目覚めの歌-1
♪♪
ラッキー・スマイル
ラッキー・スマイル
みんなの笑顔はラッキー・スマイル
しあわせ運ぶよラッキー・スマイル
どんなにつらく、どんなにくやしく
どんなにかなしいときだって
みんながスマイルふりまけば
世界はにっこり、ハッピー・スマイル
ラッキー・スマイル
ラッキー・スマイル
元気になれるよラッキー・スマイル
♪♪
いつもは耳をつんざくほどにうるさい目覚まし時計のアラーム音が、今朝に限っては可愛らしい歌声に取って代わっていた。
不審に思って、頭までかぶった布団の隙間から声の聞こえる方をこっそり覗くと、娘の『ゆきな』がにこにこ顔で俺の傍らに座っていた。
眠気まなこでその姿を見つめていると、ゆっくりと頭が起動し始める。
真っ黒の画面から鮮やかな青色に変わり、中央に文字が現れる。パソコンでいうなら『パスワード入力』と出るところだが、俺の脳内では別の言葉が表示された。
『今はいったい何時でしょう?』
がばりと布団をめくり上げて飛び起きた。傍らに座ったゆきなは、そんな俺を見てぽかんと口を開けている。
しかし、すぐさま大きな声をあげて笑い出した。
「パパ! 髪の毛ぼさぼさだぁ~」
俺は苦笑いしつつ髪を撫でつけると、ゆきなと同じ目線になるよう屈み込んで訊ねる。
「……ゆきなさん? 今朝は、早起きですねぇ?」
「いいえ、パパさん。ゆきなはいつもどおりに起きました」
「では、目覚まし時計は鳴っておりましたか?」
俺の質問に、ゆきなは大きく縦に頷く。「はい、それでゆきなは目がさめました」
次の瞬間には、俺は部屋から飛び出していた。
「頼むから起こしてくれっ!」
今日は早朝会議がある。
俺は時計を見るのが恐ろしくて、ひとまず朝の支度を超特急で済ましていった。
「もう支度は済んでるのか?」
聞きながら、靴下だけを持って下りるのを忘れたことに気がついた。また二階へ取りに上がる時間はない。仕方なく、昨日脱衣所に脱ぎ捨てたままの靴下を拾い上げて臭いを嗅いだ。
うん、まだいけるだろう。
「ゆきなはもう出られるよ!」
玄関の前に立って両手を上げるゆきな。逆光になってはいたが、彼女が満面の笑みを浮かべているのは手に取るようにわかる。
「あ、ゆきな! 飯食ったのか?」
「サー! イエッサー!!」
「よし、って何食ったんだおまえ」
「食パンやいて食べました! サー!」
最近は俺よりしっかりしてきたな、こいつ。
と感心していた俺だったが、いやいや待て待て。
「歯磨きやったのか? はい、口あーん」
言いながら口を開ける俺に対して、『口を閉じたまま』にっこり笑って頷くゆきな。何ともわかりやすい。
俺はさっさとゆきなを摘み上げて洗面台まで連れて行った。




