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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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65:霧の能力者 1

 カルミナの思い出しによって、霧を操って霧の中に自分の体液を混ぜ込み、自由に人々を操る能力を持っていた魔族……この場合まだ魔族と形容しておいたほうが良いのだろう。そんな能力者が実際に居た、ということを判断することが出来た。


「だが、あっちに居たからと言ってこっちにもいるとは限らんぞ? たまたま似たような能力であるような可能性だってある」

「でも、霧で操る異能力がある、というところまでは判断できるんじゃないの? 何も手掛かりがないよりはマシじゃない? 私ちゃんと役に立ってるわよね」


 うむ……確かに見当をつけられたという意味では役に立っていると言えなくはない。


「まあ、たしかに。後は容疑者をどうやって見つけるかと潜伏先があるなら潜伏先、組織がバックについてるならその組織ってところだな」

「その辺はあたしはパスね! 人探しはこの格好じゃ得意とは言えないし、地道な捜査は他に任せるわ! 」


 まあ、今回は異能力をある程度見破れているだけマシ、といったところだろう。しかし、霧の能力者か。なんかどっかで引っかかるような……


 色々思い出している間に取り調べは終わり、鈴木さんと小林さんがこっちへ戻ってくる。


「どう? 何か思いつくところはあった? 」

「カルミナが部下に似たような能力を持っている奴がいた、という話はしてくれた。俺のほうも何か何処かで引っかかるような節があるんだけど……とりあえず部署に戻って話を共有しますか」

「そうね。ここで結論を出すことはできないし、内村課長にも表向きは何も問題はなさそうだったことを報告しておかないと。カルミナはついてきてね」

「内村に報告するのね。わかったわ」


 上司なんだから課長をつけろよ、とは思いつつ後ろからついていく。エレベーターで第六課に戻り、カルミナが内村課長に報告をする。


「ズバリ、今回の事件の問題点は霧ね。霧を発生させる役割の能力者と、記憶と体を操る二人の能力者がいると考えてもいいと思うわ。もしかしたら一人でそこまで出来る異能力者の仕業かもしれないけど、ポイントは霧と、霧に含まれる成分のほうね。私の記憶が正しければ、私の部下には自分の体液を吸い込ませることで記憶と体の操作を行える能力者が居たわ。霧を発生させる魔術に自分の体液を混ぜて拡散し、好き放題に他人を操る……と言った感じだったわ。でも、今回の争いを見る限りお互いの攻撃性の指向性を強くした、という感じね。さっき見せられた人はその霧に混じってしまって無理矢理巻き込まれた感じかしらね。でも、それ以外の半グレ? に関してはどうせ捕まえる理由があったら逮捕する予定があったんでしょうからそのままでいいと思うわ」

「思い出した。ガルバドの街で起こった領主と領民の暴動騒ぎだ。領民と領主の関係は良好だったのに突然暴動が発生したから、と様子を見にいかされた覚えがある」

「ああ、あの時の気持ち悪い魔族ですか。自分の血を霧化してうっとりしてるタイプのねちっこい目線をした、オカマっぽい魔族でしたね」


 フィリスも、思い出したらしい。


「あれは確か結界で霧を遮れさえすれば近寄ることもできるし、本人が霧化してても元に戻るから意外と楽に倒せた覚えがある。でも、集団の中にあれが紛れ込むと厄介だったな。領民と殴り合いの喧嘩をするのは心に来たなあ」

「二人とも……いや、三人とも体験済みということか。相手の異能力がそれであると仮定して、どうやって騒ぎを収めるための仕事をするか、というのが悩みだな。本人がまた出てくるかどうかが解らんし、目的もまだ皆目見当がつかん。今のところはあれが能力者の仕業であったことだけが戦果か。しばらくは日常活動に戻るとして、次に暴動騒ぎが起きた時にどうやって見つけるか、だな」


 内村課長の眉間に皺が寄る。こういうのは事件が発生してからじゃないと動けないのは警察の難しいところ。かといって、早く事件が起きてくれと願うのもそれは違う。事件は起きないほうがいいのだ。


 少なくとも霧を発生させる異能力者が居て、その霧に暴徒化させるだけの思考誘導をさせる能力が付与されていた可能性が高い。この二つだけは抑えておいても問題ないだろう。実際にどうやって霧に能力を付与させているかはこの際考えなくていい。霧が出るのがポイント、というところか。


「次にどう出てくるか……というより犯人の目的も定かではありません。暴徒化させて遊んでいたのか、それとも能力の調整や試運転をしていたのか。いずれにせよ、次の事件が起こるまでは我々の動くところではないですね」

「警察だからそこはどうしてもな。現状てがかりがあるわけでもないし、霧を出すなら夜だろうから、夜の犯行に注意しつつ、内事六課としては霧が出たら気をつけろ、としか注意喚起できないし、その注意喚起にどういう意味があるのかを説明しなければいけないことも考えると何をどう伝えたらいいやら……」

「催眠性のある新型ガスが使われていて、それを吸い込むと思考回路が鈍くなり扇動や暴動に対して精神的に弱くなる可能性がある、としか言えないな。自白剤の少し変わったもの、と伝えればそれなりの対処ができるようにはなるだろう」

「そっちの方面で伝達しておきますか。ちなみにカルミナ、霧を吸い込んだときの対処法は何か思いつくか? 」


 小林さんがカルミナに確認を取る。カルミナはまた腕を組んでうーん……と考え込み、それから言葉を切り出した。


「吸い込まないようにするしかないわね。吸い込んだらどうなるかは、その霧に混ぜ込んだ体液の持ち主が持たせた指向性……たとえば、異性が居たら襲えとか、領主に反逆をしろとか、そういう命令をイメージしながら毎回変えてくるだろうし、何がどう変化しているかは当人には解らなくなるから実力排除するしかなくなるんじゃないかしら」

「状況、ガスって奴だな。霧に見えるが実際は有毒ではないが脳に異常を与えるガスがふりまかれていた可能性が高い、ということにしておくのが無難か? 」

「それはそれでテロの可能性を示唆されるから他の部署も出張ってくるわよ。身内同士で区域争いしてる間にまた霧を撒かれたら警察官同士の争いってことにもなりかねないからより面倒なことになるわよ」


 鈴木さんが忠告を入れる。これは、収拾がつきそうにないな。できることは……何かあるだろうか。


「とりあえず次の事件の出方を見るしかないでしょうね。同じように霧が発生して、今度は何が引き起こされるのか。それによって私たちの方針も変わるわ」

「そうだな、それしかないだろうな。あまりいい意見ではないが、事件が起きないと何もできないのが警察だ。たとえ公安の、それも人においそれと言えない異能力者や霊能力者を担当する秘密主義の第六課ですら、事件があってその後で解決するしかない。それを念頭に入れつつも、怪しい動きや霧の発生、その他情報を仕入れられる人は可能な限り情報を仕入れておいてほしい。次にいつどこで霧が発生するかもわからんからな」


 そう締めくくると、内村課長は話を終えた。次にどこで霧が起きるか……か。そもそも、何で若者のいがみ合いに手を貸す形で暴動を拡大化させたのか。そのあたりにヒントはあるかもしれないな。


 まだ自前の情報網という物を持っていない自分としては、なんとも歯がゆい時間を過ごすこととなる。次に出てきたら今度こそ捕まえてやらないとな。


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
特徴は上げても名前を出さないのはワザと? それとも⋯忘れてるのかも?
普通に異世界とか勇者、聖女、魔王を受け入れてるのがすごいな この世界ではわりと普通に次元越える事例があるのだろうか
今回の事件も相手が何を目的にしてるか分からないと動くに動けないのがもどかしいですねえ
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