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19:異形との戦い(あっさり)

マツさんのゲル

https://ncode.syosetu.com/n7294kn/

ダンジョンで潮干狩りを

https://ncode.syosetu.com/n9657hs/

こちらもよろしくお願いします。


 角田部長から影が伸びる。その影は俺の足を掴み、身動きを封じる。このぐらいならちょっと引っ張れば霧散させることができる程度の力だな。もう少し様子を見よう。


 どうやら何かにとりつかれているらしい、という勘自体は外れてないようだが、そういうモンスターや魔族は確かに向こうの世界にも存在した。が、ピンポイントで俺の周りにそういう現象が起こり始める原因はなんだろうか。俺からひそかにそういうオーラが漏れ出ていて、メンタルに不調をきたした角田部長にそれが乗り移った、なんてことになるんだろうか。


「進藤……いただきます」


 角田部長が俺に向かって走り込んでくる。いただきますが言えて偉いね、と思いつつ、俺を掴んだ影をこっちから掴み返し、光魔法で消滅させる。それに驚いた角田部長が俺に近づくのを止めて急ブレーキをかけた。


「お前……進藤、何者だ? 」

「それはこっちのセリフだ。角田部長じゃないな。憑りついてるのか乗っ取ったのかは知らないが、そんなんでもそれほど悪い上司ではないんだ、返してもらうぞ」


 ここで装備を出す必要はない。身に着けている魔法で浄化は事足りるだろう。普段の残業とブラックの恨みというわけではないが、そのまま角田部長に近づいていき、アイアンクローを喰らわせる。そしてそのまま浄化の魔法を使い、角田部長に憑りついている何かを浄化するように魔術の行使を始める。


「や、やめ……消え……」


 どうやらかなり低級の魔物? みたいなものだったらしい。最大出力を出さなくても浄化は完了し、角田部長の身体から離れていった影はそのまま空中で霧散していった。


 角田部長が大人しかったのは人格を乗っ取っていたなにかのせい、ということだろう。つまり明日からはいつもの怒号とパワハラが復活するということだな。……そのままでも良かったのでは?


 とりあえずその場で気を失っている角田部長が生きていることを確認すると、どうしたものかなと悩み始める。突然倒れ込んでしまったので救急車を呼んだ、ということにしておくか。とりあえず119を呼び出して……


「あなた、何処の所属!? 」


 裏路地に突然声が響き渡る。そちらを振り返ると、スーツ姿の女性が拳銃を俺に向けて威嚇の体勢を取っていた。所属かあ……ここは会社名を答えておくのが無難かな。


「初めまして、株式会社山千商事営業二課の進藤と申します。名刺は……あいにく持ち合わせていませんで申し訳ありません」

「ふざけないで! あなたが何かしらの魔術を行使してその倒れている人物に何かしたのは見ていました。一体何をしたの!? 」


 見てたなら手伝ってくれればよかったのに。しかし、誤魔化すにも後はどうするべきか。


「いやあ、上司と飲みに行こうって誘われたらこっちに誘導されまして。そしたら急に襲ってきたので返り討ちに。これって正当防衛になりませんかね? 」


 できるだけ自分の内情は隠す。そして相手の正体を先に掴む。この手の腹の探り合いはそれなりに場数を踏んできたので自信はある。


「あくまでシラを切るつもりなのね。こっちは魔力感知であなたを随時監視しつつここまで追いかけてきたのよ。今更能力が使えないフリをしたってそうはいかないんだから! 」

「あのー、それって、今倒れてる角田部長のことなのでは? 」

「……」

「……」


 会話が止まる。女性はおもむろにポケットから何かのブローチを出すと、拳銃での威嚇を続けたままこちらに徐々に近づいてきた。同じ速度で徐々にムーンウォークで離れる俺。そして角田部長に向けてブローチを掲げると、ほのかにブローチが光る。


「……この人ね」

「でしょう? 」


 女性も納得してくれたようで、これで問題解決だな。


「では、そういうことで失礼します」

「待ちなさい」


 ダメだったよ。誤魔化し作戦失敗だ。


「仮に反応がこの倒れている人のことだったとしても、それならなおさらあなたの存在が不思議ね。魔に取りつかれた人間に襲われて無事でいるわけがない。それにさっきよりも反応が薄く……今消失したわ。魔を打ち払う能力がない限りこんな芸当できるはずがない。あなたは、何者なの」


 どうやら、こっちの世界にも魔物や魔獣、もしくはいわゆる異形の存在というものは確認されているらしい。だとしたら彼女は機密警察みたいなものなのだろうか。今一番関わりたくない相手でもあるな。


「ですから、山千商事の進藤と申します」

「まあ、調べればわかることだわ。ちょっと一緒に来てもらいます。後、そっちの男性は救急車を呼んで倒れてたことにしますから、それまではゆっ・く・り・お・は・な・し・し・ま・しょ・う・ね」


 すまんフィリス、帰りは相当遅くなりそうだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 救急車で運ばれるまでの間、話について出来るだけ手札を出さないように話すか、それとも全てを打ち明けて秘密仲間に引き込んでしまうかを考える。


「自己紹介がまだだったわね。私は鈴木恵。勿論偽名よ。警視庁公安部第六課所属の警部補、ということになっているわ」


 自分からそういうことになっている、と打ち明ける辺り、こっちが通常の人間でないということはもはや確定路線なのだろう。そこは諦めて話を通していくか。


「三度目の自己紹介になりますが、株式会社山千商事営業二課の進藤智明と申します。本名ですし所属も確かです。今そこで倒れているのは上司にあたります角田部長……下の名前しらないや」

「流石に嘘をついてるとは思ってないわ。ただ、あなた特殊能力を持ってるわね? さっきの反応を消失させるような、そういう能力」

「持ってる、と大人しく白状するほうが良さそうですね。確かに今朝から様子がおかしかったのでこっそり反応を確認して、飲みに誘われるふりをしながらここまで連れて来られて襲われるように仕向けたのも俺です」

「つまり、あなたにはそういうものを見分ける能力がある、と考えていいわけね」

「実際にはこういうアイテムがあってですね。魔の兆候を表すとこれが光りだすんですよ。あなたが持ってたブローチと同じようなものなのかもしれません。出どころは……説明しづらいからノーコメントで」


 異世界から持ち込んできました、なんて話なら今なら信じてもらえそうだが、そこまで話して信用のおける人物かどうかはまだ解らない。


「まあいいわ。こっちではありふれたものでもあるし、そういうアイテムがあっても不思議じゃないから。とりあえずハイこれ、私の名刺」


 名刺には警視庁公安部内事第六課 鈴木恵 と書かれていた。自分で偽名と名乗っていたことからも、本名は別にあるのだろうし、戸籍もさらに別の名前があるのだろう。この部署で働く上の肩書がこれ、ということなんだろうな。


「事情は分かりました。で、俺はどういう扱いになるんです? 」

「そうね、関係者ってわけじゃないから本来なら無罪放免さようなら……と行きたいところなんだけど、あなた、魔術の類は使えるのよね? 」

「まあ、今更隠しても仕方ないか……簡単な浄化の魔法なら使える」


 他にも色々と使えるし、アイテムボックスもあればその中身も色々あるし、火系統の魔術ならそこそこ使えることにはなるが黙っていよう。下手に風呂敷を広げ過ぎて危険人物だと認識される可能性もある。


 ここでどれだけ自分について認識されるのか、そしてどこまで懐の内を探られるのか。静かな中で救急車の音が遠くから鳴り響きながらこちらへ向かってくるのがわかる。どうやら角田部長を引き取りに来てくれたらしい。それに紛れて逃げる、という手段もあるが、ここはあちら側の手札もある程度見させてもらって、それから考えるのも悪くないな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
偽身分とはいえ警部補なのにポンコツ臭がするw
戸籍を簡単に作れそうな部署だからここで働くならそういった面で色々便宜を図ってくれそうだしこれで問題なく結婚できますね(笑)
ようやく出て来て、しかも別件だったということは勇者、聖女、魔王がこっちに転移してきた兆候を察知するような力は持ってない組織ということか どれぐらいの規模でそれ系の問題が発生するのかわからないけど、色々…
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