表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/94

29:初任務

マツさんのゲル

https://ncode.syosetu.com/n7294kn/

ダンジョンで潮干狩りを

https://ncode.syosetu.com/n9657hs/

こちらもよろしくお願いします。


 二日間の座学講習が終わり、実践というか実務というか、パトロールに出かけることになった。と言っても制服が供与されるわけではなく、あくまで一般人に紛れて行動することが要求されるため、私服での出勤となる。

 身分を証明するのは警察手帳と、渡す用の名刺が数枚警察手帳に挟まれているだけ。やること自体はそう難しくなく、いくつかのパワースポットを回って瘴気のかけらを見つけたらこっそり浄化しながらいろんな場所へ行く、という形になる。


 俺は鈴木さんと行動。フィリス・カルミナは近藤さんと行動を共にすることになった。流石に四人や五人で私服刑事がうろうろするのは目立つ、というところかららしい。が、近藤さんがフィリスとカルミナを連れて歩く姿は、外国人の知り合いを観光案内するような感じに見えて少しコミカルさが抜けなかった。


「ところで、本当に会社のほうは大丈夫なんでしょうか。急に辞めてこっちに配属されることになって、部署は混乱してるかもしれませんが」


 各所を移動しながら小声で雑談をしつつ鈴木さんに聞く。いくら内資100%の会社に就職したとはいえ、前の会社の事は気になるのだ。


「大丈夫よ。その辺をキチンと滞りなく行うように軽い暗示をかけるのもうちの退職代行サービスの仕事の一部なの。だから、表向きは数週間前から仕事を辞めることを告げて、円満な形で退職した、ということになっているわ」


 そういう面でもスキルや役割がきちんと回っているらしい。簡単な暗示なら俺でもかけることはできるが、こっちには専門職として暗示をかける人が居るらしい。相当強力な暗示を使えるのだろうな。


「いくらあなたが元勇者で色んなことができると言っても蛇の道は蛇よ。そっちが専門で雇われてる人だから腕のほうは信用してくれて構わないわ」

「そういうことにしておきます。そう言えば座学で聞きそびれたんですが、人払いの結界の話ですけど、あれ相当高精度なものを使っていますよね。向こうの世界でも見たことがないぐらい素晴らしい出来だったと思いますが、あれも時代の蓄積と技術の進化のなせる技、ってことなんですかね」


 真面目に座学を聞いていて今の日本の情勢やここ最近の起きた事件についての隠密処理の方法や表向きにはどういう情報として流されていたのかなど、例を用いて説明してくれる西村さんの講義は非常にためになった。ためになりすぎていて、うっかり聞きそびれていたのだ。


「そうね、独り立ちするようになったら改めて講習することになると思うけど、基本的には道具を使うわ。こんな感じのね。これの蓋を開ければ半径500メートルぐらいの範囲の人間に暗示をかけることができる。具体的には何かが起こってもそれを認識させない機能と、所持者に近寄らないようにする機能の二つが備わっているわ」


 やはりあっちの魔法よりも数段以上、上の性能を誇っている。物を隠したり人を隠したり、そう言う類の魔法に特化しているのだろう。これを作り上げた人は相当な……いや、作り上げてきた人達は相当な練達者なのだろうな。


「こんなに小型化されてるんですか。やっぱりこっちの警察? 組織? は優秀ですね」

「伊達に千年怨霊と戦い続けてないってところね。さて、次へ行きましょうか」


 小さなパワースポットと最近噂のところへ出かけると、わずかだが瘴気の反応があったので処理。これでしばらくはここに瘴気が留まることはないだろう。周りの人間も「空気がなんだか新鮮」とか「パワーが満ちるわー」とか言ってるが、俺の浄化の影響であることに気づく様子はない。というか俺と鈴木さんに意図的に意識が向かないように仕向けられているので何もいなかったかのように扱われている。


「やっぱり俺も覚えよう、人払いの結界の術式。先に覚えるのはフィリスのほうだろうけど、何とかして学んで形に出来れば一人でもこういう場所を巡ってあらかじめ浄化し続けることで世の中が平和になるのならやるだけの価値はあるってもんですよね」

「やる気になってきたわね。陰ながらの犯罪防止策というのも悪くないでしょ? 」

「そうですね。向こうでは大手を振って我こそが魔を滅する勇者パーティー御一行様でござい、という感じでしたからね。目立つこと自体が目的だったようなところもあります」

「ふふっ、なにそれ。でもいいわ、心強い味方が出来てくれて頼もしいったらありゃしないわね」


 鈴木さんは普通に笑うと美人なんだがな。普段のきつめのメイクと表情をしているから気づかないが、静かにしていれば美人、という奴だろう。


「何か今失礼なことを考えなかったかしら? 」

「気のせいでしょう。次はどっちですか? 」


 ◇◆◇◆◇◆◇


side:フィリス


「しかし、君らは姉妹と呼ばせるにしては見た目も年齢差もありすぎるな。もうちょっと考えて設定を練り込むべきだったかな? 」


 近藤さんがこっちに気を使ってくれています。それはとてもありがたいのですが、私としては早くひとり立ちしてトモアキ様と再び肩を並べるべくいろんなことを学ばなければなりません。それに追いつくためにも、今は一つ一つ仕事を覚えて早くトモアキ様と合流しての仕事にもあたれるように努力していきましょう。


 カルミナは寝ています。移動が車だからなのか、よほど乗り心地がいいのかわかりませんが暢気なものです。本当にこれがあの強い魔王だったのかと思うと気が抜けて仕方ありませんが、私が識別できる魔素の種類からしても魔王カルメンであることに違いはないのですから幼生体とはいえ気を引き締めて任務にあたらなければいけません。


「その辺は私にはどうすることもできませんからね。似てないけど姉妹、というケースは時々ありますし、私たちの風貌がこの国の人とは違う事からしてもうまく誤魔化す余地はあると思います。それに、もし本当にこの国の国民として、もしくはほかの国の何処かの誰かという形で国籍を頂けるのであればトモアキ様と今後とも前向きにお付き合いが出来る……そう考えてもいいのですよね? 」


 今の私たちに頼る相手はそう多くない。トモアキ様を除けばこの方たちぐらいなものだ。そして、この方たちは私たちの力を欲しています。そこに妥協点を見出すことができるのなら利用される分には利用されようとも思っています。


「さあ、ついたよ。カルミナさんを起こしてさしあげて。ここが日本でも屈指の瘴気のたまり場、将門塚だ」


 案内されたのはビルに囲まれたお墓のような場所でした。


「さて、ここでちょっとした試験を受けてもらおうと思ってね。本当に君らの力がどこまで通じるのか。君らでこの怨霊を少しでも鎮めることができるのかどうか、そのあたりを見せてもらおうと考えている。中に入ればわかると思うが……ここにこれがある理由がこの怨霊の強さを物語っていると言っていいね」


 車を降りて敷地内に一歩入ると、途端に吹き荒れる瘴気の嵐が私とカルミナを襲う。これは凄いですね……そして、これをこの敷地内に封印している封印術式のレベルの高さもよく解ります。ここは、本来人が気軽に足を踏み入れてお祈りをささげるような場所ではないのでしょう。


 そんな所をビルで囲んで生活をしているこの国の人も凄いですが、ここがそのままの形で残っていること自体も不思議です。


「さてカルミナ、お仕事ですよ」

「これは美味しそうな瘴気ね。たくさん食べていいんでしょ? 」


 カルミナがニヤリとして闇魔法の準備を始める。私も光魔法の準備をはじめ、浄化の儀式を執り行い始める。トモアキ様もこんな強い悪霊のところへ案内されているんでしょうか。あっちも不安で仕方ないですが、こっちもできる限りの成果を見せて帰らないといけない所です。一つ頑張るとしましょうか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
瘴気吸っちゃったらただの守り神じゃないですか。
いきなり将門塚とか他のラノベだったら最終決戦地じゃないか。
フィリス・カルミナの見た目と年齢差は異母姉妹ってことにしておけば大体片付きそう 異母ってところで勝手に察してくれるでしょw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ