8:荷物整理
ダンジョンで潮干狩りを
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マツさんのゲル
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ダンジョンで潮干狩りを
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こちらもよろしくお願いします。
日曜日。昨日は買ってきた食材で軽く夕飯を作ったが、フィリスにはどれも大好評だった。ただ気になるのは、特に冷奴がお気に入りだったことだ。あっちでも豆を加工した食品はあったはずだが、食感とひんやり感がお気に入りだったらしい。
味付け用にめんつゆをかけてやると、更に気に入ったのか「毎日でも食べましょう! 」と大興奮だったが、豆腐は冷蔵庫という現代文明の利器があってもなお、賞味期限が短い。そのことを伝えると「では、またすーぱーへ行きましょう! 」と更に興奮していた。
安く済む聖女もいたものだな、と苦笑いするところではあるが、豆腐も高いのから安いのまで色々ある。次の給料が出たらお高いやつを買って帰ってきて是非味わってもらうことにしよう。喜ぶ顔が目に浮かぶな。
さて、今日は一日休み。二人でやる作業は一つ。あっちの世界から持ち込んだアイテムボックスの中身を整理して、処分できるものは処分、そして出さないと決めたものは出さない、とお互いに納得するところを探り当てる。
「まず、大前提だ。こっちの世界でアイテムボックスは使わない。一般人、というか人間はアイテムボックスは使えないどころか、魔法も使えない。だからアイテムボックスなんてのはお話の中にしか登場しないすげえ魔法ってことになっている。うっかりでも使わないように注意しないとだめだ。後、フィリスが得意な神聖魔法もそうだ。近所で子供が転んで怪我して泣いてても、怪我を治したりしちゃいけないからな」
「はい、注意します。我慢します」
フィリスは真面目な顔で俺の話についてきてくれている。
「で、だ。アイテムボックスの中身についてだ。ここには今まで使ってきたアーティファクトや聖剣や防具、特殊なアクセサリーなんかが一通り入っているはずだ。フィリスもこっちに飛んでくる際に着ていた衣装もアイテムボックスの中だな? 」
「はい、しっかり入ってます。それから扱っていた杖や野営の準備に使っていた魔道具の類も入ってますね。後は……あっちの下着とかも色々入っています」
「そういうのは……まあ思い入れが強いものにしてもアイテムボックスから出して保存しておくほうが良いぞ。洗濯も必要だろうしな」
さすがに下着と直球で突っ込まれるとは思わなかったが、この場で出せと言えるものでもないしな。順番にお互いの中身について出して、一つ一つ仕舞ったり捨てたりしていこう。
フィリスと二人、アイテムボックスの中身を取り出しては、これはこっちでも使ってても不思議はない、これは明らかにダメ、これは……保留! と色々探し回っている最中にそれは起こった。
「あの、トモアキ様、聖樹のペンダントが反応してるんですが」
「どれどれ……それ確か、魔王の魔力に対して光る奴だよな。何に反応してるんだ? 」
「それが、トモアキ様のアイテムボックスの中身に反応しているようです」
「俺のアイテムボックスの中!? なんでそんな所で反応してるんだ? 」
「わかりません。とりあえず中身を出してみてどれが原因なのかはっきりさせておきましょう」
さっきより丁重にアイテムボックスの中身を整理する。一品ずつ出してはアクセサリーに近づけ、反応を見る。アイテムボックスの魔法を解除するとアクセサリーの反応は消えるため、俺のアイテムボックスの中身に何かしらの問題があることは間違いないということは解った。
「うーん? なんだろうな。道具類では無さそうだが……ん、なんだこれ」
アイテムボックスの中に見慣れないアイテムが入っていることに気が付いた。石ころ? こんなもの放り込んだ覚えはないんだが……とりあえず取り出してみると、アクセサリーが強く輝きだしてまばゆいほどの光を放ち始めた。
「トモアキ様、多分それです。その石ころ……これ魔石ですね。もしかしたら、ですが魔王を倒した時の魔王のエネルギーの波動が高密度結晶化して魔石となって、こっちに戻ってくるときに付着してアイテムボックスの中に入り込んだのかもしれません」
「なるほどな……魔王の魔力が完全に消え切る前に召喚陣を起動したからそのせいでついてきちまったことになったのかもしれないのか。しかし、これも保管庫の肥やしだな。魔王の痕跡が残った魔石なんて持ち歩いてるわけにもいかないし、うかつに取り出して魔王の残滓が寄り集まって魔王復活なんてことになってしまったらこっちの世界に迷惑でしかないからな。さて、どうやって封印するか……」
魔石を目の前にして二人考え込む。
「フィリス、これって魔法で浄化できるか? 」
「魔法を使ってもよろしいのですか? あれだけ強く使うなと言っていましたのに」
「この場合しょうがないだろう。こんな危険物をそのままにしておくことを考えたら致し方ない。やってみてくれ」
「解りました。天地の理、浄化の聖焔よ、魔物の爪痕を滅し永遠の安寧を招来せん。ブレッシングピュリフィケーション! 」
フィリスが最上位浄化魔法を使う。魔石から黒い粒子が立ち上り、魔力の流れが空中に集まり始め、黒さがより濃くなっていく。
「これ浄化魔法だよな? なんか、魔素がより濃くなっているような気がするんだが」
「おかしいですね。いつもならここから白く魔素が清浄化されていくはずなんですけど……アクセサリーの光具合もより強くなってます。どうなっているんでしょう」
「いったん止めるか。このまま何かしら変な状況になっても困るしな」
浄化魔法を止めるフィリス。しかし、そのまま浄化されずに魔石はどんどん魔力を収束させていく。やがて黒い光が部屋の中を輝かせ始め、魔石が脈打つようになってきた。ドックン、ドックンとまるで魔石が生命に生まれ変わるようなそんな瞬間を目にすることになった。
「くそっ、止められないのかな。こうなったら聖剣で割ってやるしか! 」
「やっちゃってください、もう止めるにはそれぐらいしかなさそうです! 」
アイテムボックスから聖剣を取り出し、魔石を割る……と思ったが、魔石が自然に動いて魔石のほうが俺の剣撃を避ける。魔石が……動いた?
「避けられた!? 魔石の癖に! 」
「トモアキ様! 多分その魔石受肉してます! このままだとこの世界で物質化します! 」
フィリスの言うとおりだ。ここで始末をつけてやらないとより厄介な事態を引き起こしかけない。しかし、五年間で磨いた俺の剣の腕でもひらひらと躱されてしまう。それに部屋の中ではうまく剣を振り切れない。その間にも魔石は巨大化し、アイテムボックスや周辺の魔素を取り込みながら成長を始める。
やがてパァッと黒い光が白い光に変化して一瞬輝く。魔石が人の形をなし始め、女の子の姿になった。光り終えた中から出てきたのは、白い衣装に悪魔のような黒い尻尾の生えた、ゴスロリ少女だった。
「ふっふっふ……実体が持てたわ! やはり保険をかけておいて正解だったわね! 」
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