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episode.『03月04日(月)』



冬は別れの季節のイメージって言うけれど


実際は春が出会いと別れを繰り返す


そして俺にとって春は


別ればかりを繰り返す忌むべき存在


俺一人、あいつらどうしてるかなんて、思いたかないよ


散り行く花びらを見て、胸の内が高鳴るなんて


そんな終わりと始まりの鐘の音なんて聞きたかないよ



      ※


小さかった頃、ここからいなくなりたいと


もっと自由に好き勝手やりたいと


そう思っていた


でも、それと同じではないけれど


それに似た別の場所に身を置けるとして


現実を知った僕には踏み出す勇気がありません


上を見上げて足を踏み外し


元の場所へ戻るような


それより先へ行けない人生でしたから



      ※



今より悪くなることで


今よりもっと上に行けるチャンスがあるなんてのは


とどのつまり、本人の頑張り次第


それでダメだった人も五万といる


スポットライトにあたるような


選考側に回るような


そんな人になれるのは一部の人間


たとえどんなにビジョンを固めても


俺はダメな側から抜け出せる気がしない



      ※



あの頃の俺だったら


行くことに躊躇しなかった


でも今は背負ったものがあるから


自分に課した枷を


反故にするなんて無責任なこと


俺にはできそうにない


曲げたくないただの意地


それを言い訳にして逃げているようにも聞こえる


迷っているんだ


前へ進むことを


恐れているんだ


俺も戻らなくなることを



      ※



これから先もきっと俺は一人だろうけれど


だからこそ今を捨ててまで行く必要があるのかと


欲しかったものはそこにもないんじゃないかと


幸せになれる未来が見えない


でも今のままじゃ一生手に入らないまま


変えたいのなら変えるしかない


俺には何かを捨てる覚悟がない


一縷の保証もないから不安なんだ



      ※



ここにいることがただの意地で逃げ道なのだとしたら


俺が前を向くには今を捨てるしかない


それでも良かったと思える日がくるのだろうか


少なくとも今のままで十分だなんて到底思えそうにない


でも、できるだろうか


やるかやらないかじゃない


そこへ行くべき確固たる動機が


不純でもいいから欲しかった



      ※



決意だけで上手くいくなら


俺の願いは全て叶っている


そんなに単純じゃないから困っているんだ


もう足掻いても意味ないんじゃないかってくらい壮大で


一人じゃなかったら


10人くらい仲間がいたら


笑い合える場所だと知れたら


俺はもうこれ以上には耐えられそうにない


理由が一つじゃ足りないんだよ



      ※



1日じゃ答えなんて出ないよ


決心なんてつかないよ


不安は拭えない



      ※



やっぱり僕には踏み出す勇気はありません


だからこんな後ろ向きな僕でも、背中を押してくれるような


そんな人の力になりたいと思うから


もう少しだけ待っていてください



 ――妥協して選んだ道に不安は絶えず、

  さりとて、それ以外の選択肢なんてないのです――

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