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第2話 人助け

《レイジさ〜ん、聞いてきました!》

 聞いてきましたと言うのはレイルにこの辺りの情報収集をしてきてもらったのだ、頼られるのは結構好きみたいなので喜んで引き受けてくれた。それと、こんな森の中で誰に何を聞いたのかと言うと。

《森の精霊たちによるとここから南西に二日ほど歩いたところに「ヤーティクル」という街があるそうです。街についてはよく分からないそうですが、半日も森の中を歩けば貿易路に出るそうなのであとは道なりです!》

「知りたいこと全部聞いてきてくれるじゃん、ありがとう」

《お易い御用です!》

 得意げにまたフフンと胸を張ってそうなポヤポヤのままのレイル、お世辞でも何でもなく本当に頼りになりそうだ。

「でも二日かぁ、食料とか簡単に手に入るのかな?」

《食べれる果実がなっている木の場所と野生動物の生息地、小川の場所も聞いてきたので大丈夫です!》

「優秀!!」

《お易い御用です!!》

 結構抜けた精霊かと思っていたけど一言ったら十やってくるタイプの子だった、精霊ガチャはSSR間違いないだろう。これは異世界イージーモードかもしれないな。

「とりあえず急いで行く用事もないし、今日は貿易路手前まで行って野宿かな、途中で宿舎とかも無いでしょ?」

《そうですね、街に行くまで特に集落とか泊まれる場所は無いと聞いています》

 じゃぁ、野宿確定かな。この周りにどの程度のモンスターがいるかは分からないけど、レイルと交代で寝ればいいか。

「それじゃとりあえず歩こうか」

《分かりました》

 言われたようにレイルの案内の元、貿易路に向かって南西の方向に歩き出す。半日って言ってたけど結構歩くな、風魔法で飛んで行ってもいい気がするが一応MPの消費は抑えておきたいし、散策がてら歩いていくことにしよう。途中でモンスターに出会ったら倒しながら進んで、レベルがあるってことは経験値とかの概念もありそうだから街に行くまでに稼いでおきたい。

「ところでさ、モンスターとか倒したら経験値とか入るの?」

 歩きながら色々聞いておこう。

《はい、モンスターのレベルや種類に応じた経験値が入ります。また、モンスターを倒すと確率で素材やアイテムが手に入ります。お金に関してはモンスターからは手に入らないので素材を売るか、盗賊の類の人種を倒すことでしか手に入りません》

 なるほどなるほど、事細かく教えてくれて助かる。

「あとはギルドに登録してクエストをこなす感じかな?」

《そうですね、ギルド関連については詳しくは存じませんが、概ねそうなると思います》

「それじゃあ街に着いたらとりあえず冒険者登録かな」

《そうですね》

 異世界に行ったらやることリストナンバー1、ギルドに登録する。それをしないと話にならないだろうから、街に着いたらこれだけはさっさと済ませておこう。

《あっ》

「ん?」

 レイルが進むのを止める、何事かと前方を見てみると、オオカミっぽい魔物のような動物が四匹こちらに向かって歩いてきていた、なんか禍々しい角も生えてるし魔物の類で間違いないだろう。

《どうしましょう、迂回しますか?》

「いや、色々試したいし倒してみよう」

《え、分かりました》

 魔物がどんな強さなのかも知りたいし、自分の攻撃力も知りたい。バカみたいに強そうな魔物ではないしなんとかなるだろう、最悪風魔法で逃げればいい。

 とりあえず、四匹いるからさっき使った雷の範囲攻撃魔法を試してみよう。

 少し離れたモンスターに向かって手を伸ばし、呪文を唱える。

「えっと、サンダーストーム」

 晴れた空から幾十もの雷が降り注ぎ無慈悲に魔物に命中、意外と生々しく黒焦げになったと思ったら、サラサラと星の光みたいになって消えてしまった。

「え、一撃?」

《え、つよ……》

 あまりに予想外、雑魚中の雑魚だったのかな?ここら辺の魔物ならどうにかなりそうだ。


【レベルが6に上がりました】


 おお、レベルも上がってラッキー。魔物がいたところに近寄ると素材だろうか、額についていた角が二つ転がっていた、確率に関しては50%ぐらあなのかな。

《あのダークウルフの群れを一撃っておかしくないですか?》

「え?そうなの?」

 どうやら俺の攻撃力は思ったりより高いらしい。

《一匹ならまだしも、普通の冒険者なら四匹はやり過ごすのが普通です。レイジさんなら何かあったら逃げれそうなので止めませんでしたが、一撃は聞いてないです》

 慌てているのか俺の周りをクルクル回っているポヤポヤのレイル、そんなにすごいことなのかな?

「まあでも、MPの消費が結構多いから連発はできないかな」

 チラッと確認するとMPは10は減っている、直ぐに回復できるならまだしも今の自分にはなかなかの出費だ。

《こんなの連発されては困ります!》

 レイルはなんか怒っていた。

《あ、角は私が保管しておきますね》

 そういうとオオカミの角はレイルの念力かなにかで空中に持ち上がり、パッと消えて多分謎空間に転送されてしまった、四次元ポケット的ななにかだろう。


 ●


 そしてしばらく歩くと、今度は鹿みたいな魔物一匹に出くわし草むらに隠れる。

《あの魔物は中立なのでこちらからなにかしない限りは何もしてきません、食料として養殖もされていますので食べることもできますよ》

 あー、ジビエ肉か。イノシシとかしか食べたことないけど美味しいのかな?でも、お腹も空いたし狩猟の練習でもしておくか、ずっと食料が手元にあることなんて無いだろうし。

 ついでに『ガンナー』のスキルも試しておこう。

「狩猟してみようか、えっと『ガンナー』のスキルはっと」

 念じると手元が雷魔法発動前の様にバチバチと光ると、映画や雑誌とかでよく見たM4アサルトライフル、これはどっちかと言うとHK416かな?それが空中に出現し浮いていて、困惑しながらもそれを手に取る。

 ずっしりと重い自動小銃、こんな魔法の世界に全然似つかわしくない。

《なんです?それ?》

 さすがのレイルもこれを見ただけでは分からないか。

「多分HK416かな?銃ってやつなんだけど、『ガンナー』のスキルって普通どんな感じなの?」

 416?とポヤポヤの上にクエスチョンマークを浮かべるレイル、無理もない。その後に『ガンナー』について教えてくれる。

《スキル『ガンナー』はボウガン系スキルです、弓系のスキル『アーチャー』と区別するためにあります。基本『ガンナー』の装備はボウガンで、この世界にも銃というものは存在しますが費用対効果が悪いので王族や正規軍位しか使っていませんね》

 ということは銃自体は珍しいものなのだろう、時代的にマケット銃とか火縄銃とかか?だとしたらこの自動小銃はかなりオーバースペックだ。

「費用対効果が悪いって?」

《ボウガンで使用する矢の調達は比較的簡単なのですが、銃における所謂弾丸の調達は特殊でして、錬金術でしか手に入りません。なので、素材の収集も大変ですし錬金術師の数も少なく、錬金料も高額になるので一般には普及していない感じですね》

 へぇー、一応バランス調整はいい方なのかな。装甲のある魔物とかには効かないと思うけど対人戦には圧倒的だしな。

「レイルなんでも知ってるね」

《これでも精霊なので!》

 フフンと胸を張ってるのが目に浮かぶよ。精霊がなんでも知ってるとは思えないけど、彼女が特別情報通なのだろう。

「魔弾とかは撃てないの?」

 ラノベやアニメでよくある魔力を込めて撃つやつだ、それができるなら実弾なんて調達しなくても良さそうな気がするけど。

《できなくもないですが、MPの消費がえげつないのでお勧めしません》

「えげつない?」

《えげつないです》

「そっか」

 えげつないがどれだけなのかは分からないけど、とりあえずおすすめはできないみたいだな、先ずはあの鹿に一発撃ってみて方針を決めよう。

「試してみよう」

《分かりました》

 銃を構えて念じるとマガジンが出現しそれを手に取り装填する、スライドを引いてアイアンサイト越しに鹿を捉えると安全装置を解除して息を整え引き金を1回引いた。

 ズパァーン!!

 銃声が森の中に響き鳥たちは飛び立ち、ポヤポヤのレイルはびっくりしたのか飛び上がると俺の後ろに隠れ、立っていた鹿はドサッと倒れた。

《なんですか……今のは……》

「何って撃っただけだけど?」

《魔力込めました?》

「いや全然」

《ひぃぃぃ、命中精度良すぎませんか!?こんな銃見たことないですし、威力がヤバすぎです!人外です!違法です!》

 何だ何だ?そんなにこの世界ではオーバースペックなのか?だったら積極的に使わない方が良さそうか?いざと言う時に残しておく感じにしておこう。命中精度については『ガンナー』による補正もあると思うしね攻撃力に関しても『マルチスキル』の補正があるのかもしれない。

 まあとりあえず、仕留めた鹿もどきを回収しよう。近寄って見てみると。魔物以外は光になって消えないみたいで、頭は吹き飛んでいてなかなかにグロテスクな状態だったが、人じゃないし気持ち悪くなるほどでは無い。

「仕留めたのはいいんだけどさ、捌き方知らないんだけど……」

 変に捌いて食あたりしても困るしどうしたものか、単に焼いただけでも寄生虫とかいたら危なそうだしなぁ。

《そこは私にお任せ下さい!》

 おっ、レイルが得意げモードに入ったてことは捌けるの?疑いの目で見ていると。

《屠殺ぐらいこの近くの精霊に聞けば分かります!MPを送ってください》

 ああ、そっちね。言われるがままレイルにMPを送ると彼女はキラキラと光りながら擬人化し、俺の見えない精霊と話しているのか、ナイフもどこからか出してどんどん鹿もどきを捌いていく。

 ナイスバディな女性が躊躇いもなくどんどん肉を加工していくのは、なかなかに絵面がおかしい。せめてもう少し服を着て欲しいものだ、胸なんか溢れ出そうだし脇もチラ見えしてるし脚もほぼ出ている。

 手伝えることもなさそうなので、煩悩を払いながらしばらく後ろで見ていると。

「終わりました!」

 返り血を浴びて血まみれなのにニッコニコなレイル、ものの十五分ぐらいかあっという間に鹿もどきは肉片と化し、なにか葉っぱのようなものに小分けで巻かれていた。

「精霊さんが持ってきてくれたんですけど、この葉っぱに巻くと日持ちするらしいです、私のスキル『空間保管』に入れていれば腐ることは無いんですけど、小分けにするにはちょうどいいかなと思いまして」

 へぇ、『空間保管』ってスキルがあるからそんな保管方法があるのか、てっきり魔法とかでどこかへ転送とか異空間に保管してるものだと思っていた。とりあえずこれで食料に困ることは無いかな、普通に二、三週間分ありそうだし。

「へぇ、便利なスキルだね」

「便利なスキルです!」

 フフンと今度はでかい胸を張っている、溢れ出そうだから自重してくれ。

「それより血まみれだけど大丈夫?」

「はい!問題ないです!」

 すると彼女は身軽にクルリとその場で回ってみせると体がキラキラと光り、血糊が瞬く間に消えていった。

「それも魔法?」

「そうですね少々小難しい応用ではありますが、レイジさんなら難しくないと思いますよ」

 なんか色々複雑な魔法を組み合わせて使ってるのだろう。

「へぇ、今度教えてよ」

「もちろんです!」

 さすが頼られるのが好きなだけあって、今日イチ胸を張っていてそのまま反り返ってしまいそうだ。

「それじゃぁ、太陽も丁度真上だし食事にしようか」

「はい!」

 そして俺は木の枝や薪になるようなものを周辺から集めてきて魔法で火をつけ、レイルには擬人化したままお肉を細かく切り分けて串刺しにしてもらう。

 こうしていると異世界も悪くないな、レイルもちょっと抜けてるけど頼りになるし、独りじゃないだけで全然楽しい。

「……なんですか?」

「え?ああ、いや、なんでもないよ」

 いつの間にかレイルを見つめてしまっていたようで、慌てて目を逸らすと彼女はフフフと笑っていた。めっちゃ美人だから惚れてしまいそうだけど相手は精霊だ、煩悩よ立ち去れと頭を左右にブンブンと降った。


   ●


 食事も済ましあと片付けもして歩き出し、しばらくするとポヤポヤに戻ったレイルがなにか異変を察知した。

《近くに人の気配がします、あとダークウルフの気配も》

 おお、異世界に行ったらやることリストナンバー2、行商人を助ける。それができそうな感じだ!あわよくば街まで乗せてってくれるかもしれない。

「襲われてる感じ?」

《はい、恐らく》

 なら助けに行かない手は無いな。

「行こう」

《わかりました!》

 レイル案内の元、魔物に襲われているであろう人達の気配がする方向に走ると。恐らく道に迷ってしまったのだろう、車輪が壊れた馬車の周りに三人の人影があり、ダークウルフ六匹がそれを囲んでいた。

 三人のうち一人は三十代ぐらいの体格のいい男でソルジャーだろう剣を構えていた。二人目は二十代後半ぐらいの女性で短剣を二つ構えた双剣使い。三人目は帽子を真深に被っているのでよく分からないが多分女性で魔法使いだろう、杖を持って詠唱したと思うと魔法陣が出来上がりバリアみたいな薄透明な壁が出来上がった。見た感じ防御魔法かな?ダークウルフは様子見と言わんばかりにその周りをぐるぐると回っている。

「ジリ貧かな」

《そうですね見たところレベルも20そこそこです、特別なスキルがない限り厳しいかと思います》

 このまま魔力が尽きるのを魔物は待つつもりだろう、そこに颯爽と現れる俺、命の恩人ということで彼らに恩を売っおくと後々使えそうだ。

「サンダーストームで一気にやっちゃう?」

 実際問題それが早いし楽だ、しかし、レイルは違う提案をする。

《いえ、突然魔物が雷に打たれてその後にレイジさんが現れても信ぴょう性に欠けます。ここは風魔法で颯爽と登場し、炎と雷の単発魔法で各個撃破した方が見栄えもいいですし、命の恩人感が出ます》

「えぇ、レイル意外とずる賢いね」

《ありがとうございます! 》

 いや、褒めてない。

 でも確かに、レイルの言うことは至極当然なように感じる、けど各個撃破できる?さっきは普通に倒したけどあの魔物結構強いんでしょ?

「大丈夫かな?」

 少し不安がっていると。

《レイジさんなら大丈夫です!魔法の詠唱も短いですし!》

 なんだその無条件な信頼は。あ、あれか?『信頼』ってスキルの効果なのか?いやー、こんな無責任に信頼されても困るぞ?

「まあ、成るように成るか。MPもギリギリ足りるだろうし」

《はい!》

 俺は風魔法を身に纏い、ダークウルフに囲まれている冒険者の前に、バチバチと雷を纏ったりして無駄に派手に登場した。

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