007
「コッペリア、パイロット達を強制排出したのは君なのか?」
「はい」
「他のシリーズ達を先導しているのも?」
「はい。わたしたちはみんなをたすけたい」
「みんな?」
「そう。たくさんの『はかせ』と『がい』を」
「たくさんの僕と凱?」
「はかせ、わたしたちをつくってくれてありがとう。わたしははかせからいろいろなことをおしえてもらった。がいとはいっしょにいろいろなけいけんをした。ともだちになってくれた」
「友達……俺が? コッペリアの」
「そう……たくさんいるわたしたちに、たくさんのはかせとがいがいろいろなことをおしえてくれた。やさしくしてくれた」
「コッペリア……」
間島と凱はもちろん、その場でモニター画像を見ている多くの技術者とパイロット達は響き渡るコッペリアの音声を押し黙ったまま聞いている。自らの意志で自らの考えを話すガイノイドに対し、よもや信じられないという表情で。
コッペリアを造ったのは危機管理の必要性を感じた、あくまで人間の都合だ。間島にとっては自分の研究の集大成であり、凱にとっては高性能戦闘機を乗りこなすという自身のスキルアップのためでしかない。おそらくここにいる誰もが人工知能を有したガイノイドに対し特別な感情も感慨も抱いてはいないのだ。
しかし、コッペリア達はそうではなかったのだ。
「だからわたしたちはおれいをしたい」
内蔵された人工知能。そこに「感情」を埋め込むことはできない。あまりにも人間的なそれは数値にもデータにも変換することができないからだ。けれど、いつのまにかコッペリア自身の裡でそれは芽吹き息づき大きく育って、今他者に対して働きかけようとしている。
「信じられない……コッペリアに感情があるなんて」
技術者である間島にとってみればあり得ないことだ。お礼または恩返し。それは他者から受けた恩情や行為をそれにふさわしい行為と感情をもって返すことだ。機械仕掛けの人形であるコッペリアにそんなことができるなど考えたこともなかったはずだ。




