17:実質告白だがヘタレなので気づいていない
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食事が終わり、パソコンで探偵事務所を検索する。ついでに”婚姻届 国際結婚 必要書類 無国籍”等のワードで検索してみたが、どうも俺一人の手には余る印象のケースになるようだった。やはり、無国籍であることが問題らしい。
単純に戸籍がない場合だけならそれほど面倒ではないらしいが、無国籍で見るからに外国人である彼女の場合、それ以上の何かが求められるということだろう。これは弁護士か探偵事務所に相談しなければいけない案件だな。折を見て相談先を調べてみよう。
どうやら事実婚の状態に持ち込むことで婚姻という手続きを踏まずに実質的に暮らしていくことはできるらしい。そして、もしフィリスと俺の間に子供が出来た場合でも、俺自身に日本国籍があるため子供の国籍は保証することができるということまではわかった。
だが、俺が気にしているのはその先、フィリスが今後日本人として、いや外国人としてでも良い。この国できちんと生活していけるような帰る場所、つまりお日様の下を堂々と歩けるような身分にするためにはどうすればいいか、ということだ。
無国籍で無戸籍、どちらかしかないならまだ問題は少なくて済むが、そもそもこの国の上で存在しない国籍を持っているという場合、どういう手続きを踏んでいけば日本国籍を持たなくとも、日本の永住権を取得できるかどうかがまず第一段階だな。どういう言い訳をもってして戸籍も国籍もないことを立証するのか。
調べれば調べるほどに怪しい探偵事務所や弁護士への相談窓口へと誘導されていく。確かにそっちの方へ相談するのが最初なんだろうが、いきなり法務局へ行って相談する、というのは敷居が高いからな。
それに法務局は平日しかやっていない。ブラック社畜の俺にとってはそっちの問題のほうが大きいな。しかし、フィリスのために昼休みなんかを利用してちょこちょこと情報を集めることにしよう。その前に自分で知っておかなければならない情報も多々ある。
「何を熱心に調べているのですか? 」
風呂上がりのフィリスが画面をのぞき込む。
「どうした? 何か使うなら操作を変わるが」
「いえ……純粋に何をしてくれているのかなと気になりまして」
「ざっくり言うと、フィリスがこの国で生活をしていくために困らないようにするためにはどうすればいいか、というのを調べていた」
「わたくしのために……ですか」
「そうだ。基本的に、だが。この国に限らず世界にはどこの国の人で今どこに誰が住んでいて……という情報は全て管理されている。そして、この国の場合はどこのだれから生まれて……というのを遡って調べることもできる」
「なるほど」
「そんな中に国籍も戸籍もないフィリスがぽつんと異世界から来てしまった。つまり、今フィリスは無戸籍で無国籍でこの国に住んでていい、という許可証すらない状態なわけだ。それを解決するためには何が必要か今一生懸命調べているところだ。それに、それがなければ結婚もできないしな」
結婚、とうっかり口に出してしまったが、その言葉を聞いた途端にフィリスの風呂上がりの顔が更に赤くなっていく。
「私、勝手についてきてトモアキ様にご迷惑をかけてしまっていて、この先どうしようかと考えていました。でも、トモアキ様も同じように考えてくださっていたんですね……嬉しいです! 」
フィリスが抱き着いてくる。全身洗い立てのリンスの香りと女性特有の香りがまじりあって、それでいて控えめではあるものの柔らかな二つの物体が俺にあたっている。
フィリスを決してそういう目で見ていなかったわけではないし、こっちに来た時点でそういう関係になりえることも頭にはよぎっていたが、この抱き付きはヤバイ、俺も男だし本能的にアラームが緊急警報を鳴らし、砲台の仰角が上がっていく感覚がする。
フィリスの腕が俺の背中に回り、細い肩がわずかに震えてる。彼女の熱がワイシャツ越しに伝わってきて、俺の体温も勝手に上がっていく。
顔が熱い。いや、頭が沸騰しそうともいう、これ。フィリスの「トモアキ様……」って声、さっきの赤面した表情と相まって、なんかもう聖女のピュアさが逆に凶器になってる。こんなん、社畜の精神をもってしても、耐えられるわけねえだろ!
「え、っと、フィリス、ちょ、ちょっと、落ち着こう、な? 」
俺、声震えてるじゃん。情けねえ。両手を宙に浮かせたまま、抱き返すか離すかで脳内会議が大混乱。いや、抱き返すのはダメだろ、なんか誤解される! でも、離すのも冷たくね? フィリス、ただ嬉しかっただけなんだよな? 俺のこと信頼してくれて、こうやって抱き着いてきたんだよな? でも、でもさ、この柔らかい感触と香り、俺の理性がフリーズ寸前なんですけど!
「トモアキ様、私、ほんとに迷惑かけてて……でも、こうやって考えてくれて、ほんとに、ほんとに嬉しいんです……」
フィリスが顔を上げ、目を潤ませながら俺を見る。その瞳、競馬場の馬さんトークの時よりキラキラしてるじゃん。いや、待て、泣きそうになってる!? ダメだ、これ、俺が何か変なこと言ったらフィリス傷つくパターンだ。社畜地獄で角田部長に削られた精神力、こんなピュアな攻撃に耐えられるわけねえって!
「いや、迷惑なんかじゃないぞ、フィリス。ほんとだぞ」
とりあえず、頭を撫でてみる。うわ、髪サラサラ。リンスの香りがさらに濃くなって、俺の鼻腔がピンチだ。でもフィリスの肩が少しリラックスした気がする。よし、落ち着かせられたか? でも、俺の心臓、まだマラソン走ってるみたいにバクバクしてるんだけど。
「フィリス、お前がこの世界でちゃんと暮らせるように、俺、ちゃんと考えるから。戸籍とか、弁護士とか、面倒だけど絶対なんとかしてみせる」
やべ、なんかカッコつけたこと言っちゃった。社畜のくせに、こんなヒーローみたいなセリフ、俺に似合わねえだろ。けど、フィリスの目がさらにキラッと光って、頬がピンクに染まる。うわ、聖女の笑顔、反則だろ。
「トモアキ様、ありがとう……私、もっともっと頑張ります! 料理も、トモアキ様の家のこと、ちゃんとできるようになります! 」
フィリスがグッと拳を握って、なんか決意表明みたいになってる。いや、頑張るのはいいけど、抱き着いたままなの、気づいてくれ! 俺の理性、エクセルの応答なし状態から復帰できねえよ!
「ふーん、勇者、顔真っ赤じゃん! 聖女に抱きつかれてドキドキ? 」
ソファからカルミナのニヤニヤ声が飛んでくる。ゴスロリの裾を揺らし、ミニ羽根をパタパタさせて、ポテチをバリバリ。くそ、カルミナ、タイミング最悪だろ! こいつの煽り、いつも通りだけど、今はマジで心臓に悪いって!
「うるせえカルミナ! ポテチ食ってろ! 」
反射的にツッコむけど、声裏返ってるじゃん。カルミナが「ふふ、勇者、弱いね! 」と笑いながらこっちに向かってずっとニヤニヤしている。フィリスがハッとして俺から離れ、「あ、ご、ごめんなさい、トモアキ様! 」と顔を真っ赤にしながら後ずさる。いや、フィリス、謝らなくていいから! 俺、別に嫌じゃなかった、ってか、むしろヤバかった、って言えねえよ!
「いや、大丈夫、フィリス。ほんと、気にすんな」
なんとか平静を装って言うけど、俺の顔、もしかしたらフィリスより赤いだろ。フィリスが「は、はい……」とコクコク頷きながら、キッチンに逃げるように戻っていく。スウェットの背中がなんか小さく見えて、ちょっと罪悪感。俺、なんか冷たくしちゃったか?
まあ、一つ一つ調べていこう。解決方法はあるはずだからな。
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