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第3話
「すいません、すいません! 間違い電話でした……!」
スマホを手に持ったまま、ペコペコ頭を下げる私。よく「日本人は電話越しでもお辞儀する」と揶揄されるが、今の場合は相手の姿が見えているので、不自然でもないだろう。
「ああ、気にしないでください。僕の方は、時間を持て余してたところだから……。たまには面白いですね、間違い電話というのも」
もはや彼は、スマホを耳から外していた。互いに相手の声が聞こえる距離というだけでなく、こちらに近寄ってくる。
優しそうな笑みを浮かべており、しかも私の好みのルックスだ。残念ながら私は商談があるから無理だけど、それさえなければ、このまま彼と遊びに行きたい気分だった。
そんな彼の顔が、微妙に曇る。
「あれ? もしかして……」




