気持ち
それからしばらく経ったが、返信は遅いながらも、彼女とのやり取りは続いた。バイト先で会えば、軽く言葉を交わし、上がりの時間が合えば、駅まで一緒に行き。
それはそれで幸せな日々だった。
そして、
自分の気持ちに気付き、
やがて大きくなっていった。
でも、
わかってる。
それは、
たぶん、ダメだ。
俺は、もう一度彼女をご飯に誘ってみた。
―――良かったら、六月にまたご飯行かない?
―――いこいこ!行きたい!
彼女の反応は悪くなかった。
むしろ良い反応だったと思う。
ただ、真正面から受け止められなかった。
俺は彼女の『好き』にはなれないと思ったから。
前にご飯に行ったときの話では、彼女は好きな人に尽くすタイプで、一途な人だ。でも、俺と仲は良くなっても、わざわざ時間を作ってまで、会うわけではない。たぶん、友達の域を出ない。
さらに、彼女は、どちらかと言えば男性が嫌いだと言っていた。苦手ではなく、嫌いだ。
彼女の中で、男性は、ほとんどが『嫌い』か『まだまし』に分類されるらしい。俺はその中でも後者だから、まだ話してくれるし、ご飯にも行ってくれるけど、そこまでだ。その先は、ないのだと思う。
なんとも変な人に恋をしてしまった。
俺には、あまり好きなタイプというものがない。よく好きになった人がタイプと言うけれど、それとも少し違う。いや、そうかもしれないが、俺の中では違う。
俺は仲良くなった人を好きになってしまう傾向があった。彼女だってそうだ。可愛いとは思っていたが、イコール好き、ではなかったのに。
良くも悪くも仲良くなってしまった。
そして、その先に踏み込んでしまった。
手を伸ばしてしまった。
触れてはならないものに触れてしまった。
覗いてはならないものを覗いてしまった。
ああ。
あゝ