不治の病
自分は不治の病とやらに罹ったらしい。
その不治の病は本当に一生治らない。でも漫画とかでよくいう『寿命はあの葉が落ちた頃です』とかそういうものはないらしい。
だけど医者は変に真面目な顔をして「不治の病、なめたらいかんですよ」とか言った。…何がなめたらだ。んじゃあんたらがさっさと治してくれたらいい話じゃないか。とかぼくはそんなことをぶつくさ言いながら黙々と教室で勉強をしていた。数学をしていた。足し算。一足す一は? 「二」ぼくは万年筆で数学ドリルを進める。高校生になった隣の家の藤岡新菜ちゃんはまだ漢字の一すら書けないらしい。ぼくを少し見習ってほしいものだ。ぼくなんてもう周期表をすいへーりーべー…水素? いいや…別にいいや。だからと言って月の光は滲まない。家の瓦は全て月に吸い込まれたというのに。母親は死神が見えるのだと自称している。頭がおかしくなってしまった。ぼくはまだパソコンで三足す一を解くために数学のドリルをしていた。隣の隣の家の橋本裕也くんは東大に行った。ぼくの不治の病を治す為に。そして今日遂に人類は地球を見た。地球は四角形になった。地球は黒かった。黄色の空に瞬く間に紫の流れ星が流れる。昨日人類は初めて手を動かす。そして明日ぼくは不治の病で死んでしまうらしい。地球は無限で宇宙は有限。そんな世界でぼくは不治の山に罹った。だからこそぼくは頭の中で自分を被害者にした。そう。ぼくこそが地球の創造者だ!