焼けたステーキと食欲をそそる人参と玉葱の匂い、湯気を上げる出来立てと見ただけでわかるスープ。の視覚と嗅覚への暴力、更には皆お昼を食べる前にこちらへと転移してきたのでお腹がとても空いているのだ!すると
「な、なぁ。国王サマよ、この料理もう食ってもいいんだよな?」
と待ちきれないといった顔をした先生が問いかけた。他のみんなもソワソワしているし、普段は感情の起伏が見えない無海 大介でさえも耐え難いって顔をしている。かくいう僕もさっきからお腹が鳴りっぱなしだ。
「もちろんじゃとも、思う存分お食べくだされ」
と国王がどこか作り物めいた笑顔でそういった。だけど僕らは眼の前の料理に夢中でそれに気づかなかった。
よし、それじゃあ食べるぞ。まずは、パンとスープだな。パンは、スライスしたフランスパンのような感じで切ったステーキをのせたり、スープに浸して食べるのも良さそうな感じだ。というわけで、最初はスープに浸して食べてみよう……
食事を進めていると、お腹が満ちてきたからかだんだん思考に靄がかかっているかのようにボーっとしてきた。すると、
『薬物を検知しました。$#&@(◼️◼️)の効果により毒無効スキルを獲得しました。また、◼️◼️の効果により薬物を混入した者から経験値140を強奪しました。これによりレベルが8に上昇しました。』
ふぁっ!?な、なんだ今のってか今のアナウンス信じるならこの食事危ない薬盛られてたってことだよな!?そんでもって思考がクリアになったのは”毒無効”とやらを獲得したからか。
チラッと周囲を伺ってみるとクラスのみんなや先生が虚ろな目つきで食事をしていた。
それからしばらくして、みんなが食事を完食した頃、国王が、
「ハーッハッハッハッハ、愚かな異世界人共め、無警戒に洗脳薬入りの食事を食べおってからにこれでお主らは朕の操り人形。最強となりうる戦力を手に入れたぞ!これで朕は世界統一をなした史上初の覇王として歴史に名を刻めるぞ」
「お見事でございます王よ。このロベリウスどこまでもついていきますぞ」
はぁ、操り人形だって?しかも世界統一?魔王に攻め込まれて負けそうだって話は嘘だったのか?疑問に思いながらもっと話を聞こうと息を潜めていると
「よし、それではお前たちに今から命じること遵守するようにそしてここでの出来事は何事もなく終わったと記憶を改ざんしろ。では、命じるぞ。朕の命令は絶対遵守、朕に危害を加えることを禁じる。あぁ、直接間接問わずじゃ」
まだ、ましか?とりあえず国王さえ始末してしまえば洗脳は解けるだろう。だがどうやって?多くの近衛に守られた国王をレベルが上ったとしても初期値からしてそこらの一般人よりも弱い俺が?
しかたない、今は従っているふりをして隙を見て解除できないか試してみよう。
そんなふうに考えているうちにクラスのみんなの瞳に光が戻ってっきた。
「うーん、ここは……、食堂か。」
どこかほうけたような様子で蔵之介が呟いた。
「ささ、勇者様方明日の訓練に備えてこの後は入浴の後お休みくだされ」
先程の狂気じみた笑い方を感じさせない柔和な笑みで国王が話しかけてきた。
だが先程の、話を聞いているとその笑みが作り物めいたものにしか見えなかった。
◆◇◆◇◆◇
ガチャ、キー、パタン
僕は入浴後、与えられた部屋へとはいった。そこは、ベットが一つとタンス、小さな丸テーブルと椅子が2つある個室だった。それなりに住みやすい部屋ではあるな。
この国の思惑を知らなかったら、素直に喜んでいたかもしれない。
ひとまずはここを拠点として、力を蓄える。そしてどうにか洗脳を解く。そのためには、洗脳されてふりをしながら訓練で力を積むしかないな。
「あっ、そういえばレベル上がってたな確認してみるか」
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名前:氷野 剣 年齢:17 Lv:8(Next:40)
ジョブ:◼️◼️士Lv:1 未設定✕4(許可のないものに対しては隠蔽継続)
(設定可能)魔術師、戦士、拳士、回復師、斥候
筋力:15,520
体力:14,000
敏捷:12,240
魔力:15,360
魔耐:14,400
スキル:算術・毒無効
ユニークスキル:◼️奪・◼️魔法・成長補正(極大)・氷魔法・言語理解
*レベルが低いため開示できない情報があります。
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oh…何だこの数値、勇者の初期値の二倍くらいあるじゃないか。ジョブ枠増えてるし、ジョブやスキルの文字化けが減ってるし、成長補正に至っては勇者超えてんじゃん!
やべぇ、なんとか隠し通さないと絶対に面倒なことになる。俺は冷や汗をかきながら手立てを考えていたが、段々と衝撃の連続の一日だったこともあり眠りについていった。
『強い願いを検知しました。これにより”ステータス隠蔽”を獲得しました。』
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