待つ
六月。
先月は季節外れに暑かったのに、今月は季節外れに涼しい。
とても過ごしやすいのは、良いのだが。
彼女とのご飯は、今度は先に伸びそうだった。
中々お互いの休みが合わず、月の終わりになりそうだった。
しかし、日を決めようとしたとき、ふと、彼女の返信が途切れた。
一日、
二日、
一週間、
十日と待っても、彼女から返信が来なかった。
忙しいのかな?とも思った。
自分からまた連絡を入れてもいいのだが、なんとなく催促する感じが嫌だった。
しかし、これだけ返信が来ないと、良くない思いも、自分の中に芽生えていった。
彼女に嫌われたんじゃないだろうか。
思いを押し殺そうとしても、幾度も顔を覗かせる。
あぁ、ダメだ。
返事が来ないまま、二週間が経とうとしていたころ、俺は自分の気持ちをお押し殺すことを決めた。
フラれよう。
もう、自分の気持ちに嘘をつけるほど、軽い気持ちではなくなっていた。
でも、好きでない人に好かれるのは、きっと、とてもしんどいことだろう。
もし、また彼女と連絡をとれたのなら、
もし、また彼女に会えたのなら、
その時は、茶化したりせず、ふざけたりせず、自分の気持ちを正直に伝えよう。
そんな思いを抱えながら過ごしていた、その日。
バイト先で彼女に会った。
こうやって彼女を見るのも久しぶりだ。
何となく気まずい。
向こうから連絡も来ていないし、自分の気持ちも認めてしまったし。
なるべく顔を合わさぬよう。
どこか避けていたのだが、そんな気持ちを彼女は知らない。
仕事中、肩を叩かれ振り返ると、彼女がいた。
どうやら、少し携帯の調子が悪く、連絡が取れなかったらしい。そしてそのせいで、俺の連絡先がなくなってしまったというのだ。
少し疑う自分もいたが、わざわざ話かけてくるのだから、それを信じないと相手に失礼だ。
俺は、仕事が終わったあと、彼女に連絡した。
さすがに、また連絡が取れなくなるというのは悲しいので、一応電話番号も送っておいた。
それを登録するかは彼女次第だが、たぶん、登録しないと思う。
彼女は文字を打つより、電話の方がいいタイプで、やり取りをしている時、彼女に無理しなくていいからね、と。めんどくさかったら、電話でいいから、とは言っていた。かくいう俺はあまり電話は好まないが、相手がその方がいいというのであれば、それに合わせる。
彼女も何か重要なことがあったら電話するから、とは言ってくれたが、今まで一度も電話をしたことはない。だって、
俺は彼女の特別ではないから。
ダメだ。
またマイナスな方に意識が向いている。
でも、期待をするから、ショックが大きいわけで、期待をしなければショックも何もない。これは単なる自己防衛だ。それが成功したことはないが、結局はいつも傷つくが、今の自分を保つには、これしかなかった。これしか知らなかった。
早く終わらせたい。
早く彼女に会いたい。
そんな気持ちをあざ笑うかのように、空を舞ってやってきた文字は、自分に刃を立てた。
―――ごめん、今度行けそうって言ってた日、お母さんが来ることになったから、別日にしてもいい?
ああ。
あゝ。
次に彼女に会えるのはいつだろうか。