第三話名付け
テイムが完了した瞬間、子オルトロスが光り始めた。
「くっ、前が見えねぇ、大丈夫か!?」
視界が戻ると目の前には、あのオルトロスを凌ぐほどの巨体を持つ三つ首魔犬がいた。
――グルゥ
ベロン、くすぐったい、くすぐったいって。
「お前さっきのオルトロスか?」
俺の問いかけに、眼の前のケルベロスが頷いた。
「ほー、いきなりデカくなったなーおまえ。うーん、いつまでもお前って呼ぶのもあれだし名前つけるか。」
――バウ
期待してくれてるんだな。どんなのがいいだろうか?
ケルベロス……ギリシャ神話……地獄の番犬……ちなみにこいつオス?それともメス?
――メスです。主よ。
そうか、メスか……なら、神話違うが冥界つながりで
「”ヘル”ってのはどうだ?冥界の女神様の名前だが」
ん?そういえば、さっきこいつ喋ってなかったか?
――ヘル、私は、ヘルですね。気に入りました。ありがとうございます主よ。
やっぱ、喋ってるよな?
――はい、この姿になってから主とパスがつながったようです。
そうか、まあいいだろう。それで念話ができるようになったんだな。便利でいいじゃないか。
◆◇◆◇◆◇
(それにしても腹が減ったな)
――でしたら、なにか狩って参りましょうか?
(いや、さっき戦ったオルトロスの肉があるから食べるものはあるんだが……)
――私のことをお気になされておられるのでした、大丈夫ございますよ。元同族とはいえこの世特にこの大陸は弱肉強食ですから。
実際何でもなさそうな様子で彼女は言った。
(そうか、ならありがたく糧になってもらおう。ヘルはどうする)
――私はロックバードでも狩ってこようと思います。主の今後の食料も兼ねて、では行ってまいります。
(あっ、おい)
いっちまった。一食二食じゃ食べきれないくらいあるんだが。まあ、ヘルの分も合わせるとほぼ持たないからありがたいし今回は任せようかな。多分力試しもしたかったんだろう。
程なくしてヘルが全長三メートルぐらいの巨大な鳥を引きずりながら帰ってきた。
――只今戻りました、主よ。
そんな、凛とした声で報告しても褒めて褒めて!と言わんばかりに振られている尻尾は誤魔化せませんよ。ヘルさんや。
「ありがとうな、助かったよ」
俺はそう言ってヘルを撫でながら褒めた。
ひとしきり褒め終わった後、俺はヘルが狩りに行っている間にオルトロスの爪を削って作った骨製のナイフでロックバードと持ってきていたオルトロスの肉を解体した。
「よし、解体終わりだ」
――お疲れ様です、主よ。私も手伝えたら良かったのですが。
「気にするなよ。俺一人じゃこんなデカい鳥、狩るのにどれだけ時間がかかるか」
――はい。
「それじゃ、飯にすっぞ」
俺は、洞窟の中にあった乾いた枝と枯れ草、ナイフで削って板にした木材で火を起こした。起こした火のそばに串にさした肉を焼き始めた。
塩もないし、ただ焼いただけの肉にはなるが食べないよりはマシだしな。
しばらくした頃、だんだん香ばしい食欲をそそる匂いが立ち込めてきた。
そろそろ食べ頃だな。
「そろそろ焼けるぞ」
――主の手料理楽しみです。
そんな、ヘルの言葉に俺は苦笑しながら
「そんな大したもんでもないけどな」
よし、いい感じだな。
本日のメニューは、オルトロスのもも肉とロックバードのもも肉の串焼きだ!
「ほら、ヘルの分だ」
そういって、ヘルの前においた大きな葉の皿に俺の十倍くらいの肉を載せると、
――主よ、主からお先にどうぞ。従者の私がお先にいただくわけには参りませんので。
そんな真面目くさったヘルの言葉に
「気にしなくていいんだぞ。じゃあ、食べようか」
まずは、オルトロスのもも肉からだな。
口に加えたその瞬間、甘い肉汁と程よい弾力、調味料もないのに今まで食べた肉の中でも一、二を争うような旨さが口の中に溢れた。
俺は、夢中になり一本食べきった。
つ、次はロックバードだな。
俺は、ロックバードの肉を口に含んだ。その瞬間鶏肉特有の淡白な味わい、オルトロスとはまた別の旨味を感じた。
その時俺は、今自分がどこにいるのかも忘れて食事に夢中になった。
ちらりとヘルに視線を向けると、ヘルも無我夢中といった感じで肉を貪っていた。
◆◇◆◇◆◇
食事が終わると、俺は急激な眠気に襲われた。いくら怪我が治ったとしても大量に血を流した事実には変わりなかったようだ。
「ヘル、すまないが俺が目覚めるまで周辺の警戒を……頼ん……だ」
――主……大丈……か
◆◇◆◇◆◇
「ぐ、うーん」
俺は、右半身から伝わる温かい感触とこんな地獄すら生ぬるい環境ではするはずのない女性特有の匂いを感じて目を覚ました。
うん?
俺は、錆びついたような動きで傍らを見た。するとそこには、見たこともないような美少女がいた。しかも、全裸の。
why…?
なんで、意識を失う前は、気絶するように眠ったはず。それにこんなところでおっぱじめるほど理性が飛んでるはずもないし。
というかヘルはどこいった?誰か近づいてきたら教えてくれるはずだが。
そんなふうに混乱していると
「うーん」
彼女が起き出してきた。
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