6
6
「家族がいないって……いったいどういうこと?」
僕は尋ねた。
だが、彼女は椅子に座ったままうつむいて喋らない。
「僕を呼んだ事、変な意味じゃあ……無いよね?」
僕はとうとう聞いてしまった。
すると、彼女はいきなりこっちを向いて喋った。
「それは無い。それは……無いの。そんなつもりじゃ……」
彼女はだんだんうつむいてしまう。
「えっと、じゃあ、整理しよう。まず、家族がいないという意味は元々この家にいないのか、出かけていないのか、或いは……出て行っちゃったとか……」
最後の言葉に、彼女はビクリと反応した。
「……出て行っちゃったの?」
コクリと彼女は頷く。そして口を開く。
「……交通事故」
そうつぶやいた。
「僕がこう聞くのは何だけれど、もしかして……亡くなったの?」
彼女は頷いた。
「オーケーオーケー、じゃあ、次に行こう。何で僕をこの家に招いてくれたの?」
「……寂しかったの」
彼女はゆっくりと僕のほうを向いて喋り始めた。
「あの人がいなくなって、お母さんとお父さんが死んじゃって、一人でこの家でいて寂しかったの……」
「それで、暇を持て余している僕を家に呼んだと」
「……うん。そういうこと」
「そういえば、なんで僕が暇人だって分かったの?」
「それは、私が散歩している時に見かけたから。制服のまま公衆トイレに入って私服で出てきた君を」
彼女は思い出すように言う。
「それと、私服のままのんびり土手で寝転がってる君を何度も見かけたから」
「あぁ、それで」
そりゃあ暇人に見えるわな……。
僕は自分の事ながらそう思った。