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――玄関の前の植木鉢の下に合い鍵入れておくから、それ使って入ってね。
僕は玄関の前の植木鉢の下を探してみた。鍵が、あった。
鍵穴にさしてまわしてみると、鍵が開いた。どうやら本物だったようだ。
「おはようございまーす」
そう言って僕は家の中に入った。
ここはもちろん彼女……姉さんの家。僕は学校に行っていない暇な時間を、姉さんの話し相手として姉さんの家に通うことにしたのだ。
「うーん、おはよー」
姉さんはちょうど降りてきたところだった。その姿は――
「ちょっ……、ひなたさん!!出てくるなら着替えてくださいよ!」
彼女……姉さんはパジャマ姿で降りて来たのだ。
「んあー?あぁ、わかったー」
まだ少し寝ぼけているのか、ダラダラと姉さんは二階にある自分の部屋に戻っていった。
「あー、びっくりしたー」
僕はリビングに行き、制服からカバンの中にある私服に着替えた。
昨日姉さんと話して、僕は基本的にこの家で何をしてもかまわないという事である。だが、姉さんが買い物を頼んだり何か用事を頼んだりしたときは、おつかいに出なければいけないということだ。
着替え終わった辺りで、同じく着替えてきた姉さんがリビングに入ってきた。
「おーはよー。優也ー」
「あぁ、おはよう、姉さん」
僕は椅子に座りながら挨拶した。
「ねー、優也ー。ご飯作れるー?」
姉さんは僕の向かい側の椅子に座りながらそう聞いた。
「え?まぁ、軽い食事なら作れるけど……。僕に作れと?」
「うんそう」
即答だった。
「仕方ないなぁ……」
そう言って、僕は朝食を作り始めるのだが、これが日課になるとは思ってもいなかった。