27:性能試験
マツさんのゲル
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ダンジョンで潮干狩りを
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こちらもよろしくお願いします。
「流石は元勇者ってことかな。あれでまだ本気じゃなかったんだろう? さっきの二人の会話を聞いた感じそう判断するけど」
「そうですね、トモアキ様が本気を出したらこの部屋ごと吹き飛ぶかと。最終決戦では城の上部構造を全部吹き飛ばしてましたし、私も本気を出せばこの部屋の壁ぐらいなら打ちぬけると思います」
壁をコンコンと叩きながらフィリスが解説を入れる。まあ、このサッカーコート半分ぐらいの面積なら何とでもなるとは思う。
「それは助かった。もし本気で戦われてたら私が始末書を書くところだったよ」
「そんなわけで肉体的なテストはこんなもので良かったでしょうか」
「充分すぎるほど伝わった。後は……魔法に関してかな。ここはスプリンクラーもないし、試しに天井に向かって軽く打ち放って見てもらっていいかな」
「解りました。全力は出さずに徐々に出力を上げていくので途中でストップはお願いしますね」
そうあらかじめ伝えておく。属性は何がいいかな。一番苦手な風魔法……は周囲に幅広く影響が広がりやすいので土魔法……さすがに訓練室を破壊するのはナシか。そうなると、雷魔法あたりが良いだろうか。
三週間ぶりぐらいの雷魔法のイメージを作り出すと、ピリッ、ピリリッと徐々に天井と俺を繋ぐ雷の軌跡が出始める。
ギャラリーからおぉっ!? という歓声と徐々に出力を上げ始める。太さが己の指の太さ辺りから順番に強くなり始め、手のひらぐらいのサイズになった。部屋全体が雷の光で輝き始め、己の手から更に大きくなり、俺全体が雷に包まれるぐらいの勢いになったところで天井を見て、出力を止める。
「どうしたんだ? 」
「コンクリートが溶け始めるのでこのぐらいで止めておこうかなと」
指さした天井の上では、コンクリートが赤熱して徐々にもろくなり始めているのを指摘する。
「これは……ちょっと怒られるかな? 」
「じゃあ、直しておきますね」
土魔法を駆使してコンクリートの強度を元に戻すように天井に改修を加える。次同じことが起こらないように耐熱コンクリートにしてしまうか。
天井の改修が終わると、周りから拍手が起きた。どうやら、天井がもろくなっていたのは俺だけのせいではなく、みんなもそろそろ危ないと思っていたのかもしれないな。
「さて、俺は見せたとして、フィリスは何をする? 」
「そうですね……私の得意属性は風と光と水ですから……浄化の応用でもしますか」
そういうとフィリスは浄化魔法を使い始める。風に乗せて浄化された空気が地下の少しよどんだ空気を清浄化させていく。空気が美味い、という感じを部屋全体に広げ始める。
ついでにさっきまでの汗臭さも洗い流したのか、俺とフィリスを中心に浄化魔法による身体への清潔さを保つ魔法が付与され、まるで風呂に入って出たような気持ちよさが全身を駆け巡る。
「おぉ、なんか体が気持ちよくなってきたぞ? 」
「昨日家に帰れなかった分風呂に入れなかったんだがこれがあれば……うん、二日目の匂いも抜けてるな、浄化の魔法に清潔化の魔法も込みで入ってるんだな」
「俺の弁当の香りもなくなったんだが」
どうやら消臭効果も抜群らしい。弁当の匂いが浄化されなければいけないものかどうかは置いておくが、この範囲の匂いや浄化を行えることで俺よりもより規模の大きい浄化の魔法が使えるという証明にはなるだろう。
「簡単な浄化で良ければこの辺りで。本格的にやれば、半径二キロメートルぐらいの間でこれを展開可能ですが、流石に詠唱に時間がかかるのでその間待ってもらう必要があるとは思いますが……いかがですか? わたし、お役に立てそうですか? 」
「あ、ああ。どっちも予想以上の試験結果だったよ。正直、君ら二人で日本中の異変を解決できるんじゃないかと思わされる程度には凄かった」
「流石に手数が足りないとは思いますがね。山をも動かす巨大災害でも来れば話は別かもしれませんが」
「今のところそこまで巨大な事件が発生したり……という予兆はないかな。ひとまずは普通の警察官と同じで見回りと、痕跡を見つけたら丁寧な浄化、それからスキル犯罪者への対応。そんな所だとは思う。しかし、鈴木君はとんだ拾い物をしたしたものだなあ」
「私もびっくりよ。浄化だけって聞いてたから金額を提示したのに、ここまで出来るのだったら……」
近藤さんと二人で相談を始める。どうやら収入面でもそれなりのものが担保されそうで、俺もにっこり。フィリスも俺に勝てるだけの武術の力とさっき見せた浄化能力からして、俺へと同じか俺より高い給料が支払われる可能性が高い。フィリスに負けるかもしれないというのはちょっと癪だが、受け入れ準備をしてくれているという面での心配はなさそうだ。
「ねえ、私の出番は? 」
一人だけテストに参加してないカルミナが暇そうにこちらに戦闘能力テストを受けたがりそうにしている。
「カルミナさんは……何ができるのかな? 」
「そうね。ざっとこんな感じかしら」
そういうと無詠唱で魔方陣を展開、巨大な氷柱を作り上げる。部屋の温度が一気に下がったのを感じる。その硬さを確かめるために俺が一撃を加えてみる。キィンと氷柱が鳴り、簡単には壊せないことを物語っていた。
「永久氷壁の氷柱よ。勇者が本気を出して殴れば壊せるだろうけど、多分衝撃波で部屋がめちゃくちゃになるわね。それから……とりあえず消すわね」
カルミナがまたも無詠唱で氷柱を消す。ギャラリーが驚いているが、カルミナはまだまだ本調子ではないとはいえ魔法行使に関してはある程度問題なく出来ている、ということだろうか。
「次は私の得意な闇魔法ね! 瘴気を発生させてみるわ! 」
そのまま無詠唱で瘴気を発生させ、部屋中に充満させる。部屋に充満した瘴気は通常ならあらゆるものに対して憑依を確かめたり悪さをしたり、食品を腐らせたりとろくなことをしないが、この瘴気はカルミナのオリジナル魔法であり、指示待ちが出来る賢い瘴気らしく、一点に集まって黒い渦を形成し、観覧席の空気を重くする。
突然の瘴気発生に戦闘モードに入った観客もいるようだが、カルミナの「私が何かさせなければ何もしないから問題ないわ! 」という一言で落ち着いたのか、再び席に座った。
「じゃあフィリス、これ浄化してみて」
「いいんですか? せっかく出したのに」
「良いのよ、どうせ練習で出したものだし、このままあっても邪魔でしょう? それとも私が再吸収しようかしら」
「再吸収が出来るんですか、ではそっちでお願いします」
「わかったわ! 」
カルミナが指をぱちんとならし合図をすると、瘴気がカルミナの体内に戻っていく。全ての瘴気を吸い上げて最後の一欠片まで吸い尽くすと、部屋は元の状態に戻った。
「ざっとこんなものね。瘴気を出現させるだけ体内魔力を使っちゃったけど、まあ誤差みたいなものだから問題ないわ」
近藤さんはちょっと引き気味になっているが、それを見て鈴木さんが腹を抱えて笑っている。どうやらこの二人は結構仲がいいらしい。
「これは大収穫ね。私の勘は当たってたわ。進藤さん、これから同僚としてよろしくね」
「ああ、よろしく頼む。最初は解らないことだらけだから仕事についてレクチャーを受ける必要はあるだろうけど、無事に勤めて実戦に出られるまで頑張るとするよ」
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