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第21話 次に向けての鍛錬

 翌日から鍛錬の日々が続いた。

 まずざっくり説明すると、日課としては朝六時頃に起床、四人で柔軟含めたストレッチをして三十分間のランニング、家事をこなしつつ八時に朝食。

 そして、九時頃から俺とアウルで剣技の基礎訓練を十一時頃まで続け、レイルとクリオはそれまで自由時間で本を読んだり何かしらの自己鍛錬をしたりし。

 十二時に昼食を取りつつ休憩をし、十三時からクリオが俺とレイルに体術や魔法指導をみっちり十六時まで。

 それから少し休憩をして、また俺とアウルで剣技の応用訓練を十八時まで。

 十九時に夕食をとり、あとは寝るまで自由時間。と言いたいところだが、二十一時から二十二時までクリオに魔法メインで勉学を教わっている。

 これが一日の日課。

 初めは死ぬほどキツかったが一、二週間もすれば慣れてきて、クリオが家事をしてくれないので俺がレイルの家事を手伝えるほどには余裕がでてきた。

 そしてかれこれ一ヶ月、あまり長続きするほうじゃなかった俺でも、美女四人にケツを叩かれれば長く続くもので、早朝ランニングはもはやウォーミングアップになっていた。

朝食はレイルお手製のサンドウィッチを頬張り、すぐに剣技の訓練。

「それではマスター、今日も始めましょう」

「お願いします!」

 まずは木刀を持ち型の確認から行い素振り、休憩を挟みつつ打ち合いなどの基礎トレーニングをやり、最後は素振りを触れなくなるまでやる。

「がんばれー」

「きっつい!」

「マスター、手が上がってないぞ!」

 アウルの厳しい目があるが、彼女も一緒にやってくれるし、レイルも家事が終わるとベンチに座って応援してくれている。止めるに止めれない状況が俺を頑張らせてくれていた。

 お昼ご飯はレイルが作ってくれた、その時々のパスタメインのメニューを手を震えさせながら平らげ、ソファーで少し寝落ち。

 そして、レイルの回復魔法の練習がてら午後の訓練前に回復魔法をかけてもらい、疲労は回復しないが筋肉痛とかにはならないので何とか頑張れる状況だ。

「ダメじゃダメじゃ、遅い遅い」

「くっそ」

 クリオの体術、魔法指導はめちゃくちゃキツく、MPの消費も半端ないので結構しんどい。

 彼女の指導で、雷魔法の応用でクリオに似たような瞬間移動もどきはできるようになったのだが。まだまだ遅いらしく、必死にやってるのにすぐに追いつかれてしまう。レイルに対する魔法指導も容赦なく、基本はできているが応用がぬるいとビシバシ近接攻撃魔法の指導を受けていた。レイル移動速度は早いもんね、一撃離脱の魔法とか相性が良さそうだ。

 そして、倒れるギリギリまでクリオと訓練したと思うと次は、アウルと実践形式の剣技訓練。

 初めはフラッフラで捌ききれず、振り下ろされた木刀を防げず脳天がかち割るかと思ったが、最近は何とかついていけている。

「防いでばかりでは勝てないぞ、マスター」

「そうは言っても一日動いてるんだよ、へべっ」

 肩に一撃食らってしまった。

 そして、夕食はまたまたレイルの手作り洋食セット、三食レイルが作ってくれているが、アウルとクリオは訓練で忙しいしレイルも納得してくれていることなので誰も文句は言わない。

 夕食が終わればシャワーを浴び、引き続き勉強。

 魔法学校とかあるらしいが、そんな入学してるような場合でもないし異世界に来てまで学校で勉強はしたくない(してるけど)。学校で教わるより魔法のみならず数学、歴史などにも詳しいクリオにマンツーマンで教わった方が効率的だと判断してめちゃくそ眠い中彼女にお勉強を教わっている。

「であるからして……、これはどうなると思うか?」

「…………?」

「お主、賢いのかバカなのかどっちなんじゃ?」

 とたまに呆れられてはいるが、転生前に通っていた学校よりは数倍楽しく勉強させてもらっていると思う。興味が耐えないからあんまり眠くないし、クリオの教え方も面白い。

 そしてなんだかんだともう夜中、目を瞑ったら寝てしまいそだが、ベッドまで我慢。

 ふかふかのオフトゥンで毎日ご快眠だ。

「はぁー」

 とため息をつきながら自分のベッドに横になると、先に彼女のベッドで横になっていたレイルが起き上がり、珍しく俺のベッドの端に座る。

「毎日おつかれさまです」

「いやいや、レイルも家事とかありがとね」

「私はレイジの『相棒』だから当然です、むしろ手伝ってくれてこっちが申し訳ないぐらいですよ」

 俺としては当然の事をしているまで、全部任せるのはなんだか申し訳ないしね、でも嬉しく思ってくれているようならよかった。

「明かり消しますね」

「え、あ、うん」

 自分で消せるのにと思ったが、レイルはふー、とサイドテーブルにあるランタンの灯りを吹き消し、月明かりはあるものの部屋は真っ暗になってしまった。

 するとゴソゴソと彼女が俺の布団に入ってきて、俺の腕に抱きつき足を絡めてきた。

「どうしたの?」

「…………」

 俺の質問には答えてくれないレイル、ここに住み始めて一ヶ月たちこんなことをしてくるのは初めてだ。

 どうするべきなんだ?と無い頭を必死に回して考えていると、月明かりに慣れてきた目で彼女を見てみるとずっとこっちを見つめていて目を離そうとしない。

 これって、もしかしてそういう……。

 と思った頃には彼女は目を瞑り、顎をクイッと上げて少しこちらに顔を近ずける、ええい、ここまで来たらどうにでもなれ。

 さすがの俺も抵抗することなく顔を近ずけると、彼女の腕が俺の首に回されそのままキス。あとは、レイルにスイッチが入ったようで馬乗りになられ、彼女のペースで物事が進んで行ってしまった。


   ●


 翌朝六時、気がついたら寝てしまった様で、ツヤツヤでニコニコのレイルに身体を揺すられ目が覚めた。

「おはようございます」

「…………え、おお、おはよう」

 やってしまった、起き上がるも恥ずかしくて顔を手のひらで覆っていると。彼女は俺の隣に座る。

「嫌でした?」

 ずるい、ずるすぎる、そんな目で見るな。

「そんなわけないじゃん!むしろ今までごめんって言うか……」

 彼女の気持ち、気づかないようにしていたのかもしれない。元々二人でのんびりするはずだった異世界生活、気がつけば二人増えているわけで、レイルには心的にも体的にも寂しい思いをさせてしまっていたようだ。

「俺はレイルの事が大好きだよ」

「私もです」

 ちゅ。

 おはようのチューをするようになるとは夢にも思わなかった。まあでも、初めてがレイルでよかったよ、彼女も初めてだったみたいだし。なんだかぎこちなかったのはいたし方ない。

 そして二人で寝室を出てリビングに向かうと、アウルとクリオは既に起きてストレッチをしていた。

「夜はお楽しみだったようじゃの」

「えっ」

 妙に女の子らしい振る舞いをし少し頬を赤らめた態度で開口一番聞いてくるクリオ、アウルは首を傾げているのでよくわかっていないようだが俺は心臓バクバクだ。

「な、なんのことですか?」

「とぼけるな、我を誰だと思っておる。いくら声を殺しとるとはいえ魔力の流れで何をしとるかは容易にわかる、夜からモンモンして仕方ないわ」

 まじか!クリオの具体的な言葉を聞いて状況を理解したアウルも頬を赤らめるし、俺はどうするのが正解なのか。

「わたしが手伝いましょうか?」

 こらこら自分はやったからってレイルくん、殴られても文句は言えないよ?

「なんで女の手で処理せねばならんのじゃ!目の前に好きな男がおるのに!」

「ふぇ?」

 好きな男?ちょっと待て、勝負に負けたから俺の傍にいるんじゃなかったっけ?

「なっ、まて、言葉のあやじゃ!誤解、でもないが……、我は先に走っておる!!」

 バンッ!と玄関の扉を力任せに開けてあっという間に居なくなってしまった。クリオも案外ちゃんとした女の子ってことなのだろう、なんだか急に告白されて恥ずかしい。

 そして、残されたアウルと何故か目が合う。

「わ、私は別に二番でもいいぞ、マスター。獣人は種族にもよるが一夫多妻は普通だ」

「う、うん、嬉しいよ」

 何言ってんだ俺、レイルに殴られるかと思って身構えたが彼女はフンスと胸を張っている、どうやら自分が一番なら特に文句は無いようだ。良かった、と言っていいのか?

「とりあえず走りに行こうか、クリオも心配だし」

「うん」

「わかった」

 邪念を払うために今日は少し長めに走ることとなった。


   ●


 走り終わり家に帰り、ダイニングテーブルを四人で囲いサンドウィッチを食べていると、またクリオが口を開く。

「そういえばレイジよ」

「なに?」

 なんだか目だけキョロキョロしている、どうしたのかな?また愛の告白?

「ここの者の他に何者かの気配があるのだが、お主は知っておるのか?」

「え、うん、知ってるよ?」

 ガタッ!と椅子から転げ落ちそうになるクリオに、頭の上にクエスチョンマークを浮かべるレイルとアウル。

「なぜ言わんのじゃ!!」

「だって敵意なかったし、アステさん関係の人かなと思ってたんだけど」

「気配が魔物じゃ!普通に考えてギルドの関係者じゃないのはわかるじゃろ!」

「えーーー!!」

 マジで!?思い込みって怖いな、今になって顔面蒼白になっていると。

「お主、我がおらぬととんとダメじゃなぁ。お、居なくなったの」

 はぁ〜と結構デカめのため息を吐かれると、クリオの言う何者かの気配は無くなってしまった。気配も薄いし場所も曖昧だから追えないとの事だったけど。

「でじゃ、レイジは気がついとったからまだ良しとして、レイルとアウルスルアは気づいておったのかな?」

「え、いや、まあ、ねぇ」

「面目ないです」

「ここに座れ、正座じゃ」

 二人はフローリングに正座をさせられ懇々とクリオの説教を食らっていた。レイルが怒られてるなんて珍しい、久々にシュンとしているのが見れて愛おしく感じてしまった。

 そして、警戒は怠らぬようにと厳重に説教を受けた俺たちはとりあえず実害がない限り通常の日常に戻る。

 剣技の訓練で基礎練中には、朝のことを根に持ってというか気にかけてか。

「マスター、腕が下がっているぞ」

 と対面にいた彼女は俺の背後に回り、腕を握られ微調整をされるが、それよりも胸が背中にムニッと当たってそっちの方が気になる。今までも型の確認で距離が近いことはあったが、今日はなんだかめっちゃ近いし当たるところが全て当たっている。

「なんか近くないですか?」

 洗濯物を干してくれているレイルに遠目に指摘されるが。

「剣技において型は重要だ、特にマスターは初心者であるしほんの一ヶ月訓練した程度、次の動きに関わるからな。もう少し右肘を上げろ」

「ううう」

 早口で説明すると、また一際ムニッと胸を押付けてくる。

「ふーーーーーん」

 めちゃ嫌疑な目で見られているが、これは訓練これは訓練と自分に言い聞かせていた。

 そして次は模擬戦、簡単に言えばチャンバラだがそんな子供の遊びのようなものではない。

 装備は木刀と、レザープレートのみ、当たれば普通に痛いしアウルはこれについては手加減をしてくれない。

 カンカン、と木の当たる乾いた音が丘に響く。

 歯を食いしばって彼女の斬撃を防ぐのに必死、たまに突きが来るので体を捻って避けるも。

「ぐふぁっ!」

 そのまま横に振り払われ腹部にダイレクトヒット、全然振りかぶってないのに威力がおかしい。

「甘い甘い、避けるな躱せ」

「ゴホッゴホッ!え、同じ意味じゃ……」

「考えるな感じろ!」

「いったいっ!!」

 バチーンと木刀の平面で蹲っている背中を叩かれる、論理的なのか脳筋的なのか未だにそれは慣れなかった。

 お昼、なんだか今日のアウルは一段とスパルタで身体中至る所に青アザができてしまっていた。

 痛くて泣きそう。

「大丈夫ですかレイジ?」

「痛い……」

 するとレイルは俺の方に手をかざすと魔法陣が出現、ぽわ〜と緑色に光ると青アザがみるみるうちに消えていった。

 回復魔法使えるとすごいな、レイルも初めの方は難儀していたみたいだけれど、この程度の傷なら無詠唱で治療できるようになっていた。ボコボコにされた心の傷は消えないけど。

「痛くない?」

「うん、ありがとう」

 すっかり痛みも引き午後の訓練には支障なさそうかな、ニコッと笑ってお礼を言うと、彼女も笑って頬をキスをしてくれた。

「お主ら、一線越えたからって人前でイチャイチャしすぎじゃ」

 なんだか腕を組み腹を立てているクリオ。

「アウルスルアもじゃ、無駄にひっつきおってから、あとレイジに当たるでない」

「すまない、ついやりすぎてしまった」

 まあまあ、と彼女の機嫌を直そうとするが「フンッ」とそっぽを向かれてしまった。

 少し大胆になってたかな、他の人の目もあるし少しは自重するようにレイルには言っておかないと。

 

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