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episode.『07月17日(水)』



父の罵声が止むことはなく、一睡もできずして今日を迎えた。


たとえどんな時でさえ、眠れていたのに。


初めてかもしれない。


こんな徹夜明けのような朝は。


まるで殺人鬼を前に怯え、父がいなくなる方法ばかり模索して。


自分が死ねばいいのだと落ち着く。


誰に何を言ったところで解決しないのだから。



      ※



どうあがいても明るい未来なんてありはしない。


薄い壁の家で父の罵声が鳴り響いても、近所に聞こえていても。


関わらぬが身のためと、誰も触れては来ない。


父が誰かに詰問されても、平気で笑みを取り繕って、のちに家族に被害がいく。


誰も助けてくれはしない。


逃げることさえ不可能で。


私は病む。



      ※



兄はこれを22年間も耐えていた。


けれど母は、ずっとこの苦しみに耐えている。


凄いと思う。


父の怒り全てを集中砲火で浴び続け。


自分の意見もちゃんと言っている。


知らんという言葉で片付けては寄生虫のように居座る父。


過去を掘り返し、責任を押し付け、酒を飲んでは怒鳴り続ける。


最悪の極み。



      ※



今なら言えるかもしれない。


私は一番、不幸な人間だと。


家の中にも、外にも、希望なんてありはしない。


救いようのない病み人。


いつ死んでもいいように今を綴っては、他人に迷惑をかけないようにしている。


本音を言える時があるとすればここだけ。


きっと死ぬまで、誰も私を見つけれはしないよ。



      ※



いつ死のうか、いつ死ぬべきか。


そんなことを考えて過ぎる日々。


叶わぬ恋と叶わぬ夢。


何にどれだけすがろうと、逃れはしない恐怖がある。


だから毎日、怯えて生きている。


何か支えが、頼りが、一つでもあれば救われたかもしれない。


何もかも一人で抱え込む苦しみ。


周りが幸せならそれでいいよ。



      ※



もしも夢が叶ったら、私は誰かの夢を応援する人になりたい。


私のような苦しみを抱える同士を救う人になりたい。


無力な子供の逃げ道を。


好きなことをして生きられる日々を。


そんな明るく優しい世界に導いてあげられるような先導者でいたい。


苦しいのは私だけで十分だよ。


私は救世主になりたいよ。



      ※



また、一人ぼっちの夏が来る。


こんな私を誰が理解できるというのでしょう?


死ねばどれだけ楽になれる?


生きればどれだけ幸福であれる?


心の底から幸せだなんて思えたこと、一度もない。


嫌な現実から目を逸すために好きなことに没頭する。


それが許されないのなら、私に生きる価値も意味もないよ。



 ――こんな私を

  誰も理解できはしないでしょう?――

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