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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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90:ゴホン!といえば

 思わぬところから情報を得てしまったので、予定を繰り上げて課に帰って話を広めに行く。課に戻ると、全体の様子を確認する。元気そうにしているのは鈴木さんぐらいのものだが、その鈴木さんもマスクをしているし、他の全員はマスク込みだが、それでも咳き込んでいる者が見かけられた。


 ちょっと出先で注意喚起をされたのでできるだけ全員に伝えておく必要があるとして、緊急ミーティングみたいなものを始めることにした。


「そんなわけで、稲荷神社の使いの方から異能力者にだけかかる風邪、というのが流行っているという話を教えてもらいました」

「つまりあれ? この間のトレーニングでみんな異能力に目覚めたからうちの課が半壊してる、と考えたほうがいいのかしら」


 まだ元気な鈴木さんから質問が出る。なんでこの人平気なんだろう。


「そうなりますね。風邪、という話しか聞いてないので、一般的に言う流行性感冒、インフルエンザのようなものだと考えていいのだと思います。もし命の危険にまで達する可能性があるならそう伝えてくれるはずですから、おそらくはしばらくの発熱、発汗、倦怠感、筋肉痛、意識の朦朧化なんかが考えられますが……問題はこれが都内だけで発生しているかどうかですね。全国的に発生しているようなら他都道府県の該当部署に連絡を取って、そういう物が流行ってないかどうかを確認する必要があると思います。もし、全国的にはやっているなら一過性のものとしてスルーして、何とか治す手段を構築するしかないのですが、これが都内だけではやっているとなると事情は多少異なってくると思います」


 一言そこまで言い切ると、風邪を引いてる真最中の近藤さんから質問をされた。


「都内だけだとどんな問題があるっていうんだい? 東京都内で封じ込めに成功しているならむしろいい話のように聞こえるけど」

「都内だけの場合……われわれ第六課に向けた生物兵器攻撃、という可能性が出てくるからです」


 その言葉にああ、なるほど……とまだ元気である人たちが納得をし始める。


「そうだね、一応隣接都道府県と京都には連絡を取っておくべきかな。感染が拡大するにしてもルートや人の流れにも寄るし、新幹線経由で感染が広がるなら名古屋、京都、大阪、神戸、博多と人の乗降がそれなりにある駅から拡散する可能性もある。思ったよりも大事になるな」

「最悪の場合、ですからね。出来れば我々が風邪ひいてまともに動けない、という状況だけで終わってくれると非常にありがたいところです。後、治癒する方法もわかっていませんからそこについても問題ですね。普通の風邪やインフルエンザのように病原体が弱まるまで待機していればいいのか、それとも特効薬が必要になるのか。そこも含めて考えていく必要があるでしょう」


 異能力者だけかかる風邪、という時点で何らかの生物兵器的な異能力を持った人物の仕業である可能性は高いが、野良に存在する異能力者も似たような症状を訴えている。そして、普通のインフルエンザとの区別がつかないとなれば、これを目印に異能力者を集めてしまう、という流れには持っていきにくいだろう。もしこれが風邪とは無縁の季節で引き起こされたものならまだチャンスはあったんだがなあ。


「とりあえず、課はうまく回せるのかしら。元気な人が元気なうちに仕事をパパっと終わらせて一時的な職場閉鎖、という形にするのか、ゾンビのようにはい回りながら仕事を続けるか……これは私たちが勝手に決めていい問題じゃないわね」

「ひとまず他の同種類の部署に連絡を回して、流行ってるらしいから気を付けてくださいと連絡を入れるのが先でしょうね。わかってて黙ってたと言われるよりは流行る可能性があるから充分注意されたし、と連絡を一本でも入れておくほうが確実だと思えますので」

「そうね、じゃあかたっぱしから連絡を入れておくわ。特に京都と奈良には念入りに用心してもらわないと、あっちは異能力者率が高……あれ、もしかして、うちの課って」

「先日ほぼ全員が異能力者になったので、被害の大きさとしては一番になる可能性がありますね。まだかかってない人は自宅待機とかにして全滅を免れたほうがいいのかもしれません」


 俺とフィリスはともかくとして、自宅のカルミナは今頃どうしているだろうか。ちゃんとポテチは一袋で抑えているだろうか。お昼はちゃんと食べられただろうか。親じゃないのに心配になってきたぞ。魔王が風邪でダウンならまだしも、病院にかかって入院とか言い出したらそれはそれで面白いが。


 フィリスはというと、自分が平気なのを判っているので緩和治療をみんなに施し始めた。のどの痛みや頭痛、鼻通りの悪さぐらいならこれである程度持つらしい。


 このままだと俺とフィリス以外まともに動ける人材がいなくなってしまう可能性があり、そうなった場合緊急出動が非常に厳しいものになるな。その前に治癒してくれるのを願うしかないが、こればっかりは病原体がどういうものでどういった方向性に作用してくれているのか、というのを確認する必要が出てくるし、その専門家が必要になってくるだろう。


 専門家か……病気の治癒の神様にでもお会いしてきて、話が聞けるならそっちのほうで一つ何か手立てはないか探す、という第六課なりのやり方があるかもしれないな。その方向性で行ってみよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 病気の神様と言えば薬師如来だ。祭っている寺院はいくつかあるから、その内何カ所かをお参りしまくってついでに穢れを清め、もし向こうからアプローチがあるならそれにこたえてみる、というのが今日の俺の午後の予定、ということになった。


 フィリスと鈴木さんには課に残ってもらい、各都道府県に連絡をして情報集めをしてもらうという手分けだ。今のところまともに動けるのはこの三名ぐらいだ。岬さんも先日の身体強化の影響を受けて見事に風邪の症状を出し、午後から早退していった。だんだん症状がひどくなっていく者もいる。これは早めに対処しないと、加護を受けている俺とフィリスまで倒れたら課の活動は完全に停止してしまう。


 その前に何らかの形で回復するなり調子を戻すなり、せめてヒントぐらいは欲しいところだ。なんとかやり過ごす方法とか、一時的に快方に向かう方法を聞きだすことができるかもしれない。お稲荷様と同じように語り掛けてきてくれてるとは限らないが、行けば何かしらご利益があるとは思っていこう。


 薬師如来や病気治癒にご利益のある神社や寺に参拝し、参拝するたびに浄化をしながらどうぞお出ましください、もしくは頭の中に直接お話をお願いします……と念じながら各所を回る。流石に一回二回で出てきてくれるわけにはいかないと思うので、出てきてくれるまで根気よく参拝を続けよう。病気治癒のお祈りをいろんなところでする、というのはおかしい話ではないしな。


 十五件目ぐらいの薬師如来由来の寺院でようやく願いの届くところが出てきた。


(そなただな、何カ所も寺院を回っているという話が来ている。どんな願いかはおおよそ見当はついている。が、今回は役に立てるようなことがあるかどうかはわからんぞ? )


 ヨシヒット。頭の中に語り掛けてくる何者かの電波? を受信した。


(出てきてくれてありがとうございます。実は異能力者にかかりやすい風邪、という物が出てきてしまったみたいで……)

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
御使さまかな?ご降臨くださって(ー人ー)ありがたや~
おー、やっぱ自分が司ってるタイプの願いに関しては話とか上がってくるんですかね 何か治療に関して取っ掛りになればいいんですが
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