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朝、目を覚ますと、彼女の姿がなかった。


柔い曲線、細い身体と共に起きるのが普通になったのはいつだったか。


狭いベッドの中、互いの熱を交わらせた残り香が情けなさを誘う。


今日、彼女は休みのはずだ。


連勤明け。くたくたに疲れた彼女を労わろうと、少し高めの紅茶、お気に入りの食パンとポーチドエッグにサラダにスープを出して、少し特別な休日にしようと思っていたのに、とんだ空回りだ。


呼び出しにあったのだろう。そういう時、彼女は私を起こさずに出て行ってしまう。私は彼女がいたシーツの上を未練たらしく撫でた。


二度寝してしまおうか。いや、私はフリーランスで在宅仕事をしている。生活リズムを崩したくない。朝食もきちんと食べて散歩もしなくてはいけない。彼女との約束だ。自らに言いきかせて、彼女のいないリビングに向かおうと決めるが億劫だ。重たい気持ちのまま身体を動かして、リビングに続くドアを開ける。


エアコンのタイマーをセットしてから寝たから、リビングは寝室よりずっと温かいのだろう。けど、彼女はいないのだ。子供がお気に入りのタオルを離さないように寝室にある彼女の痕跡に触れていたい。後ろ髪を惹かれながら、ドアを開けた先だ。


「おはよう」


焦げ臭いパンと卵の匂いとキッチンの向こう。彼女がなんともいえない表情をしている。


対する私は間抜けな表情をしていただろう。けれど、寝起きの憂鬱な気持ちは晴れた。彼女のために、ああしたい。こうしたい。なんて自らが立てた計画はどうでもよくなった。


私は彼女に向かって目を細めて口角を上げ、一緒に朝を迎える喜びを同じ言葉で返した。

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