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第15話 襲撃

 本部に着くとまさにてんやわんや、色んな人が色んなところに走って右往左往としていた。

「状況は」

 アウルスルアさんが村長に駆け寄る。 

「ゴブリンの大群が麓から登ってきている、足場が悪いから進軍は遅めだが、もう間もなく弓矢の射程圏内だ」

 簡単な地図でおおよそのゴブリンの位置を教えてもらうが、ほぼ包囲されている状態。これでは逃げることも援軍を呼ぶことも出来ないな。

「とにかくゴブリンの数を減らせ、遠距離攻撃ができるものは杭壁に貼り付け!」

 遠距離攻撃は俺の得意分野だ。

「レイジくんには北をお願いする」

「わかりました!」

 いっちょ派手にやってくるか、本部から駆け出て北の杭でできた防護壁に向かう。にしてもレイルはどこに行ったんだ?

《レイル!早く帰ってこいよ、どこにいるの》

《…………》

 念話を試みるも返事は無い、そんな遠くに行っちゃったのか?たくっ、帰ってきたら説教だな。

 そして、まもなく北の防護壁に到着、杭の隙間から下を除き混むとゴキブリみたいな軍団がガサガサと崖を登って来ていた。夜ということもあって非常に気持ち悪い。

 とにかくやるしかない、俺のモットーは初めからクライマックスだ!

 俺はやる気を出すためにバチバチと無駄に雷のエフェクトを纏い、周りの獣人たちが何だ何だとこっちを見ていることにちょっといい気になりながら、範囲攻撃魔法を放つ

天雷獄陣フルグライ・ヴァルケン!!」

 バババババーーン!!


『レベルが25に上がりました』

 

 閃光と共に暗闇から突如降り注ぐ幾千もの雷、ゴブリンの鈍い悲鳴のような唸り声が聞こえるがまるで減った気がしないし、魔力探知をしてもあまり減っていないのがわかる。

 こりゃ消耗戦か?

「もう一発!天雷獄陣フルグライ・ヴァルケン!!」

 再び雷が地上に降り注ぐ。


『レベルが30に上がりました』


   ※


 ここは東の防護壁、まだゴブリンとは距離があるので近接専門の私にはまだ何も出来ない。

 歯がゆく思っていると、北の空が突然眩く光り、轟音が辺りに轟く。それが間髪入れずに二回。

「あれは、レイジの魔法か?」

 あまりの大規模魔法攻撃にルイは何故か冷や汗をかいている。

「さすがAランクってとこじゃない?」

 もしあんな敵がでてきたら私たちなんて瞬殺もいいところ、指をパチンと鳴らしただけで死んでる、仲間でよかった。あんな(うぶ)で可愛い見た目してるのに魔法のことに関したら次元が違う、だからもっとイチャつきたいのにちょっと近寄り難いんだよね、あのレイルって女もなんか目が怖いし。

「あいつに手柄全部もっていかれそうだ、前に出るか?」

「魔法の攻撃範囲内ならいいんじゃない?」

 防護壁に来るのを待っていたところであの量だ、すぐに突破されてしまうだろうし、少し前に出てなるべく量を減らした方が良さそうだ。

「よし、前に出る、ヘイトは任せたぞ」

「わかった」

 私が先に防護壁を飛び越え、ゴブリンに向かって突進、その後ろにルイがピッタリと着いてきて、ゴブリンの群れに切り込みを図った。


   ※


 東の防護壁

「なにあれ、どんどん威力増してない?」

「…………異次元」

 突然空が光ったと思ったらものすごい雷轟、あの威力はレイジくんの魔法だろう。リグルアも魔法使いで彼女は補助魔法特化、レイジくんは攻撃魔法が得意みたいで、能力は人それぞれなのだけれど、威力の桁が違う。同じ魔法使いとしてリグルアはちょっと自信無くしそうとか言ってたな。

「まあ、ほら彼は転生者だしね」

「…………それはそれ、それはこれ」

 負けん気があっていいのかな?魔法使いとしてリグルアはレイジくんのこと意識してるみたいだし、これから切磋琢磨して二人とも強くなって欲しい気もするし、そのまま一緒に居てもいいのだろうか、邪魔じゃないかな?と不安になることもある。ほら、レイジくん優しいから絶対嫌とか言わなさそうだし。

 そんなことよりも、ゴブリンの群れが迫ってきている、こっちは数が僅かに少ないみたいだけれど、いくらリグルアも氷魔法は使えると言えども連発は難しいと思うし、どうにかなるかな?どうにかするしかないか、危ない時はレイジくんを頼ろう。

「補助魔法を」

「…………わかってる」

 彼女が私に魔法の杖をかざすとパアァと体が僅かに光る、これで魔法耐性と物理耐性の防御アップのバフがついた。

「じゃあ、援護よろしくね」

「…………うん」

 私は防護壁を超え、双剣を鞘から抜き出しゴブリンに向かって駆ける。リグルアも援護射撃の氷魔法を撃ち込んでくれているし暫くは一人でも持つだろう、村の人も弓で応戦してくれている、あれには当たらないようにしないとな。

「雑魚はいくら集まっても雑魚なのよ!」

 私は自分に言い聞かせるように鼓舞し、目の前の薄汚いゴブリンの首を次々と跳ねていった。


   ※


 魔力探知でわかる、みんな戦っている。それぞれの距離はある程度離れているがどうにかなる距離だ、まだ苦戦はしていないようだがこっちのゴブリンの量がえげつない。北側から突破する気だろう。

 しかし、ゴブリンって知性は低いイメージだが、ゴブリンロードみたいな統率している奴がいるのか?この突撃、無謀に見えて統率はある程度とれているようにみえる。

「このままだとジリ貧だな……」

 どうする?ゴブリンの巣にカチ込むか?やるなら魔力切れになる前にやった方がいいと思うが、レイルがいないのがな……。

「たく、どこいったんだよ、もうっ」

 探しにも行けないし不安だけが募る。

炎獄爆陣(ヘルフレイムアレイ)

 こうしている間にも新たな魔法を試す、雷だけの範囲攻撃はきつくなってきたのでこうなったら森ごと燃やしてしまおうと考え、炎の範囲攻撃に変更。正面に手をかざすと赤色の魔法陣が、大小三つ現れてそこから火炎放射のように炎を放射し前面を火の海にしてみせる。一応、風魔法を補助で使っているので、ここに炎が登ってくることはないし、余計な森を燃やすこともない。

 しかし、それでも突撃を止めないゴブリンの群れ、何匹いるんだ、なんだか怖くなってきた。

「あまり強大な魔法を使われては、魔力は大丈夫ですか?」

 隣にいた獣人のお兄さんに心配されたが、大丈夫だ、まだMPの残量はあるし。

「回復薬があるので大丈夫……」

 じゃなかった、全部レイルが持っている。

 くっそ、探しに行くか?ある程度減らしてからの方が?でも総数が分からないし、魔力も持たないかもしれない。

 あーもう!俺には判断できねぇよっ!

 アウルスルアさんに意見を仰ごうと、当たりを見回したその時。

《…………けて》

 一瞬念話でレイルの声が聞こえた気がした。

 少し耳を澄ますと。

《助けて……》

 そこからはもう何も考えていない、気がつけば俺は壁を雷を纏い飛び越え、声がした方向を感覚で探し当てると、辺りを手当たり次第に火の海にしながら突き進む。

 雷の速さで移動すること数秒、山の麓に洞穴を発見した。かなり大きい、大蛇のモンスターとかドラゴンとか出てきそうな洞穴というか洞窟だ、そこからゴブリンが絶え間なく出てきている。

「ここか」

 確認するまでもない、あのチョロインめ勝手に入って行きやがったな、いくら物理無効って言っても油断しすぎなんだよ。

 俺は宙に浮き右手のひらを洞窟に向かってかざす。

雷炎爆裂砲(ブレイズカノン)

 洞窟は火攻めに限る、雷と火炎の放射であるブレイズカノンを限界まで放射しある程度のゴブリンは消し炭になっただろう、外にいるゴブリンは相手にする価値もなく天雷獄陣フルグライ・ヴァルケンで雷に打たれてもらった、これで村に行くゴブリンの数も少しは減ったに違いない。

 そして中に入る前に風を中に送り続ける魔法陣を設置し、酸欠で死ぬようなことは無いように保険をかけ、再び雷を纏って中に何がいるかは知らないが、レイルの気配がする以上この中に飛び込んだ。

 中に入り少し奥に行くと少し厳重な石製の扉があったが、そのまま突き進んで破壊すると、青黒く薄く光る中世の遺跡のような空間が開け、地面に降りて辺りを見回す。

「遺跡?ダンジョン?」

 どこか神秘的な空間に気圧されていると、天井から何かが降りてくるような気配を感じ、バッと見上げると翼を大きく広げた巨大で白いドラゴンが出現。冷気をまとったアイスドラゴンとでも言うのだろうか、なんだか美しく思えた。

 ドーーーンッ!と勢いそのままにドラゴンは地面に着陸すると、砂埃の向こうでもわかる、ドラゴンと目が合ってしまった。

 刹那。

 ドラゴンの口が開いたと思うと、ほぼ光速のビームが発射され間一髪避けると、俺がいた場所は氷漬けになっていた。冷凍ビーム的な魔法かブレスか、初速が早すぎる厄介だな。

《レイル!どこにいる、返事をしろ!》

《…………レイジ!?ここ!ここにいる!閉じ込められてるの!》

 ここってどこだよ、とドラゴンを視界から外さないように探すとドラゴンの奥に檻のようなものを見つけ、その中で精霊体の姿のレイルが柵にしがみついていた。

 生きてはいる、落ち着け俺。でもなんであんなことに。

「我が根城に人間がなんの用か」

 やっぱりこのドラゴン喋るか、ものすごい威圧感で推し潰れそうだがまだ大丈夫。下手に出て舐められても困る、こっちも強気に出る。

「こっちのセリフだ、ゴブリンを召喚して村を襲う理由を聞かせてもらってもいいか?」

 この洞窟にゴブリンが生活していたような跡は無かった、俺の魔法で消し飛んだのかもしれなかったが、あまりにも何も無さすぎた。ということは、こいつが召喚している事に賭けた。

「ほざけ、人間から仕掛けてきたのだ、我の安寧後を脅かしかしたのだ」

 なるほどね、人口が増えると領地を拡大したがる人間、元々この地に住んでいた魔族との領有権争いってところか。これには魔王様は介入しないんだな、魔族はよく分からん。

「事情はわかった、村長に交渉を頼んでみるから先ずはその後ろの精霊を返してもらいたい」

 先ずは平和的解決を試みる、ゴブリンは話しても分からないが、このドラゴンは話せばわかりそうな気がしたから。

「人間は滅びる運命なのだ、貴様はここで死ね」

「ーーっ!」

 ダメか、またあの冷凍ビームが一瞬で放たれ今度は頬を掠めてしまい、一瞬で右頬が凍ってしまう。

「つつつ、マジかよ」

 頬を触るとカチンコチンで冷たい、スキル『自然治癒』のおかげでそんなに痛くは無いが、直撃を食らうとさすがにやばい、直ぐにケリをつけないと。

「ほう、二度も避けるか」

 一般人なら間違いなく即死だよ。

雷炎爆裂砲(ブレイズカノン)!」

 隙を見て放つが容易く魔法障壁によって弾かれてしまい、遺跡の壁に激突する。

「なかなかの威力だが、我には効かんぞ」

 でしょうね、見たらわかる。だけど敵に向かって話しかけるのは負けフラグだよ。

「それに詰めが甘い、魔力は相当のようだが戦いには不慣れだな」

「んなっ!」

 簡単にはいかないか、足元に突然白く光る魔法陣が出現し、瞬く間に足首まで凍って身動きが取れなくなってしまう。

「くっそ、マジか」

 バランスを崩し尻もちを着いてしまう、焦って氷を叩いて抜け出そうとするもビクともしない、これはかなりヤバい。火魔法で溶けるものなのか?溶けたとしても時間がかかるしそんな悠長な時間はない、どうするどうする。

「レイジ!!」

 檻の中でレイルが叫んでいる。

 そうだこの手が。

 レイルに魔力を送ると、それで俺がやって欲しいことを理解した彼女はボンッ!と擬人化、パワー百倍になった彼女は躊躇うことなく魔法を発動する。

「地脈の怒り、湧き立て! 泥濘の抱擁、万物を飲み込め!

水地絡沼(テルスイ・ヴァイパー)!!」

「なにっ」

 レイルの魔法により足元が沼となり、レイルのことをなんとも思っていなかったドラゴンは一瞬足を取られる。この隙が最後の隙だ。

 俺は右手にほぼ全ての魔力を集中させ、渾身の魔法をお見舞いする。

「|炎雷霆衝撃砲《ヴルカヌス・テルミナス

》!!」

 黄色、赤色、空色の魔法陣が出現し、空間に存在する粒子のような光が中央に刹那集約した次の瞬間。

 ドゴーーン!

 衝撃波が辺りを揺らし、檻の中にいるレイルはその爆風で尻もちをつき。刹那、直径三メートル程の火炎を稲妻が覆った放射がバチバチと辺りを帯電させながらドラゴンを襲い、幾重にも重なった魔法障壁が粉々に砕ける音が洞窟内に響いた。

 これが効かなかったらお手上げ、屋内で使うもんじゃないな、煙が落ち着くのに少しかかったが、煙が晴れるとドラゴンは地面に伏しており、ピクリとも動かない。

「やったか?」

 慌てて手を塞ぐも時すでに遅し、全部言い切ってしまったがドラゴンは起きる気配もなく、しばらく唖然としていると、光の粒子となり瞬く間に消えていってしまった。


『レベルが50に上がりました』

  

「え?」

 ドラゴンが消えたと同時に、両足と頬の氷は消え去り、レイルを閉じ込めていた檻は消え、囚われていた彼女はこっちに文字通り飛んできている。

「怖かったですよーーーーぅ」

「んもっ!」

 飛びつき方が下手くそで大きくてたわわな胸が顔面に押し付けられている、普通に息ができない。

「レイジなら来てくれると思ってましたーーーー」

 わんわんと泣き叫ぶレイル、ちょっと怒る気も引けてきたがここでガツンと言わないと、二回目をやりかねない。

「どれだけ心配したと思ってるんだよ!」

 ぽっ!と胸から顔を出しなるべく語彙を強めて叱るが。

「ごめんなざいぃぃぃ」

 辺り一面水浸しになるぐらい泣かれたら、これ以上怒る気もなくしてしまう。

「たくっ、無事でよかったよ」

「ずみまぜんんんんん」

 よしよしと頭を撫でると、彼女は一際大きな声で泣いてしまった。

 そして、ちょっと落ち着いたところでなんで捕まっていたのか説明してもらうと。

「精霊の中にも人間をよく思ってない種族がいるみたいで、嵌められました……」

 それは想定外、精霊はレイルに対しては常にフレンドリーなものだと勝手に思い込んでしまっていた。次から気をつけないと、ホント次があってよかった。

「次から俺も気をつけるよ、今回は最終的にはレイルに助けて貰ったし、貸し借りなしね」

「ありがとうございますぅぅぅ」

 また泣いちゃった。

「よし、村に帰ろう、あらかた片付けたとはいえみんなが心配だ」

「はい!回復薬どうぞ!」

「うん、ありがとう」

 切り替え早くニコニコの顔でバシャ!と回復薬をぶっかけられMPが半分ぐらい回復する、少々敵が残っていてもまだ戦える。しかし、回復薬をぶっかけられるのもなかなか変な気がする。

「それって飲めないの?」

「飲めますよ?」

「へ?」

「飲んでもかけても効果は変わらないんで、ぶっかけた方が早いかと」

 たまに脳筋なんだよなー、なんなんだろこの性格。

「次から飲ませて」

「え、あ、わかりました!」

 ふぅ、でも、とか言われなくてよかった。

「よし改めて、村に帰るよ」

「はい!」

 俺は彼女の手を握り、雷をバチバチと纏うと空に飛び上がり山頂のむ村へとむかった。

 

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