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第17話 従順なドラゴン娘

 彼女の斬撃は目の前で止まり、彼女の剣を握った手は震えていたが、そのふりかざした剣は床から生えた氷柱で氷漬けにされていた。

「我が主を傷つけることは許さん」

 主、あるじ??どういうこと??てかその剣はあなたに向けられたものですけど?

「どういうことだマスター!フロストヴェインってあの氷結竜のことだ!主ってなんだ!」

 その怒りは痛いほどわかる、だが待ってくれ俺も状況を理解していない。

「ちょっと待ってくれ、主って、フロストヴェインってあの遺跡にいた竜のことか」

 アウルは殺気立ってるし、レイルは臨戦態勢だし俺が落ち着かないと、先ずは今の状況を理解するんだ。

「察しが悪い、我は氷結竜フロストヴェイン、竜族の掟により我を倒したものが我の主になる、それを実行しているまで」

 マジかよ、倒したけど死んではなかったのか、え、だから竜族を倒すと倒した人の配下になるってこと?そんなのどうなの?いや、そもそも竜族なんて簡単に倒せないだろう、だからそんな無茶苦茶な掟が存在するのか?

 いわば、人間ごときに負ける竜族への戒め的な?言い過ぎか。

「しかし、あのフロストヴェインさん、人間を恨んでいるんじゃ……」

 安寧の地を荒らされてご立腹だったはず、それなのにそんな簡単に人間の下についてもいいのだろうか。

「人間に負けた竜族など人間云々以前に存在価値はない、しかし、簡単に死ねぬ存在がゆえ、この力を主に生涯預ける所存だ」

 言い過ぎじゃなかったみたい、簡単に死ねないということはレイルのように一部精神生命体だったりするのかな、どういう訳か受肉か具現化して俺の力になりたいということでいいのかな?

「ところでそこの狐獣人、剣を仕舞ってくれぬか?」

 目は血走り剣を持った手が震えているアウル、落ち着かせるために彼女の手を握り、剣を鞘に仕舞わせる。しかし、彼女の鼻息は荒く、今にももう一度剣を抜きそうだ。

「こんなやつの言うことを信じてはダメだ!そいつは何人も獣人を、人間を殺している!」

 クソ、アウルの気持ちは十二分にわかるが、今のフロストヴェインには殺意が全くない。だから一戦交えるのはダメだ今じゃない、どうにか穏便に……。

 と、一瞬の間に色々考えるが考えがまとまらない、難しい顔をしているとフロストヴェインの方が痺れを切らし、その冷たい手を俺の肩に置くと、俺を少し押しのける。

「わかった、我を斬るがいい、気が済むまでな。本当にそれで気が晴れると言うなら存分に」

 手を広げ無防備な格好になるフロストヴェイン、簡単に死ねないとは言っていたが、そんなこと、アウルにさせたくないしさせる訳にはいかない。丸め込みたいがどうすれば。

 しかし、考えているうちにアウルは再び剣に手をやるがその手は震えている。

「さあ、我を切れ」

「ダメだアウル!」

「ダメじゃない!そいつは私の父を殺した、みんなを殺した!憎しみで憎しみは消えないかもしれないがそれは綺麗事、復讐することに意義がある!」

 アウルの言うことは全面的に正しい、だから声を強くして止めることが出来ない。

「お願いだ、やめてくれ」

 彼女の目から涙が溢れだし、脚がガクガクと震えている。

「どうした?」

「フロストヴェインは黙ってろ!」

 俺が叫ぶと目を見開いてびっくりするフロストヴェイン、それからは一言も発っさず俺たちを見守っるように少し離れて見てくれていた。

「落ち着いて、彼女はもう敵じゃない、敵じゃないやつを殺しても意味は無い、それに死ぬかも分からない」

 ゆっくり彼女を抱きしめると彼女は剣から手を離し、力無く座り込んでわんわんと泣き始めてしまった。

 俺は不甲斐なくただギュッとアウルを抱きしめることしか出来なかった。

 しばらく泣き続けると彼女は眠ってしまった、見かねたフロストヴェインが睡眠魔法をかけてくれたみたいだけれど、あまりにも自然だったので多分本人は気がついていないと思う。

 そして、アウルはレイルに見てもらうことにして、客間で紅茶を啜りながらフロストヴェインと詳しく話をすることになった。

「ここに馳せ参じた理由は先に述べた通り、この掟を本当に守ることが起こるとはこの五百年思いもしなかったがな」

 ということは最低でも五百歳?見た目は十代の少女だがドラゴン的に若いのかどうなのかはさっぱり分からない。

「しかし、あの魔法はなんだ?我の魔法障壁をいとも容易く破壊しおって、実に興味深い」

 机に頬杖して俺の顔を覗き込むフロストヴェイン、あまりにもその美しい水色の瞳とドレスのに空いた隙間から見える谷間に照れてしまって視線を逸らすと。

「所詮は主も男よの」

 と鼻で笑われてしまった、非常に心外で恥ずかしい。

「我は魔法創造が趣味でな、それでもあの威力の魔法には遭遇したことがない。それに、魔法耐性がある我を一撃じゃ、ゾクゾクしたぞ」

 魔法創造が趣味?何それ怖い。とは言うものの俺も似たようなことしてるし、そう言う俺も怖い気がしてきた。しかし、その身なりてゾクゾクしたとかあまり言わないで欲しい、ドM、では無いよな?

「それに強くて仲間思い、我の主にふさわしい」

 言葉遣いに似合わずニコニコと可愛らしいフロストヴェイン、その笑顔に惑わされそうになるが、アウルの言葉が頭をよぎる。

「なに、今すぐ我を信用しろとは言わん、信頼は築きあげるものだからの、その辺は理解しておる」

「助かります」

 俺はとりあえずはいいけどアウルが拒絶反応示してるしね、レイルも警戒してるし、仲良くなるには時間がかかりそうだ。

「我が主たる者、そのようなかしこまった言葉で話さんで良い、身なりの通り年下の少女に話すようにしてくれて良いのだぞ?」

 ウィンクされた、だから言葉遣いと行動が合ってないんだって。

「いやいや、氷結竜を少女だなんて恐れ多い」

 いきなり五百歳上の人にタメ口で話せって言われても気が引ける、誤魔化そうと思ったが。

「一応、主の好みの女性を模して体を創造したのじゃが、もっとおっぱいは大きい方が良かったかの?」

 自分の推定Dカップの胸をモミモミしだす氷結竜、てか、俺の好みってどういうこと!?いつの間にか頭を覗いたの?確かに銀髪の娘とかアニメとかゲームとかで見てると好きになりがちだけれど、かと言ってレイルのようなタイプも大好きだ。その前に性癖展覧会みたいになって死にたくなってきた。

「もっと大きい方がいいか?自由自在じゃぞ?ああ、小さい方がよかったかのぉ、それとも年上のお姉さんか?」

 その普通に大きい方の胸を揉みながら見せつけてくる竜族、掟はどうなってるんだよ掟はよ、なんて言う冗談は言えるようになってきた。

「そのままでいいよ」

 半分呆れて言うと。

「そうか!?自信作じゃったんじゃよ」

 安心したようにふー、と胸を撫で下ろすフロストヴェイン、ニコニコしていて外見だけは妹のようで凄く可愛らしい。言葉遣いに関しては古臭いからはさなんか変な感じがするけれども。

「その、フロストヴェインももっと砕けた感じて話せないの?」

「なに、お主、この竜族に代々伝わる高貴な言語を何だと思っておる」

 おっと地雷を踏みぬいてしまったか、意外とこだわりがあるようで謝ろうとすると。

「まあ良い、主が望むなら我も少しは努力するとしよう」

 あ、いいんだ。声のトーンも少し上がり余計妹みが増してきた。ギューッとしてみたいが冷気が滲み出ている、夏なら気持ちよさそうだなー、もしかしたら冷房いらずかも。

「それで、我はここにいていいのか?」

 アウルの許可が必要かもしれないけれど。

「と言っても行く宛がないでしょ?」

「まあな、もうあそこの遺跡にはおれん」

それなら追い出す理由は俺には無い、今までの悪行を俺たちのパーティーに入ることによって善行を行い身をもって償って行くのもありだ。

「いていいよ」

「そうか!?助かったのじゃ」

 再び胸を撫で下ろすフロストヴェイン、本当に行く宛てがなかったんだな。また可愛らしくニコニコと笑う彼女、実に見ていて可愛らしいく、またチョロインのレイルとは違う可愛さがあった。

「これからよろしく頼むぞ主よ」

「俺のことはレイジでいいよ、フロストヴェイン」

「それなら我のこともクリオと呼ぶがいい」

 えっ、クリオってクリオネクス・フロストヴェインの下の名前じゃない?まあ、俺も下の名前だしそんなもんかと自分で自分に言い聞かせていると、彼女は俺の耳元に顔を近づけてきて一言。

「特別じゃぞ」

 今にも凍ってしまいそうな吐息が耳に当たり震えてしまうと、彼女はフフフと笑っていた。なんだ?ドラゴンの格好した小悪魔かな?とても何人も殺した竜族とは思えなかった。


   ●


 それから少ししてアウルが目覚め、少しは落ち着いたようで殺気立ってクリオを睨みつけることはなかった。

「えっと、二人には悪いとは思っているんだけれど、彼女はパーティーに入ることになった。アウル、それでもいい?」

「マスターの意向であるならば」

 ゆっくりと頷くアウル、決して納得はしていないとは思うが、拒否されたところで困ってしまう、許してくれただけでもありがたい。

「もし万が一彼女が裏切ることがあれば俺が責任を持つ…………」

「ちょっと待て、我がレイジを裏切ると?我より強い主を裏切ろうとどうしてそう思うか」

 おっとご立腹してしまった、保険をとるつもりで言ったんだけどクリオには逆効果だったみたいだ。

「そんなに心配なら我と契約を結ぶがいい」

 契約?と首を傾げていると、彼女は手のひらに魔法陣を浮かび上がらせる。攻撃魔法とはなんか違う幾何学模様が美しい綺麗な魔法陣だ。

「レイジはこの魔法陣を真似る事など容易いであろう、それを我の背中に焼き付けるのだ、そうすると契約者に逆らったり嘘をついたりすることは出来ん、いわゆる主従契約魔法じゃ。もともとその気は無いがの」

 焼き付けるって言うのには少し抵抗があったが、これでみんなが安心できるならやってみる価値はあるか、彼女の手のひらに浮かぶ魔法陣をよく観察して真似ると、ものの数分で多分できたと思う。

「一発で完成させるか……、ますますレイジには興味をそそられる」

 どこかミスしてないか不安だが攻撃魔法じゃないし、間違えていたら成功しないから大丈夫かな。

 するとそそくさとドレスを脱ぎ始めるクリオ。

「ちょちょちょ!」

「なんじゃ?服の上からだと効果は無いぞ?」

 慌ててタオルでクリオの胸を隠すレイル、グッジョブ、普段人間の姿で過ごしてないだろうからこんな突拍子もないことしちゃうのだろうな。

「さっさと契約してくれ」

 そんな感じ?まあいいや、言われるがまま魔法陣を彼女の背中にかざすと、魔法陣はぐるぐると回り始め、俺の手を離れ彼女の背中に張り付いてゆく。

「んっ」

「大丈夫?」

「話しかけるな気が散るぞ」

ちょっと痛そうだったから、慌てて視線を魔法陣に戻すとジリジリと背中に焼き付き、見えるか見えないか程度の跡が残りそこに定着した。なんか、思ったより呆気なかったな。

「これで契約完了じゃ!ほれ、なんでも命令してみろ」

「急にそんなこと言われても」

 困ったなーと、頭を掻いていると、痺れを切らしたクリオが口走る。

「ええい、主も男じゃろ!あんなことやこんなことがしたいでも構わんのじゃぞ!」

「へ!?ぐふぉ!!」

 理解する前にレイルにみぞおち一閃、息ができないままふと思いついた命令を一言試してみる。

「クリオ、そ、掃除して」

「は?」

 すると体が勝手に動き出すクリオ、なんだかめっちゃ抵抗しているみたいで顔が悶えているが大丈夫かな?

「掃除は、掃除は嫌じゃーーー!!」

 と叫びながらテーブルを雑巾で丁寧に拭き、ベッドのシーツを張り直したりしてくれていた。

 何故か泣きながら。


 数十分後。

「我は掃除は嫌いじゃ、お願いだから掃除は頼まないで欲しいのじゃ、一生の屈辱じゃ…………」

 なんだか可哀想なことしちゃったな、しかし、イヤイヤ掃除をしていると言うかさせられているクリオを見て「いい気味」とアウルは笑っていたので、少しは仲介に貢献できたと思いたい。

「エッチなことは何でもするから」

 お前さっきからそれしか言わねーな。

「大丈夫!」

「我のこのナイスバディに人間は発情せんのか!?」

「そういう問題じゃない!」

「レディが自らそう言っておるのに男気ないとは思わ、みっ!」

 うるさすぎてついつい手が出てしまい、脳天にげんこつをお見舞いしてしまった。

「痛いのじゃ、暴力反対じゃ、DVじゃ……」

 どこでそんな言葉覚えたんだよ、こいつ下手するとレイルよりうるさいぞ?今ならまだ間に合、わないか、人間の生活というか人間とのコミュニケーションに慣れてないだけ、そう思うことにしよう。

「まあしかし、これで逆らえないのは証明できたじゃろ!」

 ふんすとレイルのようにたわわな胸を張るクリオ、この調子だと少しは早く二人と打ち解けてくれると嬉しいな。

 

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