24:警視庁公安部内事第六課
マツさんのゲル
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ダンジョンで潮干狩りを
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こちらもよろしくお願いします。
フィリスとカルミナと共に、パトカーの後部座席に座らされて移動を開始する。さっきの騒ぎは突風で飛んできたものが当たってガラスが割れたということになったらしい。
「三人さんには色々と聞きたいことがある。悪いがこのまま警視庁まで同行願うよ」
助手席に乗った刑事さんからそう告げられる。
「けいしちょーとはなんですかトモアキ様」
「この地域の警察だ。この東京だけは警視庁って名前で、各都道府県、地域はそれぞれ何々警察と名前が付いている」
「つまり、おまわりさんに違いはないわけですね」
「お嬢さんは日本語がお上手でいらっしゃる。どこの国から来たのかな? 」
刑事さんの目が光りっぱなしだ。少なくともお互いがお互いをまともな人種ではないと思い合ってるからこそ繋がる言葉だが、違法滞在者か異形のものか、それとも異世界の者か……そのあたりを探っているんだろう。
「ちょっとポケットの財布を失礼……この人、同僚かな? 」
何かがある時に、というかこういう事態を予測して名刺を財布に入れておいたのが功を奏したのか、刑事さんは名刺を見た後、突き返してきた。
「なるほど、もうこっちとしてはご対面が終わってる、そういうことでいいのかな? 」
「俺個人に関してはそうだな。そして、鈴木さんに話してないことをこれから話すことになると思う。良ければ同席をお願いできるとこっちもリラックスして話しやすいんだけどお願いを聞いては貰えるだろうか? 」
すると、刑事さんは電話をかけ始めた、どうやら鈴木さんが部署に居るかどうかと、居るならこれからお客さんが行くので応対の手伝いをお願いしたいという話を始めた。どうやら多少だけスムーズに物事を進められるらしい。
「しかし、鈴木が先に出会ってたとはな。俺が最初に唾つけた……と言いたかったもんだ。退魔士の類は希少価値が高くてな。常時募集中なんだ。おそらく彼女も君をスカウトしたんじゃないかな? 」
「そうなる。その時は断ったけどね」
「今回はどうかな? 勧誘に乗ってくれるかな? 」
「うーん、そちらの出方次第になるかなあ。あんまりお痛をされるようだとさっきの比じゃない被害が出ることになるかもしれないからそこだけは気を付けて、出来るだけ丁重に扱っていただきたい」
正直、無理にフィリスやカルミナの戸籍や国籍がないことを盾に脅し始めるようなことをし始めるなら一暴れして身を隠すつもりはある。その際は俺自身すら過ごしづらい世の中になってしまうのでそうならないことを祈るしかないな。警視庁とはいえ相手も人、元勇者とはいえ俺も人、お互いつつき合わずに和やかな対話ができるようにしたいところだ。
「警察ってポテチある? 」
ここへ来てもカルミナはマイペース。お前が一番余計なことをしそうだ、ということは口にせずにあえてそのままスルーしておく。
「そうだな、ポテチの一袋ぐらいなら誰かがおやつに持ち込んでいるかもしれない。良かったらそれを食べながら話し合いとしようか」
「やった、言ってみるものね! 」
警視庁に着き車を降りると、エレベーターに乗り込む。そのまま素直に階層を押さずに、謎の暗号じみた順番でエレベーターのボタンを押し始めると、エレベーターは地上ではなく地下へ向かっていくようだ。どうやら内事第六課というのは表向きには存在しないというのは確かなようで、地上ではなく地下に伸びていくエレベーターの中でフィリスは少し不安げな表情を見せる。
「地下に行ってますが大丈夫ですか? このままここから出られないということはないですよね? 」
「電気が通じている間は問題なく動くはずだ。流石に一回で暗記できるほど俺は賢くないから自力で脱出は難しいだろうけど、話をお互いきちんとすれば解り合うことができると俺は信じているよ」
地下六階らしき表示のエレベーターから下りると、目の前に、「警視庁公安部内事第六課」と書かれたプレートが丁寧にも飾られていた。ここはお役所仕事なんだな。
「ようこそ、警視庁が誇る秘密結社内事第六課へ。三人のご来訪を歓迎するよ」
紹介された人の見た目はあくまで普通。刑事らしき風貌の人が十数人見受けられた。私服の人がほとんどだ。多分どこでも溶け込めるように、という感じらしい。そして、居た。
「あら、お久しぶりね、進藤さん。首を長くしてお待ちしてましたわ」
「ここまで早く御厄介になるとは思わなかったよ。今日はよろしくお願いします」
「そちらのお連れ様は関係者なの? 」
「彼女が浄化を使った。なので三人とも関係者だと判断して連れてきた。問題はあるか? 」
「うーん……お姉さんはともかくそっちの子供さんは必要あったのかしら? 」
「必要だから同行してもらっている。一人で家に帰れとも言えないし、二人だけを連れていく方が余計に問題だろう。人の目もあるしな」
どうやら打ち合わせのほうはまだしてなかったらしく、その場で情報交換がなされている。俺は二人のやり取りを聞きながら、いつになったらカツ丼出てくるのかなあとまで考えていた。
フィリスはフィリスで「秘密基地みたいでかっこいいですね……」と目をキラキラさせている。
どうやら打ち合わせが終わったらしく、取調室に連れてこられた。ドアを開くときに気づいたが、普通の取調室ではない。ドアは分厚く、金属を張り巡らせたまるで金庫の中のような重厚な作りになっている。隣の部屋は……ハーフミラーか。多分あっち側に何人かいて、何かが発生した場合すぐに対処できるようにしているのだろう。
「さて、まずは名前から聞こうか。俺は近藤昭、偽名だ」
「進藤智明、本名だ」
「フィリス=レンブラント。同じく本名です」
「カルミナよ! よろしくね! 」
「私は鈴木恵、これも偽名だからよろしく。進藤さんとは二度目になるわね。私の事は二人には? 」
「一応ざっくりとだけ話してはある。で、腹の探り合いをするのはもうなしにしよう。ここまで大人しく付いてきた時点でその辺は察してほしい。お互いに時間ももったいないことだし、こっちのお願いとそっちの要求をシンプルに通していかないか? 」
できるだけ直球に話を決めたい。こねくり回して話がこじれたり腹の探り合いになってどちらかがどちらかを脅すようなことにはしたくないし、ここで暴れることはもっとしたくない。
「なるほど。じゃあこっちの要求からだ。三人をスカウトしたい、内事六課の捜査員として。その浄化の能力は魅力的だ。退魔組織として……あぁ、そうだ。その前に事前情報が必要かな? こちらの仕事としての」
「そこから話してもらえると助かる。俺はともかくとしてフィリスとカルミナは何のことやらサッパリという話になるだろうからな。その辺からお願いする」
ソファーに座りなおして前屈姿勢で話に聞き入る。フィリスとカルミナも真面目な話が始まるというのが伝わったようで、くつろいでいた雰囲気を消して話に集中するモードに入った。
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