その後
暑い。
眠い。
俺は、五月中旬とは思えぬ太陽の暑さにうだりながら、彼女と並んで一緒に駅に向かって歩いていた。
昨日は大変だった。
もはや今朝ってレベルだが。
結局彼女に負けて、行為が終わった時には五時を過ぎており、空は少し白んでいた。そこから寝ようにも、彼女が俺の右側で寝ていたし、なぜか俺の右腕に抱きついていたので、右腕がとても痛い。そんな状況で寝ろって方が無理な話だ。
隣を歩く彼女も寝不足なはずなのに、俺が見る限りはなぜか元気そうだ。そして相変わらず可愛い。
「ほらこっち」
いかんせん、昨日は暗かったので全く道を覚えておらず、彼女主導で駅に向かっているのだが、昼間でも覚えられる気がしない。そこまで複雑な道ではないが、道を覚えるのは苦手だ。
「え~、覚えて」
なぜ?
覚える必要ある?
またここに来ることある?
次は俺ん家がいいな~。
嘘です、すいません。
そうして少し言葉を交わしながら、電車に揺られ、仕事場の手前で彼女と別れた。
ようやく訪れた幸せな時間は、昨日までとはまるで違って、あっさりと終わりを告げた。
一人の帰り道は、昨日のことを頭に浮かべながら、感触を思い出しながら、夢だったんじゃないかという気持ちを否定するかのように、ずっと余韻に浸っていた。
―――今日は世話になった。ありがとう。寝不足になっちゃってごめんな。仕事頑張って。
彼女に連絡を残しながら。