115:経過報告
チャーハンを三人で食べながら、俺が帰った後の話について教えてもらうことになった。まず、竜円寺だがカルミナがある程度魔力を吸いだしたのと、俺との戦いで使い切った魔力を補給するまでは大人しくしているだろうということなので、手錠を手足に8個付けた状態で第六課の取り調べを明日行う、ということになったようだ。
元勇者同士ということで俺も立ち会う必要があるらしい。俺から情報を聞き出す方が何かと都合が良さそうだし、戦った相手ということでそれなりに殺し合った相手との親近感的なものが湧くのではないか? という判断らしいが、第二ラウンドが始まる可能性を考えてのことだろう。
今のところ、異能力を引きはがした構成員については公務執行妨害ということでまとめて留置されているらしい。いずれ罪状は検察へ送検する時に決めるらしいがそれまでは拘留期間ギリギリまで引き留めての在宅起訴、となる可能性が高いんじゃないかという話。
「じゃあ、元構成員異能力者現一般人についてはあまり大きな罪にはならない様子なのか」
「まあ、公務執行妨害だけ、ということでとどめようという話ではあります。軽い気持ちで乗ったとはいえ、異能力者化した人たちについてはそれでいいということになりそうです。問題はその続きでして」
現場にいた非戦闘員についても事情聴取が行われ、その中で簡易的に手錠をかけたところで喜んだ女の子が居たそうだ。なんでも、遠くの小さな音を身近に聞こえてしまう異能力が生まれつき備わっていたそうで、そのせいで聞きたくないことや知りたくなかった話を聞いてしまうのがストレスになっていたらしい。
手錠をかけたとたんその能力がなくなったということで彼女は喜んで、出来ることならこの能力も消し去ることはできませんか? と逆に捜査員に詰め寄るほどのことだったらしい。
竜円寺がそういう人物も引き寄せていたというのは以外ではなかったが、自ら喜んで能力を封じられに来る、というのは予想外だったらしく、カルミナが能力を封印すると、素直に竜円寺の身の回りのことについて話し始めたので、彼女は情状酌量の余地があるとして不起訴になる可能性もあるという。
「ふむ……非戦闘員の中には、金貨を増やした実行犯がいたはずだな? その人については目星は付いてるんだろうか」
「それも判明しています。その実際に増やした異能力者を罪に問うなら、そそのかしたのは自分だから共同正犯か、それとも私が教唆したとのことで何とかしてほしいと言い出したのもその子でした」
「目の前で試してもらったけど、本当に複製してるのよね。しかも、魔力感知が出来なければ本物とは区別がつかない……つまり、両方が本物になってしまう能力。デメリットは非常に大量のカロリーを消費することらしいけど、ポテチ食べながらポテチを増殖したらどうなるのか実験してほしいところではあるわよね」
その場合、ポテチのカロリーのほうが多いのか、それともポテチ増殖に使うカロリーのほうが多いのか。実験は確かに気になるが、その前にそんな危ない能力は封印してしまうほうが良い気がする。まだ封印はしてないそうなので、明日どうするかを考えてから決めるそうだが、十中八九封印させる方向性で話は通るだろう。
「とりあえず、一般への被害はどうなったんだろう? ニュースか何かでやってるかな」
「水道管が破裂して地面が歪んだ、ということになってるそうですよ」
「それは業者を納得させるのも大変そうだな。実際水道管やガス管なんかが埋まってたら大変な話だろうし、早めの修復を願っておくか。それだけで済んだのはフィリスの結界のおかげだな」
なでりなでりと頭をなでてやると、気持ちよさそうにしつつ首筋がくすぐったいようにしている。かわいい。
「さて、カルミナ、その姿だが……どうする? 明日やるか今日のうちにやっとくか、どっちにしようね」
「まとめてやるなら明日、こまごまとやるなら今日できるだけ浄化させておくのがいいんじゃないかしら。あたしとしては是非痛くないほうで頼みたいわね」
実際はどんな痛みなんだろう? 参考までに聞いておこうかな。
「魔力を強制浄化させられるとどんな痛みが走るんだ? 」
「皮膚から直接頭蓋骨を引き抜かれるような痛みだった気がするわ。次やる時は麻酔が欲しいところね」
聞くだけで痛そうだ。明日まとめてやるほうが一回で済む分楽かもしれないな。
「とりあえず事務仕事の山場は明日になりそうだな。今日半日休めただけでもありがたいと考えるべきか、この後しばらくはゆっくり出来そうだから今日を含めて山場と考えるべきか……まあ、なににせよ二人ともお疲れ様」
「トモアキ様こそ、戦闘お疲れ様でした。私も戦闘に参加しても良かったのですが、自分で決着をつけられて満足ですか? 」
満足……か。謎はまだ残ったままだ。はっきりとした竜円寺の事情や異能力者を増加させることにした意思決定のプロセス、どんな出会いや理由があって組織を拡大したのか、最終的に何をさせたかったのか。それらを明日聞き取ることになるのだろう。
そのあたりは内村課長のほうでも考えていたらしく、あらかじめ聞き取りする内容リストを用意してフィリスに持たせてくれていた。早速リストを眺めて明日どういうベクトルから聴取を始めるのかを事前確認しておく。カルミナに勇者の力を封印できるかどうかを試す項目もあるようだ。その気になれば脱獄は簡単、と思われてしまうのは危ないからな、そこも大事なポイント、ということだろう。
リストを眺めていると内村課長から連絡が直接入ってきた。
「はい、進藤です」
「内村だ、今ネットを見れる環境にあるか? 」
どうやら緊急案件らしい。パソコンの前に移動して一番楽で高速にネットを見れる姿勢をとる。
「ネットに何かありましたか? 」
「竜円寺との戦闘中の映像が流出してしまっている。削除申請はしたので削除は間もなく行われるはずだが、その間に動画をみた何百人かは内事六課のことを知ってしまったことになるな。異世界の魔法やこっちのせかいの異能力に関しても、だ。また京都から怒られる可能性があるので念のため伝えておこうと思ってな」
京都から怒られるということは、また久我警部が来るってことだろうか。相手にするの面倒だな。今度来る時はお土産に生八つ橋でも持ってきてくれないだろうか。俺は生のほうが好きなんだ。
「覚悟はしておけ、ということと明日の取り調べでどれだけ情報が引き出せるかと、もしかしたら京都の担当者も竜円寺の取り調べに同席する可能性があるってことですか」
「可能性はある。まったく面倒なことだけどな。明日取り調べがあるのと、関係者でもあり動画の主役でもある進藤にも早めに伝えておいたほうがいいと思って連絡を入れた。動画のほうは消えてるか? 」
送られてきたアドレスをパソコンで確認するが、まだ現在進行形で動画は再生されており、一万人ぐらいが再生したことになっている。
「まだ消えてませんね。もしかすると竜円寺が画面内にいるってことで、これも異能力者の仕事ってことで動画の削除が遅れているのかもしれません。どっちにしろまだまだ時間はかかりそうですね」
「そうか……消えるまでにどれだけの時間がかかるかわからないが、内事六課のことが公の身分として開示されることまで考えておいたほうがいいか」
異能力者対策専門部署がある。その噂だけ一人歩きしてくれるならまた別だが、入りたいとか言われるとそれはそれで面倒になるのは確かだ。すべては明日か。流石に明日中に京都から人が送られてくることはないだろうし、京都が来るまでに竜円寺を無力化できればそれはそれであり、ということにはならないだろうか。
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