68:明日のための活力
署に戻り、内村課長にあらましを伝えつつ、結果的に得られたのは相当強い能力だということと、対応するにはガスマスクでは不十分で結界装置のようなものを用意する必要があるということ、そして俺とフィリスとカルミナには影響が及ぶ可能性は低いという結論を提出しておいた。
内村課長としては人口比から見て犯人の目星が二分の一になったことだけが成果だな、と褒められるのか怒られているのか微妙な判断が為された。
「とにかく、ご苦労だった。想定していた以上に被害が抑えられ、倒れていた人たちや吸い込んで暴徒となる人も少なかったことから、今回の事件は最小の範囲に抑えられた、とみるべきだろう。後はカルミナが見たと言っていた霧の能力者、同じ背格好のものが防犯カメラに映ってないかどうかの確認だな。カルミナは明日の朝からそっちに集中してくれていい。残りの者は聞き込み調査だ。今日の霧の事件について巻き込まれた人が居る場合には詳細に聞きとって霧の出た瞬間やその時周りにいた人なんかの証言があればそちらに集中してさらに掘り下げてもらってくれ。とりあえず今夜はもう騒ぎは起こさないだろうと断定して解散する」
さて、帰るか。まだ霧の能力者がどういう経緯でその能力を得たかや、目的なんかは考えずに、現場に残った情報を掬い取ってそこから断定する、という流れになるのだろう。とりあえず今日のところは大人しく帰って寝て、あしたからしっかり働け、ということだろうな。
「さて、二人とも帰るぞ。今日はしっかり仕事が出来たし被害は最小限で食い止められたらしいし、なんだか頭に引っかかるものはあるだろうがこういうのは地道な調査が必要だからな。今日のところは納得して帰……どうしたカルミナ」
「あたし、魔王なのにやり込められた気がするわ。なんだか自分が情けないわ」
カルミナとしては分霊としてでも魔王の自覚があるらしく、ただの異能力者に撒かれたのが相当悔しいらしい。
「だったら明日から気合入れて探すことだな。データはみんなが持ってきてくれるだろうし、霧の能力者は実質見ているのはカルミナだけなんだから、今のところ頼れるのはお前だけだ。今日のところはしっかり寝て、明日のための体力を温存しておくのが大事だぞ」
「そうですよ。いくら疲れが来づらい体質だと言っても眠るべき時に眠らずにいてコンディションが悪いまま事に臨むというのはあまり褒められたものではありません。今日はしっかり帰ってちゃんと眠りましょう」
「そうね……今日はポテチ二袋食べていい? 」
「明日頑張れるなら良いぞ」
「よし、それを景気づけにして明日から頑張るわ! 任せておきなさい! 」
どうやらやる気を取り戻したらしい。今日帰ったら何を食べようかな……今から帰って作るには遅い時間帯でもあるし、久しぶりに外食を決め込むか。
「よし、明日からの頑張りを蓄えるため、何処かへ食べに行こう。まだその辺の店は開いてるはずだし何処かいい場所を探して外食といこう」
「そうですね、今から帰って作って食べるのは時間がかかりますし何処かのふぁみれすに入りましょう」
「ポテトの山盛りあるかな? 」
「丘盛りぐらいならあるんじゃないか? 最近は量が減ってるからな」
雑談をしつつ、事件のことを少し考えながらファミレスに向かう。山盛りポテト二つとハンバーグとサラダのセットを頼むと、フィリスはボンゴレパスタを選択。カルミナは山盛りポテトを一人で二つ食べるつもりだったらしいが、一つはみんなで食べるんだぞ、と注意すると、更に追加で山盛りポテトを追加。山盛りポテトが三つ注文されることになった。
「ポテト大好きすぎるお客さんだと思われてるだろうな」
「まあいいんじゃないですか。カルミナが綺麗に片付けてくれるでしょうし、ポテチの代わりだと思えば」
「ポテチは別腹よ! これはこれ! それはそれ! 」
昔のアイルランド人はジャガイモだけで必要カロリーと栄養素を満たしながらジャガイモを作っていたという話を思い出したが、フライドポテトとポテチだけではさすがにカロリーが偏り過ぎじゃないだろうか。まあ、魔王だし栄養の偏りぐらいは自分でなんとかしてしまうんだろう。脚気にかかってる様子もないし、心配する必要はないだろうな。
三人とも注文が通り、それぞれのものを食べながら考える。そういえば、同じく霧にまみれていた鈴木さんは被害にあっている様子はなかった。もしかしたら霧は男にしか効果がないのかもしれない。鈴木さんと近藤さんが同じ場に居てあの場で異常をきたし始めたのは近藤さんだけだった。これは何かのヒントになったりはしないだろうか。
男にだけ反応する霧か……犯人は女性だったという話だし、男女に関係がある能力ということだろうか。
「まだ難しい顔をしていますね」
フィリスに指摘される。眉間に皺が寄っていたらしい。
「そういえば、半グレ集団も近藤さんも、これまでの被害者も暴動に参加した加害者もそうだが、呼吸に異常をきたしたり暴れたりしていたのは男ばっかりだったな、と思ってな。もしかして女性には効果がない異能力だったりするのかな、と思ってさ」
そういいつつ、ハンバーグにナイフを入れて食べる。ちゃんと中まで加熱されているちゃんとしたハンバーグだ。最近流行の自分で焼いたり半生で提供されたりしていない、ちゃんとした奴だ。
「言われてみればそうかもしれませんね。助け出して無事に確保された人は女性は大丈夫だったような気がしますが、男性はほとんど倒れているか気を失っていたような気がしますね」
「カルミナが大丈夫だったのもそう言う理由だったりするのかもしれないな。魔王だから大丈夫だったんじゃなくて、初めから対象じゃなかった、という可能性があるな」
「えー、魔王力のおかげとかじゃなかったの? 」
「まだ解らん。明日になるが、調べてみる必要があるかもな。もしかしたら犯行動機の洗い出しに役立つかもしれん。ついでにスマホにメモっておこう。忘れると困るからな」
思っていても明日朝起きたら忘れてる、なんてことがあったら大事件を未然に防ぐ手立てが減るかもしれない。大事なことはメモっておいて明日に活用するのだ。
「……ってカルミナ、三皿目の山盛りポテトまで手を出すんじゃないよ」
「明日のためよ、明日の」
「二皿食べたら充分だろ! お前毎日ジャガイモばっかり食ってるじゃないか。ちゃんとこっちの分を残しておくという遠慮がないのか、俺らの分も残せ」
「一本あれば充分でしょ」
「充分じゃねーよ、一口だけ頂戴って言って一口で全部行くような発言はやめろ」
カルミナとポテトの取り合いをしている間、フィリスはボンゴレパスタの美味しさに浸りながら、ほほえましくポテトの取り合いを見ていた。
「この平和が続けばいいんですけどね……」
「平和じゃない! 」
かろうじて数本を奪い取ったところで三皿目の丘盛りポテトもなくなってしまった。明日は絶対ポテチ一袋しかやらないからな。これもメモっておこう。
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