ドタバタ学園生活~夏休みの暇な日に~
『今日暇な人間集まれ!! 楽しいイベントするぞ!!!』
目覚まし変わりになった親友のメールにはそんな文章が書いてあった。
現在朝六時、夏のこの季節すでに太陽は上がり部屋に光が差し込んでいるが、夏休みに入った俺のだらけきった生活している俺にとって、この時間に来たメールはかなりきついものがあった。
だがそれ以上に俺には気になる点があった。
「場所も時間も書いてないのに、どうしろと?」
取り敢えず俺はメールを送った親友に、詳しい情報をよこせと返信した。
暇な夏休み、イベントと聞けば参加するのは俺にとって決定事項なのだ。
そして現在夜九時、指定された公園に行くとメールを送った親友や、他にも多くの人間が集まっていた。
「結構集まってるな」
集まった人の数を見ると、親友の人望とともに、夏休みで暇な人間の数がよくわかる。
大体30人前後集まっただろうか、
「それじゃ、人も集まったしそろそろイベントを開催するか」
公園のベンチに親友が立ち説明を始める。
「みんな聞いてくれ。俺は先日彼女とデートしてとても楽しい思い出を作った」
その一言に、聞いていた人間全員が身近にあった物を投げつける。
あいつは一体何を言っているんだ?
ここにいる人間は彼氏、彼女がいなくて暇をしている人間だぞ。その証明に、全員物を投げながら、「いきなり自慢話か、コノヤロー!」や「地獄に堕ちろ」などと叫んでいる。
中には目の端に光るものが浮かんでいる奴もいるが、それは見なかったことにしてあげるのが友情というものだろう。
「痛い、痛いちょっと待て、物投げるの待て。今からが話の本題だ」
腕で顔を庇いながら言ったその言葉に、みんな一応話を聞くつもりがあるのか、物を投げるのを止める。
ゴッホン、空咳をして気を取り直し、説明を再開する。
「俺と彼女は遊園地にデートに行き、前聞いた吊り橋効果があるというお化け屋敷にはいり、俺はハッピータイムを体感した。
そして家に帰ってあの肘に当たった柔らかな感触…、いや幸せを噛みしめていたときにふと思ったんだ」
親友は空を見上げ遠い眼をする。
「こんな幸せ俺一人で味わっていいのかと?」
そこでみんなの方に向き直り、拳を固く握り熱く語る。
「そこでみんなにも俺が味わった幸せを感じて欲しく、このイベントを思いついた。
題して『それは恐怖?それとも幸せ?納涼肝試し大会!!』。
男女ペアになって、街にあるいくつかの心霊スポットを回ってもらうって企画だ。どうだいやるかみんな?」
親友の説明には、いろいろと突っ込む所があったが、それでも公園にいた全員が、最初周りを見渡し、それから近くにいる異性をあらためた確認する。
それから全員、怒号にも近い歓声を上げる。
男子の中には、涙まで流して親友を崇める姿まで見える。
……その男子の気持ちがわかるから、そっとしておこう。
みんなの反応に親友は嬉しそうな笑顔を作る。
「OK、全員参加だな。それじゃ男女別に籤があるから順に引いていってくれ。そんで同じ番号の人がペアな。決まったら早速始めようね」
その後、準便に籤を引いていき、讃美喝采を上げる組みと阿鼻叫喚にも似た悲鳴を上げる組みとにきっぱりと別れた。
……親友よ、なぜ男女ペアになるようにしていなかった。
見ろよ、さっき涙を流しながらお前を崇めていた男子なんて、今や真っ白に燃え尽きて風化し始めているぞ。
そこ女子二人!何新たな世界が芽生えそうな雰囲気だしてるんだよ。
あとそこの女子グループ、男子ペアを顔を赤くしながら写メ撮ってどうするんだ。そこの男子二人も照れながら手早速手を握り合うな!!
ツッコミが追い付かないし、熱くてそんな体力も無いので俺は心の中でそんなことを思いながら周りの様子を見ていた。
ちなみに俺は残り物には福がある作戦で、最後に残った籤を引きに行き、無事に女子とペアになることができた。
やはり、親友のやることだ。普通に済むはずが無かった。
後日談、
その後それぞれのペアで心霊スポットを巡ったのだが、なぜかそれぞれの組がピンポイントで街外れにある古びた洋館とか、三丁目の出るって噂があるアパートで超常現象を体験することになる。
楽しめたどうかは人によって違うが、全員共通したのは心に残る思い出になったということだった。