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「そういえば、僕の分も払ってくれたけれど、姉さんチケット代残ってるの?」
一人でメニューのほとんどを食べていたから凄く気になっていた。
「ふっふっふ、優也よ。その点、ぬかりは無いのだーー」
と言いつつ、姉さんはバッグからある紙切れを取り出した。
「え……?それって……」
「そ、今日観る映画の無料招待券」
その通りだった。しっかりと『映画の題名』と『無料招待券』という文字が記されている。
「姉さん、そんなのどこで手に入れたの……?」
散歩以外めったに外出しないのにどうやったら手に入れられるのだろうか。
「それはね、昔の友人から貰ったんだ」
突然、姉さんは寂しげな表情へと変わった。
「って事だから。早く観に行こっ」
そう言って姉さんはさっきの寂しげな表情など無かったように楽しそうな声に切り替え、僕の腕を引っ張り出した。
「あー、分かったから。チケットに引き換えないとダメだよー」
僕は姉さんを引きとめ、カウンターで姉さんの無料招待券をチケットに引き換え、僕もチケットを購入した。
「じゃ、入ろうか」
僕がそういって振り向くと、姉さんはさっきまでいたところにいなかった。
「あれ?姉さん?」
周りを見渡してみると、姉さんはある行列に並んでいた。
「姉さん、まだ食べるの?」
姉さんに近づいてそういうと、姉さんは嬉しそうな顔をして答える。
「だってー、久しぶりにこんなところに来るんだもん。やっぱり映画館はコーラとポップコーンでしょ」
姉さんは、映画館にある購買の列に並んでいたのだった。いまさらながら僕は、姉さんが子供っぽいと思った。
少し待つ程度で、姉さんの順番になって姉さんは自分の分と僕の分のコーラとポップコーンを買った。姉さんのポップコーンはもちろんLサイズである。僕は、昼食を食べたばかりなので、控えめにSサイズにした。ぶっちゃけ、姉さんは食べすぎだと思う。