99:そのころ
side:竜円寺竜彦たち
「どうですか、動画の反響のほうは。動画に対してこちらに発信されてくるメッセージとかはありましたかね? 私の動画、どうでしたかね? 」
竜円寺が満を持して一本の動画をアップロードし、異能力を一つ見せびらかせたところで全国からワッと異能力者が集まり、一気に味方が増えることを期待していた竜円寺に対して、動画をアップロードしたアカウントの元の持ち主である一人からネットの反応の報告会があった。
しかし、動画のアップロード責任者をしている者からの反応はいま一つだった。
「残念ながら、マジックショーだと思われているのが九割ってところですかね」
「マジックショーですか……やはり、何か仕掛けがあってその通りにすればこのマジックは同じことが出来る、とそういう方向性の動画が拡散されていると? 」
「そのようです。なのでその動画の余波を受けてこちらの動画も再生されているのは確かですが、本当に異能力者ならもっと他に出来ることありそうだから他も見てみたい、という意見が少数ですがありますね。最初の竜円寺さんの語りはマジックを本物っぽく見せるためのセールストークだと思われています」
「そうですか……セールストークに違いないのですが、正直な所かなりショックですね」
肩の力をがっくり落としながらも次の動画について考える竜円寺。彼は……正直なところを言えばこういうセールスというかアピールというか、自己主張があまり得意ではなかった。もし得意だったら勇者ではなく商人としてあっちの世界に残っていたかもしれないが、そこまでの人脈構築能力と魅力に欠けていたのは少し自分でも自覚していた。
「そうなると、次の動画の方向性によっては大道芸人扱いされるのも仕方ない、というところでしょうかね。次こそはまともに異能力だと言えるような動画をアップして配信して、同志を集めていく、という方向に舵を切りたいですね社会的混乱を伴った事件なんかを起こして見せるのはもっと後の予定ですから、耳目を集めるための動画としては何をするべきでしょうか。やはりアイテムボックスの中身を見せる、なんてあたりがそれっぽく演出できる話になるでしょうか? 何か巨大なものを取り出したりしてみれば信じてもらえるようになりますかね? 」
「おそらくは前の動画よりは信憑性は上がるでしょうが……CGと言われたらどうします? 」
「CGに金かけて同志集めをしてる……と言われるのもしゃくですし、もっと別の方向性から考えなくてはいけませんね」
二人して考え込む。ふとお腹が空いた竜円寺はアイテムボックスからリンゴを取り出して、指先で器用に皮をむいてうさぎちゃんにして皿に並べて二人で食べる。シャリシャリと咀嚼音をさせながら動画について次の内容を考えている二人。ふと、動画担当者が気づいて竜円寺に尋ねる。
「今の技、使えるんじゃないですか? 刃物も無しにするっと皮を剥けるのは見せ所ではないかと思うんですが」
「これは指先に風魔法をまとわせて刃物代わりに使ってみただけですからね。マジックの種で見えない所に刃物か何かを持っていると言われたらそれでおしまいでしょう。前回の動画とあまり変わらない話になるはずです。もっと出来れば派手で、人の目を引き付けて、それでいて明らかに人間技じゃない、と思わせるような内容の動画を公開したいですね」
「だとすると、やはり特撮なんかでよく使われている採石場を一時的に借りて、そこで大規模行使するというスケールの大きい動画の案は使えると思うのですが」
竜円寺は考える。爆破するだけではだめだ。爆破じゃなくて明らかに人間には使えない技を見せる必要があるんじゃないか。そうなると氷結系の魔法を炎系の魔法で溶かして、最後にお決まりの爆破をして〆る、という方向に意識を向け始めた。
「そうですね……お金はかかりますがそれがいいかもしれませんね。運転資金は私の手持ちの、向こうの世界から持ちかえってきた金銀宝石の類をリサイクルショップに売れば充分に捻出できると思いますし、その方針でやってみましょうか」
今の所スポンサーもパトロンもない竜円寺にとって、活動資金は出来るだけ使わないようにして活動していきたい。そんな中で採石場を時間限定とはいえ借り切るというのは中々にお金のかかるプランである。だが、これも異能力者の発見と集合、そして組織化のためだ。ここは少々痛い出費になるが、採石場跡地を借りてファンタジーゲームである魔法の再現、それをやってみるのもいいだろう。
「決めました。次回は採石場跡地でファンタジーゲームで出てくる魔法を再現してみた! これで行きましょう。魔法名を唱えながらそれっぽい魔法を出して、その後元通りにする、というカラクリでいかがでしょう」
「なら……レンタルできる採石場が割と近くにありますのでここが良いですね。まず日程を決めましょう。あと、爆破もするでしょうから周辺の消防署へ事前申請が必要ですね。使う魔法の種類はどうしますか」
「氷系で行こうと思います。ただの爆破なら事前に火薬仕込んでたんだろ? って言われたら終わりですが、氷系魔法を使ってその場で削ってかき氷作って食べるぐらいのことをすれば信じる人はいるんじゃないでしょうか? 」
「今冬ですけど……でも信憑性を得るためには必要かもしれませんね。で、かき氷を作った後に炎系魔法で氷を消して、最後にお決まりの爆破ってシーンでいかがです? 後は土魔法で塹壕を作ってそこに退避してもらっている、という話にすればいいんじゃないでしょうか」
「塹壕づくりは一朝一夕ですぐにできる話じゃないですからね。それも込みで行きましょう。他に何かありますか? 」
動画編集者は少し考えこむと、竜円寺に切り出す。
「竜円寺さんの固有の能力についてはどうお考えなんです? あの能力を出すのが最も手っ取り早いと思うのですが」
「あれを出してしまうとおそらく一発で目を付けられると思うんですよ。今は地下でこっそり同志を募集したい段階なのです。他にも雷を落としたりは出来るでしょうが……そうですね、雷は行けますね。雷で粉々に砕いた氷を火魔法で一気に蒸発させて綺麗にしてしまう。これならCGと呼ばれる可能性もさらに減ることでしょう」「今回は竜円寺さんがメインで出演されるということでよろしいので? 」
「奥の手は隠して私の使える範囲の異能力を行使するわけですから、今回はCGなんて呼ばせませんよ。きっちり自分の力はこの程度はあるんだぞ、という物を見せてちゃんと同志募集する側として、実力を見せないといけませんからね。腕が鳴りますよ」
竜円寺たちは次の動画は「異世界の魔法を使ってみた! 」というタイトルで行くことと、その為に採石場を借りること、そして採石場で爆破をするため地元の消防署に一報を入れて事前にそういう行為をしますよ、というお断りを入れ、撮影当日に臨んだ。
そして撮影された動画はフル尺のまま垂れ流しの形で動画配信され、またマジックかよ。と言われるところで終わるはずであった。ちょっとしたアクシデントがなければ、今回もそう言う反応で終わりのはずだったのだ。
世の中は予想通りに動くものではない、というのを、竜円寺は経験することになる。それも、誰も考えなかった明後日の方向で。
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