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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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30/95

30:初任務 2

ダンジョンで潮干狩りを

https://ncode.syosetu.com/n9657hs/

こちらもよろしくお願いします。


side:フィリス


 まさかどづかと呼ばれていたこの場所。任務前に軽いレクチャーを受けてはいます。反乱を起こして討伐された将軍の首だけがこちらに飛んできて瘴気を振りまいたため、この首塚を瘴気の封印地として以来千年ほど引き続き瘴気の浄化を行い続けているという話でした。


 話は気軽にされていたのですが、これは……魔王クラスの瘴気の濃度と密度になっています。こんな恐ろしいものを千年も封印し続けているというのは、こちらの世界の神官たちも中々の能力を持っていることがわかります。


 今回のお仕事は封印の維持と漏れ出しそうな瘴気の浄化、ということなのでしょう。漏れ出ている分の浄化だけならおそらくトモアキ様でもできるでしょうが、私が上から更に封印を重ねることでより強固に結界を張ることも可能ですが……さて、近藤さんは何処までの事をお望みなんでしょうね。


「うはははは、おいしー」


 カルミナが結界を少しだけ開いて中からあふれてる瘴気を吸い取って己の養分にしているようです。これはまずいですね。このまま調子に乗らせて結界が解除されてしまうようなことになるとこの地が瘴気であふれてしまいます……!


「カルミナ、止めなさい! このままだとあなたも瘴気に呑まれてしまいますよ! 」

「まだ大丈夫だって、私も成長するってところを見せておかない……と? 」


 一瞬、時間が止まったかのように静寂が訪れる。カルミナの笑顔が凍りつき、瘴気の黒い霧が彼女を中心に渦を巻く。カルミナの様子が変わる。次の瞬間、結界がビリビリと音を立ててひび割れ始めました。カルミナの周りにまとわりついていた瘴気が外側へ吹き出し、カルミナから離れて結界の外へ漏れだそうとしています。


「近藤さん、トモアキ様に連絡を! 」

「もうやってる! 他にも応援を呼んでいるが少し時間がかかる。その間保てるか? 」

「やってみます! カルミナ、今日のポテチは抜きですからね! 」


 全力で光魔法を行使し、己の周りに魔方陣を展開させる。鋭い金属音のような響きが空気を震わせ、周囲の瘴気が焼けるような焦げ臭い音を立てて消滅していく。まずは結界外への漏れ出しをカットさせる。成功。


 しかし、カルミナの周囲で渦巻く黒い霧が、まるで咆哮する獣のようにうねり、結界の隙間を押し広げようとしています。


 続いてカルミナと首塚の間の瘴気の行き来を止める。まずはカルミナにまとわりついた瘴気を浄化してカルミナへ流れ込む瘴気を完全に止めることが先決ですね。


 まずはカルミナに結界を張って外界との瘴気の流れをカット……成功!


 続いてカルミナがこじ開けた結界を再封印……これは厳しいですね。私一人で行使し続けるのはちょっと辛いです。今は漏れ出すのを抑え込むので精いっぱい。せめてもう一人……トモアキ様ぐらいの浄化の使い手が来てくれれば余裕が出来て再封印を施すことも不可能ではないとは思うのですが……


 ここはアイテムボックスの中身も盛大に使っていかなければ厳しいかもしれません。でも、トモアキ様との約束でアイテムボックスの中身は使わないと誓いました。それを破ってさらに厄介ごとを仕事場に持ち込むのはまた一つ問題が発覚してしまいます。それだけは何としても止めなければなりません。


 今できるのは現状維持。その間に応援が駆けつけて来れば勝ち目はあります。トモアキ様、早く来てください……


 ◇◆◇◆◇◆◇


side:トモアキ


「何ですって、将門塚で暴走!? あなた一体彼女たちに何をさせようとしたのよ! 」


 どうやらフィリスたちのほうで問題が発生したらしい。将門塚という言葉が聞こえたが、あの将門塚か。いきなり日本三大怨霊の一つと向き合わせるなんて何を考えているんだ。


「鈴木さん、向かいましょう。援護が必要です」

「そうね、急ぎましょう。多分彼女もあなたの到着と支援を待っているわ」


 ここからなら電車やバスを使うよりも走ったほうが早い。鈴木さんには悪いがちょっと危ない思いをしてもらおう。


「鈴木さん、人払いの結界、使ったままでお願いします。それと、ちょっとお体にさわりますね」


 そう言って鈴木さんを持ち上げて背中に背負う。


「しっかりつかまっていてください。現場まで急行します」

「え、ちょっと待って、ま……」


 身体強化を全力でかけて車道を走る。信号が赤でもお構いなしに突っ込み、はねられそうになる前にダッシュで回避し、どんどんスピードを上げていく。時速八十キロぐらいは出てるだろうか。将門塚までは……五分。今の俺の体力でも問題なく駆け付けられるスピードだ。


 背中で鈴木さんが何やらわめいているが、耳には入ってこない。時速八十キロのスピードから振り落とされたらただでは済まないと本人も気づいているのか、腕と足にはしっかりと力が入っていて俺の身体から離れるような様子はない。


 どうやら同僚らしい人たちが一斉に駆けつけており、将門塚の周りで軽く渋滞を引き起こしている。車や電車で来なくて正解だったな。やはり人間最後に信じられるのは自分の足だ。


 詰まり始めた車を横目に全力で駆け抜けて、将門塚に到着する。到着した先は軽く人が集まっていて、どうやら全員が内事第六課所属の様だった。


 将門塚の中では結界に遮断されて身動きが取れなくなっているカルミナと、全力で瘴気を漏らさないように魔方陣まで敷いて浄化し続けているフィリスの姿が見える。


 将門塚の周囲では、内事第六課のメンバーたちが慌ただしく動いている。誰かが「早く浄化陣を! 」と叫び、別の者は通信機で状況を報告。だが、将門塚から漏れ出している瘴気の圧力に皆が一歩後ずさる。「誰だ、新人にこんな重たい業務任せたの! 」と怒号まで飛び交うありさまだ。近藤さん後でメチャクチャ怒られる奴だな。


 フィリスが張った結界の中に入り、カルミナの結界を代わりに施す。カルミナの瘴気吸収は気絶しているがまだ続いている。これを完全に遮断して、その上で将門塚の結界を再封印しようとしていることは解った。


「フィリス、俺だ。聖杖を使ってもいいから確実に封印してくれ」

「トモアキ様! 解りました、後は任せます! 」


 フィリスからカルミナの隔離を受け継ぎ、手が空いたフィリスがアイテムボックスから自分の愛用していた聖杖メテオストロークを取り出す。物理的に殴っても良し、光魔法の増幅アイテムとして使っても良しの万能杖だ。


 フィリスが魔方陣の上から更に魔方陣を重ね掛けして結界を更に作り出す。その間に手の空いている内事第六課の職員たちが補助結界を発動させるような機械を設置し始めた。数で物を言わせるならこっちでも良いのだろうが、フィリスが結界魔法陣を発動させるための充填期間の分だけ持ってくれればそれでいい。俺も空いた魔力で結界の封印を補佐していく。


 「永遠の光よ、闇を封じよ! 聖なる炎により、呪われし影を祓いたまえ! 」


 彼女の声が響くと、魔方陣から眩い光が迸り、瘴気の黒い霧を切り裂く。カルミナの身体を覆わんとしていた影が一瞬後退し、結界が再び輝きを取り戻す。聖杖が金色の光を放ち、魔方陣が一気に拡大。塚の奥から響く唸り声が弱まり、瘴気の奔流が押し戻される。


 やがて、結界は再び閉じられ、周辺に漂い始めていた瘴気も結界の発動と同時に消失、浄化されていった。そしてその場に膝をガクンとつき倒れ込むフィリス。


 急いで肩を貸してやり、フィリスを立たせる。


「お疲れ様、フィリス。よく頑張ったな」

「はい、頑張りました。なので後で一杯甘やかしてくださいね」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
うん、これは明らかに上のミス。
カルミナが調子に乗ってしまったのもありますけどマジでこの世界に不慣れな新人に任せる難易度ではなかったよねえ
魔王ポンコツ、ポテチ何食抜きの刑かなー 今のこいつはポンコツとはいえ、カルミナ並みの瘴気が封じてある地に本職がすぐ駆けつけて来れないのはちょっと問題ではないだろうか メテオストロークか 聖女はやはり…
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