14:アウトです、アウト
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二人のビギナーズラックに乗せて買ったおかげで、一万円ほど勝たせてもらった。電車の往復運賃分はこれで充分稼いだな。
「やった! 勝ちました! やはり私の目に狂いはありませんでした! 」
「フン、魔王の目を欺こうとしてもそうはいかないわ! 私の言ったとおりになったでしょ? 」
「あぁ、そうだな。これで今日のポテチは二袋食べていいことにしてやるぞ」
「本当に!? じゃあ次も当てるわよ! 次も当たったらポテチ四袋ね! 」
「その代わり、負けて帰ったらポテチはいつも通り一袋だぞ」
「ふふん、私の実力ならここから全部当てて帰るぐらい楽勝よ! 精々見てて悔しがると良いわ! 」
とりあえず予算を少し増やしてもいいということになり、次は500円まで賭けてもいいということにした。そのぐらいならあと三レースぐらいは楽しんで帰ることができるだろう。
「トモアキ様、馬が真剣に走ってる様子は素晴らしいですね! かわいいし、真剣なまなざしで走ってるのが解ります! 」
フィリスも賭け事はともかくとして、動物と触れ合えこそしなかったものの白熱した展開と周りの空気にあてられて楽しそうにしている。連れてきてよかったな。もう今日はそれで満足するぐらいでもいい。
さて。次のレースは……
◇◆◇◆◇◆◇
おかしい。実におかしい。全てのレースがカルミナの言うとおりのレース展開になっていて、今のところ四戦連続馬券で勝ち越している。ビギナーズラックにしてもいくら何でも勝ちすぎている。
もしかして、余計なことしてたりしないだろうな。カルミナにそれとなく聞いてみることにした。
「お前、何かずるしてないよな? 」
「ズルはしてないわ! ただ馬の言葉が伝わってくるからそれに見合っただけの補助をかけてあげているだけよ! 健康状態も良くなってポテチも一杯買えて今日は良い日だわ! 」
「それをズルっていうんじゃないのか? ばれないだろうから良いものの……馬の調子が急に上がったり悪くなったりさせてないだろうな? 」
「元々調子が悪い子はそのまま、調子がいい子は調子がいいように更に体を軽く感じるようにさせてあげてるだけよ」
アウト、はい、アウトです。この子確実に魔法使って馬を操ってます。しかし、ズルをしているという根拠をこの世界の住人に求めるのは不可能だ。これは……仕方ない、競馬はしばらく来ないことにして、今日はカルミナのストレス解消にも付き合っていると思って精々勝ちを貯めさせてもらうか。
「で、次はどれとどれに勝たせるつもりなんだ? 」
「そうね……7番と10番が調子良さそうね。三連複はちょっと買い目が怪しいわ。ズルして良いならもう一頭次に調子の良さそうな馬を見繕うけど……反対? 」
「今日だけだ、今日だけだからな。しばらく競馬場には来ないから精々俺の金を増やす手段を増やしておいてくれ」
「じゃあ1番の馬にするわね。この三頭に補助魔法をかけて……これでよし、この三連複に賭けておくといいわよ! 」
言われた順番の三連複……今のところ102.4倍だな。結構な穴馬券になるが、カルミナの言うとおりに500円賭けておいて様子を見よう。帰ってきたら五万円になるか。最終レースは一番盛り上がるところだろうが、ここはあまりいじらないほうが世の中のため……いやでも俺の財布と今後のポテチ代を自分で稼がせてると思えば……いやしかしなあ。
「わたし、次は7番が来ると思います。ここは7番単勝で行きます! 」
俺の悩みをよそに、フィリスは次の賭け馬を決めたようだ。単勝7番……オッズは6.8倍。このぐらいなら勝っても不思議はないだろう。安心して見守っていられる。馬券の買い方を覚えたフィリスが自力で馬券を買い求めに行って、勝ち馬投票券を握りしめると、ターフに近いところへトトトっと走っていった。カルミナの指示通りに馬券を買っておくと、フィリスに続く。
ターフに出た馬を見て、フィリスは見た目では遠くなったが距離としては近くなった馬に大興奮。周りをよく見ると結構若い人もいるので、競馬人気が若年化しているのかもしれないな。
◇◆◇◆◇◆◇
「よし、今日の晩御飯はすき焼きにするか。良い肉が食べられるしおかずも贅沢にできる。久々のすき焼きだな……楽しみだ」
「すき焼き……とは美味しいのですか? 」
「ウマいぞ。帰りに食材買って帰るから、いつものスーパーに寄ろう。ポテチもちゃんと買うから安心しろよ」「当り前よね! 私のおかげで勝てたんだから! 」
しっかりと大勝ちさせてもらった今日、帰りにスーパーへ寄っていくことになった。もちろん、功労者であるカルミナのポテチを買うためでもあるが、今夜は美味いものを一杯食べて英気を養おうということになった。
ポテチ大量と伝えて元気いっぱいのカルミナはさておき、曲がらなくなった財布をポンポンと叩きながら帰りの電車の切符を買って二人に渡す。流石にICカードを買ってまでここまで通うこともないだろうし、見た目完全に未成年であるカルミナは一人で競馬場には入れない。
フィリスも一人で来るにはちょっと勇気がいる所だろうし、またスッキリ勝ちたくなったら三人で来ることにしよう。
帰りの電車、フィリスは興奮しすぎて疲れていたようで、俺に向かってもたれかかってきた。同じシャンプーとリンスを使っているはずだが、すごくいい匂いがする。どうして女性の髪の臭いは夕方まで香りを保っていられるんだろう。そんなことを考えながら帰りの電車でゆっくりとした時間を過ごす。
何事もなく電車を降り、家に帰る前にスーパーで買い物。カートを押してすき焼きに必要な品物を買いそろえていく。そしてすき焼きの買い物よりも多く積まれていくポテチの袋。
「フィリスも何かこんなものが欲しい、とかがあったら買って帰ってもいいからな。好きなものを探してくると良い」
「そうですね……果物が何か食べたいです。甘酸っぱいものが良いですね」
「ならブルーベリーあたりが良いかな……この辺でどうだ、流石に売り物だから味見は出来ないがご希望に添えると思うぞ」
「ではそれをお願いします。後は……私もポテチを一つ買ってきていいですか? 」
身長差もあって下から目線でちょっと気恥しそうにしているフィリスにドキッとしてしまう。
「ああ、好きな味を選んで買ってくるといい。今日は懐を気にしなくていいからな。でも、カルミナよりいっぱい買ってくるのはなしだぞ」
「……はい! 」
どうやらカルミナと一緒にポテチを食べるのも家の中での楽しみの一つになっているらしい。家の中に一日中いるのではストレスも感じるだろうから、ストレスの解消につながってくれれば何よりだ。
そしてどんどん増えてくるポテチ。籠一杯になったところでカルミナに打ち止めを宣言する。
「もうこれ以上はダメだ、荷物になるし流石に多すぎる」
「そうね、また買いに来ればいいわけだし今日のところはこのぐらいで勘弁してあげるわ! 」
ポテチばかり食べている人、として認識されないかどうか心配だ。頻繁に使う店でもあるし、悩ましいところだがこれも世の中の平和を保つためとして必要経費として出そう。
一通り買い物を済ませて帰り道、両手に荷物を抱えながら家に帰ってきた。今日の競馬の勝利を祝って、すき焼きパーティーだ。牛肉、豆腐、白滝、白菜、ネギは定番として、カルミナが「キノコ、魔王の森っぽい! 」と騒いだしいたけとえのき、フィリスが「この緑色はなんだか癒されますね! 」と選んだ春菊、俺が「栄養取っとけ」と突っ込んだ人参、締め用のうどん、
そんでもって生卵。給料日前の財布には痛い出費だが、今日の勝ち分で給料一ヶ月分近くの収入があったので何の問題もない。
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