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No limit my hearts  作者: にしきふぇ
1章 最北の島 ベルムーン
1/2

蒼月

前書きらしい

夢の中の様な曖昧な霧が立ち込める森の中で彼は立っていた。

肌寒くもなく、かといって暖かい訳でもない。

一歩踏み出すと、裸足の足裏に、湿った土と雑草の感触が伝わった。


「...。」


彼は、なぜ自分がここに居るのか分からなかった。気が付いたときには、すでにそこに立っていた。ついさっきまで家にいたはずだった。扉を押し開いたときの感触が、まだ手に残っている。だが、見渡しても家はない。扉さえない。そもそも彼は、この不気味な場所に来た覚えが無かった。


そう彼が認識した瞬間だった。

ウオー――――――ンと、狼の遠吠えが霧の奥から響いた。得体の知れない昆虫の様な鳴き声があちこちで鳴き始め、まるで時間が動き出したかのように独特な空気感が彼を襲った。

彼は再び周囲を見渡した。だが、霧が深く、数m先の道すら見えなかった。


「....どうなってるんだよ。」


彼は不安を抱えながら、一刻も早くこの場所から逃げ出そうと、一歩ずつ前へ進んだ。


_____まずい。


何かの縄張りに踏み込んでしまった。そんな予感は悪い意味で当たった。

一歩踏み出したその瞬間、横から鈍い衝撃がたたきつけられた。

視界が大きく揺れる。

直後、彼の右目の視界を赤く染めた。


「...え」


右肩が、焼けるように熱い。

生暖かい液体が、肩から溢れ出していた。


「...な......なんだ?」


声は震えていた。

何が起きているのか、脳が認識するのを拒んでいた。

腰から力が抜け、地面に座り込んだまま動けない。


「グルルルル」


赤い色が地面に染み込む。

恐怖で体が硬直したまま、彼はただ茫然と目の前を見つめた。

その視線の先には、猛獣がじっと、微動だにせず彼を見据えていた。


「う....うぁあああああ」


今すぐ逃げ出したかった。

だが体は硬直し、視線すら動かせない。

彼はこれが夢だと思った。夢に違いないと考えた。

そう思わなければ、正気じゃいられなかった。


「....。」


極限の集中力で彼は猛獣を見つめていた。もし猛獣が襲い掛かっても彼には抗う術はない。

体格に恵まれたわけでも、猛獣に襲われた時の対処法なんて知るはずもなかった。

知っていてもおびえた彼には何も出来なかっただろう。

だが、幸運な事に猛獣は彼を見つめて動かなかった。


「グルルルル」


「....。」


永遠とも思えるような睨み合いの中、

遂に、猛獣は目線を逸らし霧の中へ消えた。


「....!?」


彼は座り込んだまま泣きそうになっていた。


「た.....助かった...!?」


本当に自分は見逃されたのだろうか。いつもの悪夢なら彼は殺されて終わりだ。

だが、どうやらこの夢は続きがあるらしい。


彼は震える手に力を入れ、ここから逃げ出そうとした。

だが、手は思うように動かず、ぺたんと地面に寝転がってしまう。


「....あれ...?力が入らない...それになんだがとても.....。」


______とても眠い。


心地よさが肩から広がり、ごろりと仰向けになった。

もう力が出ない。ふさふさとした雑草。空を見上げると、彼は目を見開いた。

空一面を覆いつくすような蒼い月。

いつの間に霧が晴れていたのだろうか。

その月は今にも落ちてきそうなほどデカく、そして美しかった。


彼はその美しさを目に焼き付けておきたかった。どうせ夢から醒めると忘れてしまう。

だからこそ......。


「......?」


視界に一人の少女が映った。その少女も月に劣らぬ美しさで、まるで月の使者の様だった。


光に照らされたその絹のような髪は青にも銀にも輝いて見えた。そしてその青、緑、茶色が混じったアースアイの様な瞳は、倒れている血塗れの誰かを映していた。


そして、彼の視界は暗転した。


少女は気を失った少年を少し興味深げな瞳で見つめていた。



後書きらしい

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