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work 1-6

バガァン!


豪快な岩の砕ける音と共に、私は両膝を地面に付いた。

「げほっ!げほっ!」

私は咽込んで石を吐き出した。

「お、戻って来た。」

「なんなのもう…」

見知った世界が戻って来た。シスナ達が私の体を起こし、体に纏わりついた石を払い落としてくれる。


「どうだった?」

リラが笑みをこぼしながら聴く。当然だが、最悪な気分だ。

「言うまでもなく最悪…。」

「はは、だろうね。」

気を取り直し、私は再び隊列に戻った。

シスナ達は私の知らない間に、結構な量のアゾフカ達と戦っていた様だ。


「戦闘能力もない実験人形に遅れを取るなんて…。」

私は無意識のうちに思わずボヤいた。

「…あれ?何で私…」

自分で何を口走ったか、私はきょとんとしてしまう。


あのアゾフカと言う人形は、実験用の人形だ。

人の意識、魂の入れ物として。そして地球以外の極限環境で生きられるための、器の失敗作。


ここで作られていた型番は……失念した。


アゾフカと言う名前は、シスナ達がそう言っていたからだ。知っている時代のものではない。


「なんとなくわかって来たでしょ。」

「ま~そういうこったよ。切り替えてけ。」

シスナとリラは気に病まない様にと言わんばかりに私を励ました。


臨死体験から抜け出す時に感電した様な衝撃を受けた時だ。あの時、目の裏に入って来た景色。

断片的な記憶の欠片。このダンジョンのデータが私の中に入っている。



今後も何度となく同じことをしていたら、きっと私の頭はどうにかなってしまう……。



邪念を振り払う様に、私は頭を振った。

「……もうさっさと終わらせて帰りたい。」

「同感だね。」


私達は歩みを進める。

見覚えのある、犬の様なアゾフカを撃ち砕き、そして進む。


「いたわ。ボスよ。」

シスナが銃を構える。自らの体を抱いた大きな女性の像が広間の中心にいた。

「だ~いぶ変質してんな~。」

「防衛装置が作動するわ。ぶっ壊して無力化する!」


地響きがしてぐらつくと、岩が落ちてくる。明らかに自然現象ではない。狙ってやってきている。


全員が避けて像に向けて銃撃を放った。

ガスガスと音を立てて無数の穴が開く。ひび割れて空いた穴から、光が漏れ出ている。


《援護するね~!》

メリッサのドローンが岩の隙間を縫うように走行して小銃と榴弾を放った。


胴体が砕け、現れたのは、光り輝くコンピューターだ。

ぶら下がった円筒の金属の筒。それを守る様に、カメラとレーザー銃が囲んでいる。


「うわっと!」

私は本能的に側転して避けた。

今までこんな動き、到底出来なかったのに、体が自然に動く。


跳び回るにはヘルメットが重たい。思わず私は外してしまった。


カメラを撃ち壊し、私は単独で先行し、一直線にコンピューターに接近する。

シスナとリラがレーザー銃の根本のケーブルを撃ち、そしてスライディングしながら接近する私めがけ、岩が突き上がる地面を跳躍して飛び越えた。



体に染みついた超人的な動き。私はずっと昔、こんな戦いをしてた気がする。




"砂嵐を纏い、闇を照らす稲光を纏う槍を右手にして"




子供の頃、心地よく眠れた時にだけ見れた夢の様に。そんな御伽噺の様な冒険をしたことがあった気がする。




……気が付けば、私はコンピューターの頂点にあるケーブルを逆手に持った銃剣で切断していた。

3mもある壁に埋まった機械の上に、一度の跳躍で飛び掛かって。



電源が切れたコンピューターは沈黙し、辺りはシンと静まり返る。



「……時刻1725。目標沈黙。無力化に成功。これより回収する。」

シスナが言うと、私達は銃を下した。

周りの異常な鉱石が放つ明るさは消え去り、ただの洞窟になっている。


ジュっと音を立てて、回りが明るくなった。リラが発炎筒を炊いて周囲を照らして、仲間達と小さくハイタッチを交わす。


「ナイスよシトリン。」

「うん。」

「じゃ、コイツを持って帰らないとね。」


御伽噺で聴く大迷宮などよりは、遥かに小さい1層だけの小ダンジョン。

だが、このヒノシタ国ではこういうダンジョンがまだ無数に残っている。



変質したダンジョンコア。数千万年前の太古の昔に作られた、量子コンピューターの成れの果て。



"Made in Japan" ドラム缶の様なコンピューターの外装にはそう記されている。



世界の滅亡を前に作られ、世界中に輸出された死者の意識を保存する禁忌の機械に人々は縋った。

ある人は、自分を保存する為。ある人は、後の世に人類に似た何かを残す為。


現実において不変は存在しえない。


機械も長い時間を経て劣化し正常な動作をしなくなる。

残された意識は欠落し、時に混濁して混ざり合い、そして自動で構築される防衛用の自律機械は有機物を混ぜ合わせた化け物となり果てた。


それがダンジョンの正体だ。




元凶を産んだ、かつて日本と呼ばれた東の果ての島国。




今はもう、太平洋の真ん中ぐらいにある。




Reliquanta -Entanglement-

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