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俺と彼女と主人公とモブと  作者: しょうこう
9/13

待つ

 六月。

 先月は季節外れに暑かったのに、今月は季節外れに涼しい。

 とても過ごしやすいのは、良いのだが。


 彼女とのご飯は、今度は先に伸びそうだった。

 中々お互いの休みが合わず、月の終わりになりそうだった。

 しかし、日を決めようとしたとき、ふと、彼女の返信が途切れた。

 一日、

 二日、

 一週間、

 十日と待っても、彼女から返信が来なかった。

 忙しいのかな?とも思った。

 自分からまた連絡を入れてもいいのだが、なんとなく催促する感じが嫌だった。

 しかし、これだけ返信が来ないと、良くない思いも、自分の中に芽生えていった。

 彼女に嫌われたんじゃないだろうか。

 思いを押し殺そうとしても、幾度も顔を覗かせる。

 あぁ、ダメだ。


 返事が来ないまま、二週間が経とうとしていたころ、俺は自分の気持ちをお押し殺すことを決めた。

 フラれよう。

 もう、自分の気持ちに嘘をつけるほど、軽い気持ちではなくなっていた。

 でも、好きでない人に好かれるのは、きっと、とてもしんどいことだろう。

 もし、また彼女と連絡をとれたのなら、

 もし、また彼女に会えたのなら、

 その時は、茶化したりせず、ふざけたりせず、自分の気持ちを正直に伝えよう。

 そんな思いを抱えながら過ごしていた、その日。

 バイト先で彼女に会った。

 こうやって彼女を見るのも久しぶりだ。

 何となく気まずい。

 向こうから連絡も来ていないし、自分の気持ちも認めてしまったし。

 なるべく顔を合わさぬよう。

 どこか避けていたのだが、そんな気持ちを彼女は知らない。

 仕事中、肩を叩かれ振り返ると、彼女がいた。

 どうやら、少し携帯の調子が悪く、連絡が取れなかったらしい。そしてそのせいで、俺の連絡先がなくなってしまったというのだ。

 少し疑う自分もいたが、わざわざ話かけてくるのだから、それを信じないと相手に失礼だ。

 俺は、仕事が終わったあと、彼女に連絡した。

 さすがに、また連絡が取れなくなるというのは悲しいので、一応電話番号も送っておいた。

 それを登録するかは彼女次第だが、たぶん、登録しないと思う。

 彼女は文字を打つより、電話の方がいいタイプで、やり取りをしている時、彼女に無理しなくていいからね、と。めんどくさかったら、電話でいいから、とは言っていた。かくいう俺はあまり電話は好まないが、相手がその方がいいというのであれば、それに合わせる。

 彼女も何か重要なことがあったら電話するから、とは言ってくれたが、今まで一度も電話をしたことはない。だって、

俺は彼女の特別ではないから。

 ダメだ。

 またマイナスな方に意識が向いている。

 でも、期待をするから、ショックが大きいわけで、期待をしなければショックも何もない。これは単なる自己防衛だ。それが成功したことはないが、結局はいつも傷つくが、今の自分を保つには、これしかなかった。これしか知らなかった。

 早く終わらせたい。

 早く彼女に会いたい。

 そんな気持ちをあざ笑うかのように、空を舞ってやってきた文字は、自分に刃を立てた。

―――ごめん、今度行けそうって言ってた日、お母さんが来ることになったから、別日にしてもいい?

 ああ。

あゝ。

 次に彼女に会えるのはいつだろうか。

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