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第14話 ミトラルテイル集落

 首都を出発して三日。

 途中集落で休憩をとりながら、もうすぐ『テリクリシアの森』の入口にある集落に到着する。

 俺は時々空を飛んで偵察しながらも、ほとんどはレイルの後ろに掴まって馬での移動なのだが。

「しっかり捕まってくださいね♡」

「お、おう?」

 なーんかニヤニヤしていて気持ち悪かったが、いざ馬に跨り腕を彼女の腰に回して捕まっていると、彼女はとても柔らかくなんかすごくいい匂いがして、と、邪な考えにならないようにするのに必死だった。

 それが三日、俺だって一応年頃の男、悶々して仕方ないったらありゃしない。

「どうしたレイジ?」

「へ!?なんでもないですよ!」

 変にボケーッとしてしまってルイさんに心配されてしまうほどだ。

 そして馬を走らせること数時間、日がそろそろ暮れそうになってきたところで『テリクリシアの森』入口の集落『アスヒル宿』に到着した。

 町の規模としては貿易の休憩地点となっているためそれなりの大きさで、宿や飲食店が十数件、人口も千人程の割と大きな町だ。


 『アスヒル宿』


 早速宿をとり馬を預け情報収集を始める、腹ごしらえついでにまずは近傍の食堂から。

 適当な席に六人で座り、料理を注文して店員や他の客にゴブリンのことについて尋ねる。

「ギルドから討伐に来たのか!?早くしてくれ、旅人が減ってこのままじゃ商売あがったりなんだよ」

「数日前に町から討伐に何人か出発したんだが、まだ帰ってきてないんだ」

「もう森の中の集落は三つはやられてる」

 などと、どうやら酷い状態のようで、森の中から逃げてきたという人にも聞いたが、ルイさんが胸ぐらを掴まれて早くどうにかしてくれと懇願されるほど。

 想像以上に酷い状況みたいだ。

 そんな過激な話を聞いてしまってあまり食が進まない。

「食べれる時に食べとけよ、これが冒険者だ」

「はい」

 俺としてもフォレストスパイダーに殺されかけた経験はある、だけれど被害者が多数いる以上早くどうにかしてあげたい。

「レイジは優しいの、放っておいたら今から行くと言い出しかねないですよ」

 レイルは俺のことをよくわかってる、そんな早まったことはさすがにしないけれど、気持ちは今すぐにでも討伐に行きたい。

「急がば回れだ、今日はとにかく休んで明日はゴブリンの住処を捜索、そして作戦を決めて討伐する。わかったな」

 ルイさんがリーダーでよかった、俺なら行き当たりばったりになりかねない。ちゃんと順序だてているし、やっぱり彼の方が信頼できる。

「捜索については私にお任せを!森の精霊と交話ができます!」

「なんでもありだな」

「へへへー」

 褒めてないと思うよ?どっちかと言うと呆れてるかな、そうは言っても俺も魔力探知である程度は探せるけど!レイルの方が確実か。

 そして、とりあえずこの場は別れとなり、それぞれの宿の部屋へと戻って行った。


 『宿の部屋』


 流石に首都やヤーティクルの宿に比べるとボロボロで、ツインベッドに洗面所と水浴び場が一つでトイレは共用、必要最低限のものだけある部屋だった。水浴び場も水を運ぶのが大変そうだが、レイルの水魔法ですぐ溜まるからそこはラッキーかな。

 今までが豪華すぎたような気もするけど。

「あー、おしりが四つに割れそう」

 いくら鞍があるとはいえ、慣れてない長時間の乗馬はさすがにしんどい、ふかふかのオフトゥンに座っても激痛が走る。

「大変です!確認しましょうか?」

「冗談だよ」

 珍しく精霊の姿になって俺の肩に座っているレイル、冗談だとわかっているだろうに。

「マッサージしましょうか?」

「え?レイルも疲れてるでしょ」

「私は精霊なので大丈夫です!物理攻撃無効です!」

 フフフンと胸を張るレイル、もうこれは癖なんだろう。移動の疲れって物理攻撃なのかは不明だけれど、んー、じぁお言葉に甘えてやってもらおうかな?

「それじゃぁ、お願いしようかな?」

「任せてください!」

 と、ボンッと雑に擬人化するレイル。

「どうぞうつ伏せになってください!」

「はいはい、変なところ触らないでよ?」

 変にニヤニヤしてるから一応忠告しておくと。

「変なところってどこですか?」

 とぼけてくる始末だ。

「言わせるな!」

「??」

 本気でわかってないのか、言わせようとしてるのか、レイルのことは好きだがこんな所でおっぱじめる気はサラサラない。壁薄そうだし、ってそういうのじゃなくて。

「では、失礼して!痛かったら言ってくださいね」

「んー、ぐぇっ」

 背中に飛び乗られて食べたものが全て出るかと思った。

「私は重くありません!妖精ですよ!」

「何も言ってないよ!」

 重いか重くないかといえば重かったが、レディーにそういうとキャメルクラッチをされかねない。

 しかも言い訳が妖精って、この世界に質量保存の法則とか絶対適応されないし見た目相応の体重に決まってるし、いくら軽くても飛び乗られたらぐえってなるよ。

「ぷんです、ぷんっ!」

「いででででで!」

 唐突に始まる肩甲骨はがし、痛いとかそういう次元じゃなかったがチラッと顔を見ると彼女はなんだかニヤニヤしてる、レイルが楽しいならいいか。痛覚無効とかあればいいのに。


 …………。


 痛覚無効スキルは手に入らなかったか。無念。

「痛い痛い!普通に痛い!」

「痛いということは凝ってるということです!バキバキです!」

「いでででで!!」

 レイルの拷問に近いマッサージは、それから七十分近く続いたのであった。


   〇


 翌朝。

 朝食の為に宿の食堂に向かうと、既にみんな集まっていて。

「昨日はお楽しみだったみたいだな」

「お楽しみではないですよ!」

 ニヤリ、とルイさんにいじられ、特に事情を知らないであろうレミさんとリグルアさんは頬を赤らめ、カイユさんは別に興味無さそうに朝食を頬張っていた。

 お楽しみというか拷問、だけれど妙に体が軽いのが腹が立つ。

「朝食を食べたら移動だ。村長に聞いたところ、ミトラルテイルって狐の獣人族の村に対策本部があるらしい」

 いつの間に聞いたんだろう、つくづくルイさんがリーダーで良かった。俺なんか夜にレイルに虐められてただけだっのに。

「わかりました、さっさと食べちゃいますね」

「いただきまーす」

 席に座るとウェイトレスさんがサササッと準備してくれたトーストと卵の目玉焼き、ちょっとしたサラダをパクパクと食べだ。


   〇


 山道というか廃道というかほぼ獣道だったので馬が使えず、歩いて断崖絶壁を昇ることほぼ半日。

 朝に出たのに道が悪くて夕方になっていたが、狐獣人の集落『ミトラルテイル集落』の門の前に到着した。周囲は丸太の杭で作られた防護壁があり合戦場さながらで物々しい。

 それにしても、地味に疲れた、俺だけでも飛んでくればよかったか?いや、ルイさん居ないと話にならなさそうだし無理か。

「過酷すぎない?この道」

 獣人ならまだしも人間には過酷な道だった、女性の割には屈強なレミさんでも息を荒らげるほど、そうなると必然的にリグルアさんはフラッフラだし。

「あー、酒飲みたい」

 カイユさんは膝から崩れ落ちた。

「全く皆さん情けないですよ!」

 そういうのは精霊の姿でずっと俺の肩に乗っていたレイル、ギロッとみんなに睨まれて俺のローブのフードに隠れてしまった。

「とりあえず、対策本部に行ってみましょう」

 喧嘩になる前にゴブリン対策本部に急ごう、変に怪しまれないようにレイルはボンッと雑に擬人化し、六人で集落の入口に行くと簡素な鎧を纏った獣人の兵士に確認をされる。

「見ない顔だが冒険者か?」

 見た目四十代の狐獣人の男性が二人、疲れた様子で目元にクマがある、結構長期戦になっているみたいだ。

「ギルドの要請できた、『紅雷の契り』リーダーのルイ・クロムセイヴだ、本部に案内してもらっても?」

「ギルドの!どうぞこちらへ!」

 少し顔が晴れる門番、すぐそこにあるという本部案内してもらう。

 本部と言っても小さなログハウス、周りの家よりかは少し大きいので村長とかの家なのだろう。その中に入ると、人間と獣人が難しい顔をして地図を眺めていた。

「ギルドからの援軍で来られた冒険者をお連れしました」

 門番から紹介されると中にいた六人がこちらをギロッと見る、みんなかなり疲れた顔をしている。

「お待ちしておりました、村長のガヴスです」

 手を差し出したのは狐耳で白い体毛に白い髪、白い髭を蓄えたいかにもな村長、ルイさんは彼と握手を交わす。

「民兵団長のアウルスルアだ、増援は助かる」

 こちらも狐耳獣人だが、黄色い瞳が印象的で朱色の長い髪にモフモフの尻尾。他の獣人よりは人間っぽく体毛はほとんどなく、耳と尻尾がなければ普通の人間だ。

 そして、異世界特有の意味があるのかないのか分からない急所しか守っていない露出が多い鎧を身にまとった彼女が討伐隊のリーダーらしい、見た目二十代、レミさんとはまた違った勇ましさを感じられて何より美人、ルイさんの横でほぇーと見ていると何故かレイルに肘打ちをされた。

 他にも人はいたが、ゴブリンの襲撃を受けた村の生き残りや、近くの村から増援に来た民兵などらしい。まさに寄せ集め集団、よく持ちこたえれていたな。

「ここは崖の上にあって何とかゴブリンの襲撃から逃れていたのですが、先日麓の集落も襲撃を受け、ここもいつまで安全か…………」

 どんどん集落がやられているみたいだ、地図に示された印を見ると村長の言う通りここも時間の問題と思える。

「ゴブリンの住処は?」

「それが、少数の偵察部隊を出しましたが帰ってこずで…………」

「そうか」

 ルイさんは顎に手をやり「んー」と唸る。

(ササッと探して来ましょうか?)

(ちょっとまってて)

 レイルが森の精霊に聞けばあっという間なんだろうけど、変に目立ちたくもないしここはルイさんの話に合わせた方が良さそう、とりあえずやる気満々な彼女には待ってもらう。

「ルイ様御一行も遠くからお越しと思われます、今日はもう日が暮れるのでお休みになられた方が」

正直疲れたは疲れたが、そんなことも言っていられないと思う。

「いえ、今夜から交代で私達も警備に着きます。ペアは、俺とカイユ、レイジとレイル、レミとリグルア、この三交替でいいな」

「はーい」

「了解です」

「うん!」

「はい」

「……わかった」

 そうなるよね、レイルとペアなのは良かったけど、ニヒヒと人の目を気にすることなく俺の腕に抱きついてくるのはちょっとやめて頂きたい。

「警戒箇所の確認をする、集落を案内してもらっても?」

「私が案内しよう」

 民兵団長のアウルスルアさん案内の元、『ミトラルテイル集落』を日没になるギリギリまで案内してもらい、さっきの村長の家より少し小さい木造の家の前に着いた。

「ここが宿だ、と言っても私の家だが部屋数は多い」

 アウルスルアさんの家?結構いいところの人なのかな、まあ、団長をするぐらいだから地位は他の人よりはだいぶ上なのだろう。中に入るとリビングのようなところに案内される。

「部屋の用意をしてくる、少し待っててくれ」

「ああ、お構いなく。床さえあればどうにかしますよ?」

 俺らが来たことで迷惑をかけるのも忍びない、ルイさんが言う前に出しゃばってしまったが、こっちは寝袋ぐらいあるし屋根があるだけで万々歳だ。なんなら座ったまま寝れるよ?

「そういう訳にはいかん、せっかくここまで来てくれたのだからな」

「ありがとうございます」

 彼女の好意を無下にするのもいけないか、お言葉に甘えることにしよう。

「俺らは先に警備に回る、適当な時間に交代してくれよな。行くぞカイユ」

「お酒飲みたーい」

「全部終わったら奢ってやるよ」

「マジ!?やったー!」

 おいおい、急な死亡フラグはやめてくれ。ルイさんは疲れたような顔をし、カイユさんは今まで疲れていた顔が嘘のようにニッコニコで出ていった。

 部屋に残された俺とレイル、レミさんにリグルアさん。

「じぁ、私は偵察に行ってこようかな」

 ボンッ!と久々に黄色っぽく光るポヤポヤ姿になっレイル。

「あれ、消えた!?」

「…………!?」

 突然の出来事に驚く二人、あー、言ってなかったっけ?この状態は俺にしか見えないんだった。

《んじゃ!軽く精霊たちに聞いてきます!》

「ああ、気をつけてね」

《はい!》

 ふぁ〜と漂って壁を貫通して行ってしまった。大丈夫かな?いざ離れるとちょぅと心配だ。

「レイルは?」

「精霊の姿になって偵察に行きましたよ」

「精霊って、精霊体ってこと?マジモンの精霊だったんだ……」

 なんか唖然としてるレミさん、マジモンってどういうこと?精霊って妖精みたいな人は街でもよく見かけたけど。

「どういうことです?」

「精霊と一言で言っても、見えない精霊と見える精霊がいるんだけれど、意外と見える精霊が大多数なの。見えないのは幻覚系の魔法だったり、そもそも隠れるのが上手かったりしてこっちが感知してないだけで、その気になればある程度は探せる。会話できるかは別として」

 へぇー、そうなんだ知らなかった。じぁ、元は見えない精霊のレイルは少数派ということで?

「それで、見えない精霊は極わずか、言伝えによると神に使えし存在と言われているのよ」

 マ?いや待てよ、この世界に転生してくる時の神様っぽい声は多分レイルの声だった、その言い伝えはあながち間違ってないのかもしれない。

「レイルって天使??」

「厳密に言えば違うでしょうけど、そうなのかもね」

 マジかすごいな(小並感)。

「レミさん物知りですね」

「言い伝えとかちょっと知ってるだけ、祖母がこういうの好きでね、この知識が役に立つとは思わなかったよ」

「へぇー、そうなんですね」

 レイルから知ることも多いが、周りの人から知ることも多い、やっぱり色んな人と関わるのはいいことも多いな。かと言って集団はあんまり好きじゃないけれど。

 そして、一時間ぐらい経っただろうか、お茶を出してくれたのでアウルスルアさんと少し世間話をしていると。


 カンカンカンカンカン……。


 木の板を叩くような音が遠くに聞こえたと思うと。

「敵襲!!敵襲!!」

 誰かが叫んでいた。

「行こう」

「うん」

「…………わかった」

「ああ」

 レイルはまだ帰ってきていない、心配だが先ずは目の前の敵をどうにかしないと。

 俺たちは団長の家から飛び出し、状況の確認のため本部へと向かった。

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