肩にかかる三日月
そっと、首を傾げて。
「上を目指そうと思うんだ。どこでどうなるのかはわからないけど」
花火みたいに一緒のタイミングに打ち上がって、火の回り具合を調整する。そう、火がつくのは私の方が少し遅れただけ。一瞬で飛んで上がって綺麗に開こうとしてる。
「夢がない時は一年ぐらいぶらぶらしててもいいかな、とか思ったけどね」そう言って薄く笑った。いつだってちょっと先で止まったり、迷ったりしていた君はいつの間にか歩き出すタイミングを掴んだみたいだ。
「…いい一年の使い方を思いついた、そんなあなたはもしかして遠くに行ってしまうんですかね?」
よくガサツとか、男気を感じるとか乙女にはいらないことを言われたりするけど。
「もしかしたら、そうかも…ね?」小首を傾けて目を細めた。 きっと、甘い言葉を待っていたのかもしれない。〝離れたくない〟とか、そんなことはありもしないことだとわかっていたのに。
顎を限界まで上にあげてどこから見てもまあるい花火を見続けた。隣にある肩のベタつきも構わず、風に流される黒い煙も消えてなくなるまで。
肩ごしに見える三日月には私は気がつかなかった。
「いつでも連絡してくれていいんだよ?トイレ中でも、腹痛くってもできるだけ直ぐに既読つけるし、なんなら死にそうな声を聞かせてあげてもいい」
「なんなの…もっとましな言葉がなかったの?下品すぎだろ…」
頑張って真面目に言っているようにも見えるけど、その目はピクピクと半月、三日月、半月、三日月を繰り返してた。
「ついてきてもいいのにね…?」
大事な言葉はすぐ消えた。
あるサイトにも載せましたが、後々そちらを消そうかと思ったので