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work 1-2

訳が分からないままの私は沈黙に耐え切れず、一番優しそうな助手席のシディアに話しかけた。


「えっと、シディア。ミランダさん、だっけ?」

「はぁい。」

「ヒノシタ生まれなの?名前は西洋人みたいだけど。」

「うん。所謂どきゅんネームってヤツ。漢字で、『美しい』に『蘭の花』と『蛇』って書いてミランダ。」

「そう、だったんですか。」

「ここじゃ皆が外国人だから、違和感なくなっちゃって。あはは。私は呼び捨てでいいよぉ。どうせすぐ追い抜かされるから。」


けらけらと笑う彼女は、運転するシスナに余り威圧感を感じていない様だ。


「やっぱりミランダも事故とかで?」

「あ、私は顔も髪も素だよ~。」

「どうしてこの部隊に?」

「彼氏に騙されて消費者金融で破産しちゃって。借金のカタに売られて、風俗に出勤したらその日にいきなり店が摘発されてさ。」

「えぇ…?」


いきなり凄い話が飛んで来て、私は面食らった。


「パニックになって外出たら、たまたま目の前で停車してたリラ先輩の車に乗り込んじゃって。なんか今に至るって感じ?」


シスナは舌打ちして会話に割り込む。


「気が付いたらバカが参加してて迷惑してるわ。」

「まぁそういうことで、仲良くしてくれると嬉しいなぁ。」


ミランダのおかげで少し場の空気が和んだ気がする。シスナが続けた。


「レイチェル。事前に仕事の説明をしておくわ。」

「あ、はい。」


「私達がする化け物退治、つまりはダンジョンの破壊ね。」

「ダンジョン…って御伽噺の?」

「そうよ。」


中世ファンタジーにはつきものの御伽噺。科学技術が未発達だった頃の民間伝承や神話。

1800年代の近世ファンタジーなども最近ではよくあるが、半導体や銃器が発達した今の時代では余りにも時代錯誤な言葉だった。


軍隊の鬼軍曹の様な堅物そうなシスナの口から、真面目な口調でそのような言葉が出るとは思ってもみなかった。


「えっと……」

「言いたいことは分かるわ。今が2032年ってこともね。」

「……本当なの?」

「特殊な形で、まだ残ってるのよ。このヒノシタ国の山奥じゃね。言ったでしょ、私達はエクソシストだって。私もカルト教団で洒落っ気のないシスターのコスプレなんかしたくないわ。」

「自分で言っちゃうんだ……」

「忘れてた。リラ、バッグの中、クリアファイルの黄色いやつ。」

「うい。」

隣に座るリラがバッグからペンダントを出して私に手渡した。

「これは…」


縦長の楕円の枠に、刃が上を向いた針の様に細い十字短剣と翼の紋章。黄色い水晶が柄にはめられている。


「教団名は『教会の刃』だけど、名前は出さない方がいいわ。」

「何で?」

「西側の教会とは無関係。私達は過激派のカルト組織だもの。政治とも無縁だけど、違法で銃砲持ってる武装組織には変わりないし。」

「そう…なんだ?」

私の母国の宗教と似ているが、関係ないらしい。それにヒノシタ国はまた異教の多神教だ。シスナ本人もカルトと自覚している辺り、何か事情がありそうだ。

「マザーは何かワケアリみたいだけどね。教えてはくれないわよ。」

「あの人は何を?」

信号待ちで停車し、バックミラーを見たシスナと目が合った。



「それがこれからする仕事。私達の仕事はダンジョンの最奥部まで行って、コアをぶち抜いて持ち帰ることよ。マザーはそれを欲してる。」

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