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映画を観に行った次の日。僕はいつもの様に姉さんの家に来た。
いつもの植木鉢の下を見る。
――だが、今日はいつもと違った。
鍵が無いのだ。
僕はもしかしたらとドアノブを捻ってみた。
しかし、鍵がかかっている。
ふと、ドアのポストを見ると紙切れが挟まっていた。僕は嫌な感じがして、奪い取るようにその紙を掴み、広げた。
それは、姉さんが僕にあてた手紙だった。
『如月優也様へ。昨日観た映画は私の前の彼氏が作ったものです。彼と私はお互い映画好きだから気が合い付き合い始めたのですが、「彼は映画作りをしたい、だからそのための勉強をするので、待っていてくれ」と言って私の元を離れていきました。そして、彼は晴れて映画監督となり、私に自分の映画を評価して欲しくて招待券をくれました。それで昨日、私は優也を誘って映画を観に行きました。そのあと、私は電話で私なりの評価を彼に告げると、彼は私に告白してきました。だから、私はあの人のもとに行きます。私のほうから勝手に誘っておいて真に申し訳ないのですが――』
『――君と出会ったこと、無かった事にしてください――』
僕はそこまで読むと、その手紙をくしゃくしゃに丸めてしまった。
「なんだよ、姉さん。勝手に誘っておいて、勝手に切り捨てるのかよ」
僕は、丸まった手紙をさらに握りつぶした。
「僕は結局、弟でしかなかったわけかよ」
思わず、僕は涙を流した。
「元彼の方が、よかったってわけか」
そして、僕はその場に崩れてしまった。
「そりゃ無いだろうよ……」
僕は、いつの日からか、姉さんを想い続けていたというのに――。