114:一事件が終わり
公安の別の課による一斉捜査が始まり、ビルの中にいた構成員は一通り調べられ、連行もしくは任意同行を求めることになった。竜円寺が負けたことにより戦意を喪失したのか、またはこんなことになるとは思わなかったと言うものもいてさしたる抵抗もなく大人しくしている者のほうが多かった。
最初にこちらの姿を見つけた女の子も無事保護ということになった。どうやら彼女は戦闘員ではなくどちらかというと内勤のような形で関与しており、手錠をかけられることもなく大人しく従っていった。それ以外には女性も数名いたが、女性の中には確実な抵抗を見せたものもいたため、その際は公務執行妨害ということで手錠をかけられ無理矢理護送車に乗せられていくこととなった。
表で戦闘になっていた構成員も、竜円寺が負けたことにより自分たちの敗北を悟り、おとなしい姿で護送車に積み込まれていく。全部で三十名ほどいただろうか。その間、流石にガス欠を起こしそうになっていた俺に魔力を注入してくれたカルミナにはちょっとしたありがたさがあった。
「その辺で吸い上げた魔力なんだし、まだまだ私の魔力には余裕があるからこのぐらい楽勝よ。それより、良いの? こんな形で終わりにして。どっちが本当に強かったかとか気にならなかったの? 」
「うーん、気にならないと言えばうそになるが、仕事が優先だからな。今回はこちらのペースで終始動いてもらった形になるし、離れた距離からヨーイドンして何もないところで本気を出してたらもしかしたら負けていたかもしれないしな。俺が相手をする以上負けるという選択肢は選べなかったわけだが、竜円寺がどうやって異能力者を増やしていたのかはこれからの取り調べで明らかになるんじゃないかな」
たしかに、今のところ竜円寺がどうやって異能力者を開拓、または増員していたかに関しては情報を仕入れてなかったな。戦ってる最中の雑談に挟みこめばよかったか。そこはまあ、いずれ聴取に付き合ってもらうときに教えてもらうことにするか。今はただ、疲れたな。
「進藤お疲れ。今日はもう撤収と同時に帰ってもらっていいぞ。全力は出せたか? 」
指示し終わった内村課長がこちらへ来ていた。片手に缶コーヒーを持っていたのでありがたく頂戴する。もちろん、ブラックだった。
「部分的には全力でしたよ。流石勇者ってところでしたね」
「一応撮影はしてもらってあるからな。後で上映会を開いて進藤の雄姿をみんなでみてもらうことにしよう」
「止めてください恥ずかしいから。それより、竜円寺の資金源については聞き取りが出来ましたが、肝心のどうやって異能力者を増やしていたかについてはまだはっきりとした情報を得ていません。早めに聴取してどういう理屈でどういう技能で、どうやって構成員を増加させていたのかを探るべきですね」
今のうちに報連相。戦闘中に得られた情報をきっちりと報告しておく。
「どうやら資金源になっていた金貨は物理的に増殖をさせられる異能力者が居たようです。非戦闘員の中に混じっていると思いますので、そっちを重点的に取り調べるべきでしょう。もしもノーマークで自宅に帰らせて、その間に身を隠されると厄介な能力ですので、早めにカルミナに封印を施してもらう必要があると思います」
「わかった。その辺はこちらで対応しよう。カルミナは……また成長してるのかあいつ」
カルミナはさらに身長が伸び、高校生ぐらいの背丈にまで成長していた。立派なレディと言っても過言ではないだろう。ちんちくりんのままのほうが色々と話しやすいし都合がよかったが、ここまで育つとなるとやはり、カルミナに一部屋与えて正解だったな。もうしばらくだけその体の大きさで生活を維持してもらうことにしよう。
「竜円寺さん、傷は治りました。ですが念のためですので手錠を厳重にかけさせていただきます」
「私の力で異能力を吸い切れるかしらねえ。かなりの濃度みたいだけど」
カルミナとフィリスが竜円寺に手錠を何重にもかけながら移動させている。組織の首謀者ということで、護送車ではなくパトカーに乗せて署まで連行するらしい。重要人物だからこその扱いだと言えよう。
人払いの結界も効果が消え、徐々に何事があったんだ、と顔を出す者も出始めた。そろそろ撤収しないといけないな。
「じゃあ、俺は先に帰りますよ。残りのことは頼みます。流石に疲れました」
「おう、帰ってしっかり休め。多分明日から取り調べが始まるだろうから、出来るだけ同席してくれるように頼むぞ」
内村課長の許可も出たことだし、一足先に帰って優雅な平日の休日を楽しむことにしよう。フィリスとカルミナはそのまま後処理をしていつも通り仕事をしてから帰るらしい。夕食の準備は俺がしておくか。何がいいだろうな……冷めても食べれるチャーハンを作り置きしておいて、先に食べるなり後で皆で食べるなり対応できるようにしておこう。
◇◆◇◆◇◆◇
家に着くと、一気に疲れが押し寄せた。これはまずは寝るべきだな。シャワーを浴びて汗を洗い流して着替えると、大き目のベッドに一人ダイブして仮眠をとる。起きたら夕食を作ってレンジに入れておこう。それまでの間ぐらいは平和でいてくれるだろう。
三時間ほど仮眠をとった後で三人分の夕食を作り、ラップを巻いてレンジに入れておく。まだ魔力が回復しきっていないので結構なダメージが入っているのを自覚する。さすがに久しぶりとはいえ、ほぼ全力で気を使った戦闘は久しぶりだった。
中々神経をすり減らしたが、楽しかったか? と問われればイエスと言いかねない辺り、まだ向こうの生活の名残が残っているところなんだろう。戦闘が楽しいというのは戦い慣れた戦士の言い草であり、サラリーマンや官公庁に務めるような人間が発して良い言葉ではない。
ふぅ……ちょっと水分摂って落ち着くか。ひねってすぐ出てくるそれなりに美味しい水が飲めるのもこっちでは便利な証拠。実際は水魔法で生み出すこともできるが、水魔法で生成される水はあんまり美味しくない。ミネラル分が入っていない分味がしないので、やはり水道水のほうがまだマシと言えるだろう。
フィリスたちが帰ってくるのを待ちつつボーっとテレビを見ていると、玄関で音がする。帰ってきたかな? 二人を出迎えに玄関まで行くと、フィリスもカルミナも帰ってきたところだった。
「おかえり。先に帰って悪かったな」
「ただいまです。お疲れでしょうし、その様子だと仮眠もとられたようで多少は楽になりましたか? 」
「帰ったわよ! 今日は大漁ね! 」
カルミナは両手にポテチを入れた袋を抱えての帰宅である。そういえば一人倒すにつき一袋って約束だったな。嬉しそうに帰ってくると、まず夕食を三人で取ることにする。早速ポテチの袋を開けようとしていたカルミナを捕まえると、ポテチは後と念押ししておく。
「ポテチは私にとってのご飯よ! チャーハンに割ってかけて食べると美味しいんだから! 」
「はいはい、それでもポテチは後だ。せっかく作ったんだから普通に食べてくれよ」
「しょうがないわね……と、今朝と目線が合わないからどこに目を合わせればいいかちょっと困りものね」
カルミナは現地で大量の魔力を補充したらしく、更に成長していた。娘にしては少々育ちすぎた見た目と、フィリスが悔しがりそうな胸の大きさを保持している。まじまじとカルミナを観察していると、フィリスに頬を軽くつねられる。
「カルミナとはいえ他の女性をじろじろと見るのはあまりお行儀がよくないですよ、特に私の前でなんて」
「これは後で小さくする儀式が必要だなと観察してただけだよ。カルミナもそのままでは色々と不都合だろうしな」
「確かに、この姿だとお腹がすぐ空くのよね。ポテチも一袋じゃお腹膨れないし。でも、おかげで全盛期の二割ぐらいまでは魔力は戻ったわ」
「なら、もう一回フィリスに小さく戻してもらうか。昨日今日でお前の見た目が変わると他の職員も何事かと思うかもしれないしな」
「それはいいけど……痛いのは出来るだけなしにしてね? またアイアンクローとかはなしね? 」
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