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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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120/120

120:送検、そして事件終息

 竜円寺の身柄を検察庁に送検する日がやってきた。ずっと警視庁に身柄を拘束されているという情報はネットにも出回っており、本人がそこそこの知名度を誇っているからか、出待ちのテレビ局や報道が少し人だかりを作っていた様子だ。


 竜円寺を乗せた車が発車していくと、外でカメラの撮影する音やアナウンサーが収録を始めたような音が聞こえてくる。どうやら一度消防で表彰されたりネットでそこそこ有名人であった影響は大きかったようだ。


 山火事を消して治安向上に貢献した人がなぜこのような乱闘騒ぎを起こしたのか、という点については今でもまだ深くは語られていない様子で、あくまでネットの有名人が本当に異能力者であったのか、それとも違う理由で異能力者を語っていただけなのではないか、これは宗教集団が起こした新しいテロが勃発しそうだったのではないか、など色々と意見は分かれている。


 しかし、おおやけに異能力者は存在し、その対策をするための専用の部署が存在する、という話が出てきていない以上、いかに証拠を持ち出しても説き伏せることはできないだろう。


 ネットに流出した竜円寺と俺のバトル動画だが、表面上は無事に削除申請がとおり動画は次々にアップされては消されてを繰り返している。しばらくはケストフエールという現象によっていたちごっこが続くだろうが、その内沈静化するだろう。


 この話がもう一度表面化するとすれば実際に起訴されて裁判になったころかな。そうなると、時間もかかるしその頃にはみんなも新しいコンテンツにのめり込みだして忘れている可能性のほうが高い。そもそも、異能力の有無ではなく騒乱罪として裁かれていく話になるだろうから、存在しないと言われている異能力についての有無やそれにまつわる話は裁判では出てこないだろう。


「やっと終わりましたね」


 移送する車両を見送りながらフィリスがそっとつぶやく。


「まあ、また次の事件が来るだろうからな。今回はそこそこ長丁場の事件だったと言えるな。普段ならその場で逮捕してすぐ送検して終わりか、カルミナに異能力を封印させたところで一般犯罪として裁くのが最近の傾向だったから、ちょっと特殊な例であるとは言えるな」


 近藤さんがコーヒーを奢ってくれた。勿論いつものブラックだ。しかし、今日は暖かさが伴ってくれている。これでアイスコーヒーだったら逆に投げ返したもいいところだが、多分火魔法でほどほどに温めてから飲んでたことだろう。


「進藤としては気になるのか? 竜円寺の今後は」

「今後、というより動機のほうでしょうね。ほぼ同じ立ち位置からスタートして、何故あっちは仲間を増やす方面へ行き、俺はこうして公僕として仕事をするようになったのか。考えることは色々ありますし、もしかしたら知らないだけで帰還勇者はもっと大勢いるのかもしれません。彼のケースを参考にして、色々と対策を立てる必要はあるでしょうし、もしかしたら久我警部がしっかり書き写していったリストの中には元勇者が立ち上げた組織もあるのかもしれません。勇者の強さによっては俺が出荷されることもあるかもしれない、というところでしょうね」


 コーヒーを飲みながら考える。自分が公僕だからといって他の異能力者相手に手を抜くことはしないだろうが、どうしてそっちの方向に走ってしまったのか、というのは常に頭に置いておくべき情報だと考えている。


 フィリスがコーヒーを一気に飲み干すと、缶を洗ってビンカンのゴミ箱に放り込み、珍しくやる気がありそうな姿勢でもって宣言する。


「さあ、いつもの仕事に戻りましょう。これで事件はいったん解決、私たちの手は離れた、そうですよね? 」

「まあ、そういうことになるな。まだ検察から証拠を出せとか書類をよこせとか言われる可能性はあるが、実務的な面では終わったと言っていいな」


 近藤さんもコーヒーを飲み終えると、そのままビンカンのゴミ箱にポイ。普段きちんと洗って捨てているかどうかの癖がこの二人で対照的になる。家では基本的に捨てるものは生ごみ以外洗っているからそれもあるのだろう。


「じゃあ、いつもの外勤に向かいましょう。気持ちを切り替えて新しいお仕事に取り掛かりませんと、いつまでも考えててもしょうがないですからね」


 フィリスが前向きにこういう言い方をする時は、大体俺が落ち込んでいるように見える時のサイン……だったような気がする。同じ元勇者という立場の者が罪を犯したということで、俺にもちょっと心理的に同情心みたいなものが芽生えているように見えたのだろう。


「そうだな、行くか外勤。久々に三人で回ろう」

「お、カルミナは置いていっていいのか? 」

「あいつはあいつで何かしらやってるはずだし、暇なら今の状態のスペックを楽しめるように時間を置いてやらないとな。少ししたらまたフィリスが強制浄化して体を小さくする予定だから、今のうちぐらい大きな体と膨大な魔力を味わう時間も必要だろうと思う」


 また小さくされてしまうことが確定しているカルミナだが、このまま巨大化してまた完全体魔王になられても居場所に困るしな。それに何より、あの圧力は何の能力も持たない一般市民すら恐れさせてしまうほどのものだ。


「そういえばその仕事を忘れてましたが……まあ、今日一日ぐらいは大目に見ておきましょう」


 やろうと思えば家でもできる作業なんだ。ただ騒がしくなる可能性があるので出来れば署内でやりたいところだが……訓練所で皆の前で浄化して見せて、今回は出来るだけゆっくり確実に小さくしていくことにしよう。もうずいぶん魔力も貯まってるはずだし、一度若返らせてやらねばならん。


「行きましょう、フィリス、近藤さん。今回は……山手線をひたすら回りますか」

「ということは民間人からの直接の瘴気払いだな」

「車両ごと浄化すれば多少スッキリしますかね。乗る車両で別れてグルグル回って、一時間後に同じ駅で再集合ということでいいですか? 」

「それでいいと思う。まずは有楽町駅までまとまって行ってそれからだな」

「よし、じゃあ早速出かけるか」


 三人外勤の札と外出予定表を書いて内村課長の机の上に提出、内村課長は丁度部署にいなかったのでそのまま三人でかける。


 もうすぐ春が来る。向こうの世界へ旅立って、五年かけて勇者をして、そしてこっちに帰ってきて約一年経つことになる。俺も実年齢は三十一にかかるところではある。


 もう俺もオッサンに足を突っ込み始めたってところだろう。オッサン良い歳なんだから……と十代の若者からは揶揄される年齢ではある。後四年頑張ればフィリスと公的に結婚できる身分になるし、後二年一緒に生活をすれば法律上内縁の妻とみなされる年月になる。それまでこの部署で働いているかどうかもわからないが、天職かもしれないと思い始めた。


 今後は似たような違うケースを処理しつつ、毎日を過ごすことになるだろう。また竜円寺のような人物が出てくるかどうかまではわからないが、今回はいい教訓になった。異世界から帰還できたからと言って、元の生活に馴染めるかどうかは人それぞれだ、ということだ。


 もしかすると無意識に力を使って生活している……というケースもあり得るが、あえて力を使ってこの世界で楽して生きていく道を選ぶ者もいるかもしれないな。その場合は大きな現実との齟齬がない限りは問題なくスルーされていくんだろう。


 異世界から帰還してきた勇者がそんなに量産されているとは思っていないが、ここに一人、少なくとも治安をよくする方面で活躍する人間がいるんだぞ、という点については人に聞かれない程度に心の中で大きく叫んでおこう。








 異世界の勇者たちよ、ここにも仲間はいるぞ。

ここまでありがとうございました。続きが思いついて書きたくなったらまた話を続けるかもしれませんが、このお話はここまでです。お読みいただきありがとうございました。




作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます! 同じ様な境遇でしたが選んだ道はかなり違っちゃいましたねー 勇者、とは限らずとも異世界からの帰還者なんかはもっと居たりするのかなー 3人の今後の関係性なんかも含めて想像捗り…
完結お疲れ様でした!
完結ありがとうございます あれもこれもよく連載できると感心してました 外伝的にカルミナちゃん主軸の話とかも読んでみたかったです お疲れ様でしたー
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