表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/96

92:くしゃみ三回

 翌日、熱が下がったカルミナはある程度元気になり、ご飯も元気に食べられるようになった。咳が軽く出る程度にはまだなっているが峠は越えた、と言ったところだろう。一安心できるが、魔王でさえあれだけフラフラにできるほどの威力を持つ風邪だ、今日職場に行ったら誰もいない、なんて可能性もある。


 それでも一日で回復しきるのは魔王故なのか、それとも初日に熱が出てその後は咳と微熱が続くような症状なのかについては今後のみんなの様子を観察しないとわからない所だろうな。薬師如来の御利益もあったのかもしれない。


 マスクをして他の人に移さないようにさせたうえで、今日は咳が出る以外問題はないということで出勤させてみることにする。もしかしたら課内封鎖なんて話になったら別の話になるだろうが、無事に出社できるだけの回復は見せた、ということを伝えるうえでもカルミナの出社は必要だろう。


「ふぅ、昨日は悪かったわね。今日は休んだ分挽回して働くわ」


 勤労精神結構である。まだ体がだるいから今日も休むなんて話になったら別だろうが、魔王が風邪に倒れた、という事実のほうがカルミナにとってはショックだったらしく、この風邪を仕掛けた犯人を見つけるべく頑張るらしい。


「治りかけが一番危ないらしいですからくれぐれも他の人にうつしたりしないようにお願いしますね」

「あんたたちは良いわよね。病気にかからない加護がまだ続いてるおかげで異能力者でも風邪にかからないんだから」


 魔王にはそんな加護や保険特約みたいなものはついていないらしい。魔王が風邪、というイメージがまずなかったので昨日はちょっと驚いたが、今日はかなり復調している様子なので外回りの人がどのぐらい減っているか、みんなは大丈夫なのかという点は気になる。みんな大丈夫だろうか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 出勤すると、いつもの鈴木さんと全力で咳き込んでいる近藤さんと内村課長は出勤してきていた。内村課長はかなり辛そうだが、管理職が二日も穴をあけるのはまずいと思ってかなり無理をして出勤しているのはわかるので、フィリスに緩和治療をお願いすることにした。


「昨日は休んですまんな。とりあえず昨日の報告書は読んだ。異能力者にだけ感染する風邪、ということだが、薬師如来のお使い様からの返事がそれ、ということであってるんだな? 」


 内村課長は来て早々昨日の日報を確認して今日自分が何をするべきか、ということについて考えを巡らせているらしい。


「とりあえず、出勤してきて何を言ってるんだと思われるかもしれないが、全身筋肉痛でまともに動けそうにない。今日は一日内勤に回る。どうして進藤とフィリスは平気なんだ? 異能力者中の異能力者という意味ではお前たち二人はかかっても全くおかしくないと思うんだが、何かカラクリはあるのか? 」

「そういえばそれ、私も聞きたかったのよね。二人は病気にかからない魔法でもかけてあるの? 」


 ふむ、ようやくそこに突っ込まれたか。昨日のメンツでは鈴木さんにすら突っ込まれなかったが、今日は鈴木さんも気づいたらしく、疑問に思ったらしい。そもそも家にカルミナという病原体の大本を抱え込んでいて平気な時点で気づいて欲しかった。


「あっちの世界にいた頃の話になるんですが、聖女を管理する聖アドマス教会という組織がありましてね。勇者として活動するに当たって、フィリスと一緒に非常に強力な加護をもらったんですよ。どんな過酷な環境でも病気や毒、呪いの類にかからないように……という話ですが、まだその効力が続いているようでして、カルミナからうつされなかったのもそれが原因かと思います」


 他に思い当たる節がない。少なくとも二人そろってアレな人、呼ばわりされるよりはちゃんと伝えて理由があるらしいことを覚えておいてもらった方がいいだろう。


「便利ね。それも勇者特典ってところかしら」

「まあ、そのようなものですね。その代わりに命がけでカルミナと戦う羽目になったわけですが」

「そもそも、勇者召喚自体が誘拐だったわけよね。誘拐した上に勝手に加護をつけてさあ戦えなんて、闘牛でももう少しマシな待遇で扱われるはずだわ」

「全くだ。とっとと帰ってきてよかったよ。それより他の職員ですが」


 課内を見渡す。幾人かは出勤してきてるようだが、岬さんはダウン。近藤さんはまだ息はある。


「ああ、連絡は聞いてる。昨日無事だった職員も見事に罹患してな。流石に病院に運ばれたほどの体調不良は起こしてないが、熱と関節痛、咳と頭痛でまともに動けるものがほぼおらん。昨日と同じく今日も小人数体制での仕事になるが……まあ、書類仕事も少ないし最近はみんながそれぞれ補い合って仕事ができる状況になってきているので問題ないとは思う。浄化にしても使えるものが増えた分だけ都内の残留瘴気も少なくなってきているからな。とりあえず回せる分は回していくということで、寒いだろうが頑張って外勤のほうを進めてくれ。ついでに何かお使い様から意見が聞けるならそれに越したことはないが……昨日もう充分回ってきてくれているみたいだからあまり期待はしないでおくことにする。では、鈴木、進藤、フィリス、カルミナ。四人とも外回りのほう頼んだぞ。俺は……あぁ、もう十分だ、かなり楽になった。フィリスのおかげで多少体が楽になったんで書類仕事はまとめて受け持とうと思う。かろうじて生きてる職員はみな内勤で無理をしないよう過ごしてくれ。では解散」


 さて、二日連続で外回り組か。まあ、健康的な奴が外を回るのが本来正しい姿でもあるし、いくらこの風邪に罹患しないとしても周りが咳き込む中で仕事をするのはあまり気分のいいものじゃない。外回りにしてくれて正解というべきだろうか。


「では、私はいつも通りのAコースを巡ってきます。山の手一周は……動くの未だつらいならカルミナが行くといいわ。人が多くてうんざりするのは何処も同じだろうし、体力の消耗を抑えるためにも、ついでに瘴気食べて元気になるにもそのほうがいいでしょう? 」

「そうかもしれないわね。じゃあ楽をさせてもらうことにするわ」

「薬師如来様は昨日トモアキ様が散々回ったでしょうから、他の病気治癒の御利益がありそうなところを回ってきますね」

「さて俺はどうすっかな……じゃあみんなが行かなさそうなところを回ってみることにするよ。繁華街がメインになるだろうけどまあ風邪ひかないならどこでも同じだ」


 四人それぞれ行く場所と巡回コースを決めたところで解散、それぞれ外回りに向かう。とりあえず神社仏閣関係はもう充分だろうから、それ以外の欲望渦巻く繁華街や賭け事をするような施設をメインに回っていくことにするか。ついでに市中の様子も見て、本当に異能力者以外引かない風邪なのかどうかも調査するにはちょうどいいだろう。


 破魔のネックレスをポケットに忍ばせると、風邪を引いてそうな人に向けてみてほんのり反応を見る、というので少しずつ洗い出しをするのもいいかもしれない。もしかしたら部署の人数が増えることになるかもしれないしな。


 なんだかんだ、こっちの世界で一番使い勝手のいいアイテムになってるな、破魔のネックレス。異能力者を見分けるにも重宝するし、瘴気濃度を測定するのにも一役買ってくれている。壊れるまでしっかり使い倒すことにしよう。これも教会から授けられたものなので、あの勢力がいかに強大だったかを物語ってくれるのがうれしいところでもあり、悲しいところでもある。


 とりあえず場外馬券売り場から回り始めるか……俺は課を出て現場に向かう。扉が閉まる瞬間、内村課長の咳き込む声がしっかり聞こえてきていた。後三日ぐらいで治まってくれると良いんだけどな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
教会パワーが色々と助けになってますねー 向こうへ行けたら色々と仕入れたいもんですが流石に無理よねえ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ