表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の細胞は大体30日で入れ替わるのに、考えは30年前に縛られている  作者: あそん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

あなたの服ダサいから私に選ばせて

高校を卒業するちょっと前、どういう流れだったか、おしゃべり大好きな男の先生が「もしこれから交際する相手にコレを言われたら気をつけなさい。」と雑談を始めた。

「たぶんみんな大学に入ったら、キラキラしてオシャレで素敵な人に恋をする。そのうちお付き合いが始まるかもしれない。『お買い物デートしよう』なんて行った先で『コーディネートしてあげる。』そう言われても、絶対全身コーデしてもらっちゃダメだ。きっと自分じゃかっこよすぎて選ばないような服だけど、試着したら似合うものを選んでくれるだろう。君たちは魔法にかけられたシンデレラの気分になるはずだ。だけど魔法じゃないから、服は自分のお金で買わなくちゃならない。そしてデートで行くような場所にあるお店の服はだいたい高い。」

デートの話題だったからか、女子高生だった私達は身を乗り出して聞いていた。後ろの席にいた子が「ちょっと予算オーバーかな、って言えばいいじゃん」とツッコミを入れた。

その言葉待ってましたといった顔をして先生は続ける。

「それが恋をしていると、嫌われたくないから断れないんだよ。で、彼らはこう言うんだ。『リボ払いにすればいいじゃん。自分はいつもそうしているよ。』」

教室にはその恋人ヤベェ奴じゃんという空気が流れ、それまで好奇心を満たす話題に喜んでいた雰囲気から,怖い話題を聞く重い雰囲気に変わっていった。

今はどうだか知らないけれど、30年前の高校生でカードを持っている子なんていなかったし、ましてリボ払いなんて家族でも使うところを見たことがなくて、めちゃくちゃブラック案件に聞こえたのだ。

「で、半年のリボ払いでそのコーディネートを一式買ったとするだろ?家に帰ってその服よく見てみて。洗濯機洗いできないから。学生のうちに自分でクリーニング代を出し続けるのは結構しんどいぞ。」

しかもだと、肝心なのはここだと教師は続けた。

「学生時代の交際は終わる。とにかく簡単にくっついてすぐに別れる。失恋の痛みだけでもつらいのに、まだリボ払いが終わっていない服を見て、買った時の事思い出して、リボ終わってないから捨てられないとか思いながら泣くわけだ。とにかく絶対全身コーデしてもらっちゃダメだ。」

実体験なんだろうなと推測される話に、憐れみさえ感じてその雑談は終わった。たぶんほとんど子はそんな事は起こらないと思っていたはずだ。自分はそんなに馬鹿じゃない。変な人となんて付き合わないし、言われるままに服のコーディネートなんてされないし、そういった事態に陥ってもちゃんと断れると。

ところが、雑談を聞いた数ヶ月後、コーディネートしてあげるシチュエーションは別バージョンで現れた。

4月大学で新しくできたオシャレな女友達と買い物に行って「それ似合うー!こっちのと合わせてもいいじゃん!」などと言われ全身コーデされていた。普段とは雰囲気が変わった自分を見て、楽しい大学生活が始まる予感に震えた。

買っちゃおうかな。

そう思ったとき、先生の雑談を思い出した。財布の中の持ち合わせも思い出すと買えなくもないけれど、買ったらしばらく食費とかは削らないとダメそうだった。自分は馬鹿じゃないはずだ。

「バイト代入ってから考えるね。」

そういうと女友達はあからさまにがっかりした顔をしたけれど、自分はここで買ったら買い物が止まらなくなって自己破産にたどり着く位の気持ちでいた。

テンションが下がった女友達とはその後の会話も弾まず、つまらない感じで解散し、大学でもあっという間に疎遠になった。

新しい友達がいなくなっても泣きはしなかったけれど、しばらく軽い空虚感で大学生活は不安でしかなかった。

選んでくれたシャツだけでも買っていおけばよかったかなとも思ったけれど、おしゃれなあの子より一緒にいて楽しい友達は割とすぐできた。やっぱり全身コーデは買わないでよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ