episode.『04月28日(木)』
例えばの話
もしも別々のクラスになって
両思いで相思相愛の恋人同士だったなら
甘えたくなって
甘えて欲しくなって
体育祭には肩を寄せ合い
無邪気にダンスでも踊って
二人でこっそり抜け出して
帰り道
別れ際にキスをして
また明日って言うと少し寂しい
そんな未来もあったのかも知れないね
※
とても青い空の日に
どこかへ行きたいと思いはすれど
どこへ行きたいのかはわからない
素敵な景色は見られるだろう
美味しいものだってある
風を切る爽快感も知っている
なのにどうしてかな
少し物足りない感じがするんだ
どれだけ一人の趣味を極めても
楽しさに満ち足りても
心の寂しさは消えないんだ
※
孤独ってのは忘れられるもんじゃねぇ
耐えるもんだ
どんなに辛くても歯ぁ食い縛って生きていく
誰の手も届かない奥底に仕舞い込んだもの
暗闇に追いやったもの
誰にも打ち明けず潜ませて
ただ人知れず朽ち果てる
絶対に埋まらない心の穴
癒える術はなく
精神擦り減らした死人であれ
それが唯一の生き方だ
※
叶わぬ恋に現を抜かす一途な愚者の物語
これは誰よりも彼女が大好きで
誰よりも彼女を大切に思い
誰よりも彼女を傷つけまいと振る舞って
そうして気持ちに蓋をした
いつも通りを徹し
過去に背を向け
ただ妄想ばかりを膨らまして
後悔を積み重ねて
最後まで孤独に身を委ね朽ち果てる
そういう物語なんだ
そう、これは……私の物語なんだ。
※
恋バナは苦手なんです
誰にも知られたくない
夢のようなものだから
同情や理解も求めてはいません
ただ自分の中に大切に仕舞っておきたい
自分が好きなのは彼女だけ
たった一人の彼女だけ
たとえ他の人を好きになっても
この世で一番愛していたのは
今も変わらず一人きり
知られていいのは一人だけだよ
※
どんなに忘れようとしてみても
愛しい君が夢に現れて
仕舞いには日常の最中にまで
君の名前が目前と姿を見せる
その度に息は詰まって
軽くトラウマと呼べるくらい
胸の奥が締め付けられて苦笑してしまう
まるで世界が背中を押して
会いに行けと促しているかのよう
それでも足は動かない
もういいんです
※
もうどれだけ苦しんだかわからない
憎たらしくはあるけれど
只々自分が情けなくて
こんな不甲斐ない自分を
誰も好きにはならないだろうと
冷たさだけが充満した
優しいだけが取り柄の
文句ばかりの私なんて
嫌々ながらの照れ隠しさえ
君にどう映っていたのかなんてわからない
ただ君が愛しい毎日でした
――生まれてこの方22年、
孤独を癒す術が見つからない――




