13:競馬
ダンジョンで潮干狩りを
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マツさんのゲル
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ダンジョンで潮干狩りを
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やっと訪れた土曜日の朝。角田部長の資料地獄でヘトヘトの俺にとって、休日はまじで命の水だ。ソファでコーヒーをすすりながら、今日はネット配信でも見てダラダラするぞ……なんて思ってたら、フィリスがキッチンからキラキラした目でこっちを見てる。
「トモアキ様、この世界、動物ってあんまり見ないですよね……私、馬が見たいです! 異世界ではユニコーンに乗ったことがあって、馬ってとっても気高くて可愛いんです! 」
フィリスが両手を握り、聖女のピュアオーラ全開。う、眩しい。確かに、このアパートの周りじゃ、野良猫すらレアだ。馬なんて夢のまた夢だな。
動物か……動物と言えば動物園だが、いきなりそこに連れていくのはハードルが高いし目立つな。そして馬が見たいと言い出すフィリスにとっていい場所……馬……競馬……
「馬が見られるところならあるぞ。流石に触ったり近寄ったりは出来ないが、馬が競い合う所を見れる場所がある。今日はそこへ出かけることにするか。アイテムボックスの中身の検査はまた明日徐々にやっていくとしてフィリスも一週間家の中にいて気晴らしもできなかっただろうし、外の空気を存分に吸うのは必要だ」
「馬が見られるのですか! ぜひ行きたいです! 」
俺もたまには賭け事に興じるのもいいだろう。勝っても負けても問題ないぐらいの金額でなら賭け事をするのも悪くない。久しぶりに行くか、競馬場。土日開催のそこそこ大きいレースをやっているはずだ。人も多いし、それだけ人が多ければフィリスの見た目でもそう目立つことはないだろうな。
「トモアキ様とお出かけ~♪ 」
暢気そうに鼻歌を歌いながらどの服を着ていくか選んでいるようだ。競馬場には食べられるところもあるし、今日の飯の支度はしなくていいというのもフィリスに負担をかけなくてなおいいだろう。
「あたしは? まさか置いてきぼりにするんじゃないでしょうね? 」
カルミナが不満そうにブーブー苦情を入れてくる。
「魔法で姿を消せるんだろ? そのままの状態で出来るだけ喋らずについてこれるなら構わんぞ」
「やったっ、そこにポテチ売ってる? 」
「賭けに勝てば今日は二袋買ってもいいぞ」
「じゃあ私も賭け……元金がなかったわ、勇者、出世払いでいくらか貸しなさい。何倍にもして返してやるわ」
一応幼女という設定なので馬券を買うことは出来ないが、アドバイスをされることについては問題はないな。
フィリスが着替え終わったところでカルミナに透明化してもらい、そのまま電車で出かけることにした。フィリスはあらかじめ電車の乗り方を覚えておいてもらったので、改札にびっくりすることはあるだろうが問題なく電車には乗れるだろう。さて、俺も仕事の気晴らしに行きますか。
家を出たところで佐藤さんと鉢合わせ。
「あら進藤さん、お出かけ? 」
「ちょっと競馬場まで行ってきますよ。彼女が馬を見たいそうなので」
「どうも、おはようございます」
フィリスはきちんと挨拶をしている。佐藤さんにはこっちへ来て三日目ぐらいにフィリスの姿を目撃されてしまい、どんな関係なのか、どこから来たのか等を詳細に聞きかじられたところだが、とりあえずフィンランド出身であるということと、語学と日本について勉強をしに来ている、女性だとは出会うまで知らなかったという言い含めをしてあるので、フィリスの正体はもうご近所さんに触れ回られていると考えていい。
佐藤さんもお辞儀を返すと、そのまま立ち去っていった。きっと、後でご近所様に仲良く競馬へ行ったとか、競馬で稼いだらそのまま何処かへしっぽり行くんじゃないかしらとか余計なことばかり吹き込みに行くんだろう。もうフィリスの事は諦めよう。カルミナの事がバレるよりは数千倍マシなはずだ。
◇◆◇◆◇◆◇
「人が一杯で馬が見えません……」
「そうか、今日は重賞の開催日だったか……道理で予想以上に混んでるはずだ」
普段ならここまで混まないが今日は重賞のレースを行う日だった。道理で朝から人が居るわけだ。途中で競馬新聞を買ってくるときによく読んでおくべきだった。
「トモアキ様、皆さまはなにやらかちうまとうひょうけん? というものを買っているそうですがこれは何ですか? 」
「それはな、一着二着三着を当てる賭けだ。色々賭け方はあるんだが試しにやってみるか? 」
「聖女時代にはそういう物事は穢れとして扱われていましたが、今は私ももう聖女ではありませんし一つやってみるのもおもしろいかもしれませんね! 」
「ビギナーズラックってのもあるらしいからな。まずはパドックを見よう。これから出走する馬の様子を一覧できるぞ」
パドックの真正面に行くことは難しいので建物内にあるモニタからパドックの様子を眺めることになった。久しぶりの競馬だからな……馬の状態は五年間向こうで生活をしていく間に多少は覚えたが、競馬となると話は別だ。ゆっくり順番に観覧させつつあるパドックを見て賭けの内容を決める。
「6番と3番と4番ね。さんれんぷく? って奴なら当たると思うわよ! 3頭の順番までは解らないけどね! 」
見えないカルミナから早速馬券の注文が飛んできた。
「トモアキ様、わたくしも3番がよく走ると思います。他の馬とは気合の入り方が違う気がします」
二人とも3番推しらしい。
「1着から3着までに入るなら当たる馬券と、1着を当てる馬券があるんだがどっちにするんだ? 」
「えっと……そう言われると自信がないので、1着から3着のほうでお願いします」
複勝3番と三連複346……と。ここはカルミナの勘が本当にあたるかどうかも含めて、三連単ボックスで346で買っておこう。最初のレースだしいきなり大金を賭けるのも悪いからそれぞれポテチ一袋分ぐらい、200円ずつだな。
「まあ、久々に来て初戦で的中して大勝ち、なんてことはないしな。単勝も2倍、複勝も1.5倍、三連複が来ても1220円だ。三連単は……結構返ってくるな、4360円か。とりあえずこれで様子見だな。
「さあ、ゲートオープン! 7頭が一斉にスタート! 3番サンダーボルトが抜群の出脚でハナに立つ! 4番ゴールデンストームも内からスッと2番手に! 1番シルバーブレイズと2番クリムゾンウインドがその後ろで競り合う! 6番ムーンライトは中団後方、7番ブルーサファイアと5番アイアンホークは後方待機策!
1コーナー通過! 3番サンダーボルトが先頭をキープ、半馬身差で4番ゴールデンストームが追う! 2番クリムゾンウインドが3番手、1番シルバーブレイズが内を突くもやや窮屈! 6番ムーンライトは外目でじっくり脚を溜める! 5番アイアンホークはまだ後方、7番ブルーサファイアも動かず我慢の展開! 」
競馬の実況が徐々に熱くなっていく。馬券を握りしめる手もそれに伴い徐々に熱を帯びてくる。本当にその通りの着順なら今日の帰りはポテチ3袋ぐらいは奢ってやることにしよう。
「バックストレッチ、残り800メートル! 3番サンダーボルトがペースを上げる! 4番ゴールデンストームがピタリとマーク、鞍上の手応えが良い! 2番クリムゾンウインドがやや遅れ始め、1番シルバーブレイズが内から粘る! ここで6番ムーンライトが外から上昇開始! 5番アイアンホークもじわじわ進出、7番ブルーサファイアはまだ後方で様子見! 」
さあ、競馬が面白くなるのはここからだぞ。他の馬を気にしつつも、買った馬券の馬の動きに視線が集中するのは仕方がないことだ。番号通りに来てくれるか、さあどうだ!
「最終コーナー! 4番ゴールデンストームが3番サンダーボルトに並びかける! ゴールデンストーム、抜けた! 3番サンダーボルトも必死に食らいつく! 6番ムーンライトが大外から一気の追い込み! 1番シルバーブレイズは内から伸びるも届かず! 2番クリムゾンウインドは失速、5番アイアンホークと7番ブルーサファイアも差を詰めるが前には届かない! ゴール前100メートル! 4番ゴールデンストームが突き放す! 3番サンダーボルトが2番手死守! 6番ムーンライトが一気に3番手に! ゴール! 1着は4番ゴールデンストーム! 2着に3番サンダーボルト、3着に6番ムーンライト! 4着以降は1番シルバーブレイズ、5番アイアンホーク! 」
436で三連複と三連単ボックスで買った分、それとフィリスの複勝が当たった。つまりほぼ全勝ちだ。
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