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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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35/94

35:通常業務

ダンジョンで潮干狩りを

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ダンジョンで潮干狩りを

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 内事第六課の朝は早い……ということはない。夜勤があるわけでもないので、基本的には定時出社定時退社の時間的にはホワイトなお仕事ではある。ブラック企業の社畜生活を思えばこれで給料もらえるなら楽勝とにんまりしているところではある。


通常業務は、パワースポットの巡回と瘴気浄化だ。人口密集地や歴史的事件のあった場所、霊的エネルギーが滞る地形を回り、瘴気の蓄積を防ぐ。放置すれば事故や病気が増え、場合によっては魔物の憑依を引き起こす。


 瘴気の集まりそうな場所は、人口密集地や歴史的な事件のあった場所、古戦場跡、大量殺人現場、飛び降りの名所などがそれぞれ瘴気の貯まりやすい場所として選定されやすい……と、座学で聞いた。


 これらを基に過去の浄化のデータを基にして選定される。瘴気を放置すれば地域全体の運気が低下し、事故や病気が頻発する可能性がある。


 調査の結果と推測に基づいて次の巡回の日程やコース、予定を決めて、それぞれの場所の予想される瘴気の量から誰を向かわせていくか、等を決めていく。


 トモアキは事務もできることから内勤外勤両方をこなせる人物としてそれなりに便利な職員として扱われている。逆にフィリスやカルミナは外勤専門だ。どちらも浄化とほぼ同じ効果をもたらすだけのポテンシャルを持っており、特にフィリスの浄化能力については内村課長も太鼓判を押し、よくぞ将門塚での一件を収めてくれた、とお礼されるほどの実力者でもある。


 まだ日本の地形やここら周辺の地図になれていないのもあり、カルミナについてはまだフィリスの監視下にあるため二人は行動を共にして活動している。今のところ二人のルートを選択させて地図にして渡し、回ってもらっているというのが実情だ。


「進藤君、これもお願いできるかな。奥多摩の霊園の浄化状況の過去レポートと過去の浄化回数、それと次回予想される浄化のタイミングについて何だけど」

「解りました。計算してタイムリミットを考えて提出しておきます」


 指示が具体的に飛んでくるので角田部長の下で働いている時よりも数段仕事がやりやすい。「進藤、グラフ! とか進藤、ヴィヴィッド! 」とか、イメージだけで何かを拵えさせようとしてくるあのやり方は確かに無茶だが、おかげで忍耐力は付いたし人の言葉の端々を繋げることで具体的な形にできるように成長してしまった。


 おかげで今の職場での資料づくりやコース選定、適切な人員配置や戦力の分配などが非常にやりやすいのは確か。思えば今この場所にいるのも角田部長のおかげであるので、角田部長にはせめて感謝の祈りを捧げておこう。あなたのおかげで、大分ホワイトな仕事にありつけることが出来ました。ありがとうございます。


 午前中の仕事が終わり、午後は俺も外回り。先日の将門塚の様子を見てくるのと、そこから少し離れた神社の穢れ落としを内事六課に打診してきた組織があるのでそこの浄化を頼みたい、ということだった。


 今日のお昼はフィリスが作ったオムライス風お弁当だ。ケチャップで染め上げられたチキンライスと卵焼きと、わずかながらサラダが入っている。フィリスも料理には前向きなようで、前まではやらなかった料理が今は楽しいらしいので、よほど疲れた時や俺の手料理が食べたいとか、後はたまにはジャンクに済ませたい、というケース以外ではメインで作ってくれている。


 今日も卵焼きは甘く、砂糖がしっかり使われているのでオムライス風チキンライスの酸味と合わさって美味しい。飲み物こそ外で買ってきた緑茶だが、胃袋までフィリスにしっかりつかまれているようなことを考えると幸せだ。今の生活を大事にしていきたいという気持ちがどんどんあふれてくる。


「今日もフィリスさんの手作り? いいわねえ仲良くて」


 コンビニ弁当を食べている鈴木さんから冷やかしの声が飛ぶ。


「この幸せを手に入れるためにこの部署に入ったようなところはありますからね。出来るだけ長く平和でいてほしいもんです」

「あっちの世界から比べるとやっぱりこっちは平和なの? 」

「平和ですねえ。食事の残飯を漁る孤児やモンスターに村ごと焼け出された人たちが居ないという面を含めても、やはりこちらは平和そのものですよ」

「陰で私たちが頑張ってるおかげでもあるんだけどね」

「その陰に自分も入っているんですからそこはまあ。でも、表に出てこない面があってその範囲で平和が保たれているならば平和と呼べるでしょう。王国側にも裏組織みたいなものはありましたしね。一度俺を暗殺しようと画策したらしいですが、返り討ちにしてメッセージを添えて遺体をお返ししたら二度と来なくはなりましたけど」

「何その血なまぐさい内紛。おとぎ話やラノベみたいに綺麗な終わり方じゃなかったのね」


 呆れつつもがつがつとトンカツを食べている鈴木さんをよそ目に、今の環境の平和さを改めて考えることになった。裏組織に所属している関係上、どうしても命のやり取りに遭遇する場面はあるだろう。その上で、カルミナやフィリスが大丈夫かと言えば、多分大丈夫だろう。むしろ現代日本だからと気を抜いている俺のほうが危ないかもしれないという思いすらある。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午後からは俺も外回りだ。まずは先日の事件のあった将門塚に行く。歩いてでもいけるので歩くことにした。それほど時間詰め詰めのスケジュールでもないので、腹ごなしの運動にもちょうどいい。


 到着した将門塚は何十人かの観光客が居た。やはりパワースポットとして人気があるらしい。瘴気を自ら浴びに来るなんてよほど業が深いのか、それとも瘴気をパワーとして感じてしまっているのかはわからないが、ろくなことにはならないだろう。


 こっそりと浄化の術式を組み上げて、将門塚全体に散らす。昨日しっかりと封印処置は施したので今日のところはわずかな瘴気しか上ってきてはいないが、それでも観光客について回ってきていた瘴気がいくらか浄化されたらしい。あちこちから白い煙が立ち上っているのがわかる。


 みんなは何処でこれだけの瘴気を集めて持ってきているんだろう。そしてここで瘴気を浴びて一体何をする気なのか。これがわからない。そのパワーを集めて恋人に告白するとか、それはもうお願いじゃなくて呪いの類になっていると思うわけだが、そうやって男女を結び付けなければ現代社会での恋愛成就は難しいということなのだろうか。


 俺とフィリスは……確かに魔王という災害級の瘴気の塊のおかげで結ばれてきたようなものだから、たしかにピンチをチャンスに変えて上手くやってきた、といえばその通りなのかもしれない。


 難しいもんだなあ。そう言えばバレンタインチョコに自分の血液や髪の毛を刻んで混ぜ込んで……という黒魔術も今でも盛んだと聞く。やはり闇の方向性に走ってしまうのは人間そのものの業なのかもしれない。人が居続ける限り瘴気があふれ続けるのだとすれば、人類を消滅させるぐらいしか瘴気の発生を止める方法はないのか。


 そうなると、カルミナ……もとい、魔王カルメンが目指していた人類殲滅というのは何を目的にしたものだったんだろう。これはこれで謎が増えたな。もし覚えてたらカルミナにでも聞いてみて、実際のところをネタばらししてもらうことにするか。


 さて、今日はもう6件回らないといけない場所がある。仕事を終えると足早に将門塚を後にする。後ろでは、将門塚のありがたみを全身で受け止めて精気を感じるようにその空気を精一杯吸い込む観光客の姿があった。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
呪いでの恋愛成就って後々トラブルになりそうな感じしますねえ……
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