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映画から帰ってきて、僕は夕食の準備をした。もちろん、時間的には夕食の時間帯ではないが、僕は夕方過ぎには家に帰ってしまうので、五・六時辺りに姉さんの分だけの夕食を作るのだ。まぁ、姉さんの分だけと言っても二人前くらいはあるのだが。
夕食を作り終わり、姉さんに帰ることを告げるために二階にある姉さんの部屋に向かった。
二階に上がってすぐのところに姉さんの部屋はある。二階に上がると、姉さんの部屋のドアが少し開いていた。そのせいで、姉さんが部屋の中で電話している声が少しばかり聞こえてきた。
「――そう。よかったよ。――え?ウチに――?」
姉さんはなにやら深刻そうな会話をしているらしい。
僕は聞いてはいけないのだと思って一階に戻った。
いかんせん、夕食を作り終わってしまうと帰るまでが何もする事が無い。テレビも面白いものがやっていない。
「う〜む、暇になってしまった」
「あれ?優也、もう夕飯作ったんだ。相変わらずパパッと作るねー」
声のほうを振り向くと姉さんがいた。どうやら電話が終わったので降りてきたようだ。
「うん。もう夕飯作っちゃったから、そろそろ帰るね」
僕はそう告げ、帰る支度を始める。
「あ、そうだね」
ぶっちゃけ、帰る支度というのも特に無く、出入りに必要なカバンと制服になるだけですむのである。夕飯を作り終わった後ですぐに着替えた僕は実際そのままでも帰れる状態なのである。
「じゃあ、また明日」
僕はそう言って玄関までいく。
「うん。……それじゃあ、また明日」
姉さんもそう言う。
そして、僕は帰路についた。